【BYD、急減速!?】3つの逆風で迎えた「成長の踊り場」と回復に向けまだまだある「伸びしろ」
近年躍進が凄まじい中国自動車メーカー。世界最大の市場である自国中国で販売シェアを大きく伸ばすと共に、海外への輸出も大きく成長を遂げています。数ある新興メーカーでも頭一つ飛びぬけて販売台数を伸ばしているのがBYDです。BYDの中国国内でのシェアは単独で15%に達し、販売台数1位を奪取。ただ、この半年でかつてほどの勢いはなくなり、成長は急減速、先行きに暗雲が立ち込みははじめています。BYDの成長が止まった要因と今後について詳細に解説します。
5年ぶりのマイナス
2025年9月、BYDの販売台数は405,554台。前年同月比5.52%減となりました。月間では24年2月以来初の減少(うち、乗用NEVの販売台数は393,060台で、前年比5.88%減)、7-9月の合計台数でも、110万6000台と前年同期比2.1%減となり、台数の伸びが止まっています。四半期ベースの販売台数が減少するのは2020年第2四半期以来、5年ぶりです。中国でNEV(新エネルギー車)市場全体の成長、特にバッテリーEV(BEV)セグメントの成長が続いている中で、BYDの販売台数は落ち込んでおり、深刻な課題に直面していることがわかります。飛ぶ鳥を落とす勢いだったBYDも、2025年に入ってからはその成長に陰りが見られています。
屋台骨として牽引してきた主力モデルの販売不振

Song (宋) BYD HPより
BYDで販売不振の要因は、これまで爆発的成長を支えてきたPHEVの急落です。9月のPHEVの販売台数は188,010台で、前年同月比25.58%減となり、6ヶ月連続の減少。一方で、乗用BEVの販売台数は205,050台で、前年同月比24.31%増と堅調に伸びています。
PHEVの中でも特に落ち込んでいるのが、BYDを支えてきた主力モデルHan (漢)、Song (宋)シリーズ。中国の歴代王朝の名を冠した「王朝シリーズ」は各セグメントを抑えた幅広いラインナップでBYD躍進を支えてきました。その中でも、今最も中国で人気の高いセグメントである中型SUVに属するSong (宋)シリーズは、最高で12万台/月を超えるほど販売される人気車種でした。しかし、25年9月の販売台数は42,178台、前年同期比▲52.68%、全盛期の1/3近くまで落ち込んでいます。中柄セダンであるHan (漢)シリーズも落ち込みは深刻です。25年9月の販売台数は8,690台で、前年同期比▲64.57%、半減以下にまで急落しています。セダンからSUVへ消費者嗜好が移りつつあることを踏まえても、Han (漢)シリーズの落ち込みは深刻です。BYDはSealion (海獅)など比較的新しく販売された車種の販売が好調な一方で、過去のベストセラーモデルが販売不振が顕著であり、全体として前年同期比マイナスにまで販売台数は低下しています。
「追う」から「追われる」側へ

ONVO L90 NIO HPより
BYDはこれまで外資系のシェアを奪い、成長を遂げてきました。中国国内ではシェア15%、販売台数1位の座を獲得しましたが、外資系シェア凋落に歯止めがかかる中で、BYDは「追われる」、シェアを奪われる立場に変わりつつあります。
PHEVで販売拡大を進めてきたBYDですが、中国他の新興メーカーがREEV(レンジエクステンダーEV)で攻勢をかける中で、その競争力は低下しています。BYDの基幹モデルは、堅実な技術(ブレードバッテリー、DM-i)と無敵のコストパフォーマンスで、いわば「これで十分(Good Enough)」なアプローチでシェアを拡大してきました。しかし、今年に入ってからは吉利汽車(Geely)の「星願(Geome Xingyuan)」が約160万円からと圧倒的な低価格で販売を開始し、BYD以上の価格攻勢を仕掛けています。Song (宋)の属する中型SUVは最も競争の激しいセグメントであり、既存のテスラモデルYに加え、NIOのサブブランドであるONVO L90、吉利汽車のGalaxy M9などファミリー層向けに特化して開発された新型車の猛攻を受け、販売は激減しています。新興メーカーはBYDが得意とする価格に真っ向勝負を挑み、更に車内エンターテインメントや運転支援機能が充実した中国のトレンドであるSDVでの差別化を図ることで、BYDからシェアを奪いつつあります。Han (漢)、Song (宋)はモデル末期だということを踏まえても、その台数の減少はあまりにも大きく、かつての飛ぶ鳥を落とす勢いで台数拡大を続けて来た時期と状況は全く異なっています。
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