自動車の品質規格「IATF16949」って一体なんやねん?
ご安全に!今回は寄稿記事。自動車の品質規格「IATF16949」をイチから分かる解説記事をお送りします。
自動車産業の国際品質規格「IATF16949」。実際に業務に関わっている方、また業界の方では名前は聞いたことある…ただ実際に中身がどんなものか知っている方は実は少ないのでは?そもそも「品質」っていったいなんやねん。
今回は実際の業務に携わり、「IATF16949」のブログも発信しておられるショーンさんにど素人でもわかるよう解説いただきました。非常にわかりやすく、カッパッパも勉強になった内容。自動車業界の方、必見です。こちらを読んで、ぜひとも明日から自分の仕事の「品質」向上に役立ててください!
今回の寄稿者~ショーン@品質保証さん~

ショーン@品質保証さん。自動車業界の品質管理の仕組みにとっても詳しく、品質規格「IATF16949」を解説するブログを運営。カッパッパも業務で一部携わることがあった際に非常に役に立ちました。
直近、転職されて外資系企業で英語を使いながら(すごい!)、日々品質管理、業務に取り組まれている。自動車業界の方、フォロー推奨です。
1.モビコラム

はじめまして!
ADAS(先進運転支援システム)の品質部門で働いているショーンと申します。この度は、自動車産業に特化した品質の国際規格『IATF16949』をテーマに寄稿させていただくことになりました。
「品質」「国際規格」って急に言われても、よくわかりませんよね。このとっつきにくいテーマを誰でもわかるように解説しました。是非、最後までよろしくお願いします。
自動車には高品質が求められる
さて早速ですが、自動車は人命に関わる数少ない工業製品の1つです。万が一、重大な品質問題が発生したら大問題!品質は非常に高いレベルが求められます。
ただでさえ高い品質が求められるのに加え、自動車1台を作るのに約3万点もの自動車部品が必要となります。
良い品質の自動車を造るには、この約3万点の自動車部品の品質が維持できるように管理しなくてはいけません。
即ち、自動車メーカーだけが品質を気にしていれば良いわけではなく、自動車メーカーに製品を納める一次下請企業(Tier1と呼びます)も高品質が求められ、更にTier1に製品を納める二次下請企業(Tier2)も同様に高品質が求められます。
自動車産業を支えるサプライチェーン全体に渡って、高品質を保つ仕組みが必要なのです。

【POINT】
-
自動車に求められる品質は厳しい
-
自動車産業全体に渡って高品質を保つ仕組みが必要
だけど、そもそも品質って何だろう?
高品質の自動車を造るには、自動車業界に関わる全員が力を合わせる必要があることはお分かりいただけたと思います。
だけど、そもそも「品質」ってなんでしょうか?
ISO9000(後で説明します)では「本来備わっている特性の集まりが、要求事項を満たす程度」と定義されています。(うん、わからん...)
簡単に言ってしまえば、
その製品の特徴(例えば、性能やデザインであったり、納期が緩い/厳しい等)が、お客様の要求を満たすかどうかです。
満たしたものを「品質が良い」と言い、満たさないものを「品質が悪い」と言います。
一般的な例でいうと、決められたレシピ通りに、お客さんがオーダーした食事を、定められた時間以内に提供するレストランは「品質が良い!」ですね。
だけど「品質」といっても、国や企業によって考え方や管理方法が様々なんです。なので、どこかのお偉いさんは「最低限、この決まりを守れば国際的に合格!」という品質に関する決まりを作ることにしました。
【POINT】
3.「品質が良い」とは、お客様との間で決められたことをしっかり守ること
品質の国際規格(ISO9000)
例えば、A国は「我が国が製造する製品は高品質だ!」と言いますが、B国からしてみれば「あそこの製品はダメだ」と言います。
果たして何が「品質が良い」なのでしょうか?
そこで、ご存知の方も多いと思いますが、ISO9000と呼ばれる品質マネジメントシステムの国際規格をご紹介します。
この規格に適合していれば「国際的に見て、最低限の品質マネジメントシステムはできている!」とみなされます。
「品質マネジメントシステム」と聞くと難しく聞こえますが、品質を管理するためのシステム(仕組み)です。
お客様が求める品質を満たすために、方針や計画を立てて実行し、成果を確認して評価し、改善に繋げる。聞き馴染みのある言葉に言い換えるとPDCAサイクルです。
PDCAを継続することで効率性を高め、高品質の製品を生み出し続けます。

ただ冒頭で申し上げた通り、自動車は高品質が求められます。ISO9000は製造業全般やサービスを提供する会社向けの規格なので、自動車にはもっと厳しい品質規格が必要となりました。
ここでようやく『IATF16949』の登場です。
【POINT】
4. ISO9000とは、品質を管理する仕組みの国際規格
自動車産業の品質マネジメントシステム規格(IATF16949)とは?
自動車産業ではより高品質が求められるため、ISO9000の要求事項では不足している部分をIATF16949で補っています。
構成としては、下図の位置づけになります。

ISO9000をベースに、自動車に特化したIATF16949の要求事項が追加された構成を取ります。
自動車産業において求められることは『要求通りに品質が満たされた製品を作り、要求された納期に必ず納品すること』となります。これが非常に大切です。
なぜ大切なのか?その理由は、昨今の半導体不足で顕著にあらわれました。例え1社でも自動車メーカーに部品を納められなくなると、自動車自体が製造できなくなり、産業に関わる全メーカーの取引きが停止してしまいます。
自動車業界では、要求通りの品質で、要求通りの納期に納めることが非常に重要なのです。
即ちIATF16949は『お客様が求めている品質通りの製品を、お客様が求める納期通りに納める』ための国際的な品質マネジメントシステムの規格といえるでしょう。
IATF16949の特徴ってなに?
そんな厳しい品質規格のIATF16949の特徴をご紹介します。
ここでは『IATF16949を支えるコアツール』と『サプライチェーン全体にIATF16949を根付かせる』について説明していきます。
はじめに『IATF16949を支えるコアツール』
IATF16949はコアツールと呼ばれる5つの手法が存在します。
この手法を駆使しながら、品質マネジメントシステムを構築・運用していきます。
■ PPAP(Production Parts Approval Process : 生産部品承認プロセス)
製品や生産に関わる書類をお客様へ提出し、製品を量産する承認をお客様からもらう手続き。
■ APQP(Advanced Product Quality Planning : 先行製品品質計画)
製品を開発し生産するまでの段取りのこと。誰から誰へ、どういうアウトプットが必要か明確にしています。
■ FMEA(Failure Mode and Effects Analysis : 故障モード影響解析)
故障のリスクを明確にして、優先順位をつけ、リスクが大きいものに対策を行うための手法です。
■ MSA(Measurement System Analysis : 測定システム解析)
測定器が正しく測定できているのか検証する解析手法です。
■ SPC(Statistical Process Control : 統計的工程管理)
工程内の測定データを使って、統計的に工程の状態を認識することで、工程の異常状態を検知し未然防止に取り組むための手法です。
これらのコアツールを上手に使い高品質の製品を生み出し続けます。
続いて『サプライチェーン全体にIATF16949を根付かせる』
IATF16949の要求事項で、最終的にIATF認証を取得することを目指し、組織はサプライヤの品質をレベルアップしなくてはいけないと要求されています。
即ちTier1、Tier2、Tier3...と、自動車産業に関わる全ての企業がIATFに準拠した品質マネジメントシステムを構築し、産業全体の品質と効率性を確保する狙いがあります。

この2点がIATF16949の大きな特徴です。
【POINT】
7.コアツールが品質マネジメントシステムに組み込まれ、上手に使いながら高品質の製品を生み出す。
8.サプライチェーン全体に渡ってIATF16949を広め、産業全体の品質を高める。
本日のまとめ
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自動車に求められる品質は厳しい
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自動車産業全体に渡って高品質を保つ仕組みが必要
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「品質が良い」とは、決められたことをしっかりこなす事
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ISO9000とは、品質を管理する仕組みの国際規格
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自動車産業においてISO9000では不足している部分をIATF16949で補っている
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自動車産業では要求通りに仕上げた製品を納期通りに納めることが必要不可欠!この状態を維持する品質マネジメントシステムの国際規格がIATF16949
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コアツールが品質マネジメントシステムに組み込まれ、上手に使いながら高品質の製品を生み出す。
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サプライチェーン全体に渡ってIATF16949を広め、産業全体の品質を高める。
さいごに
ここまで読んでいただきありがとうございました!少し品質を気に入って少しでも理解いただけましたでしょうか?
品質というとマイナスなイメージを抱く方もいらっしゃると思いますが、奥深くって面白い部分もたくさんあるんです。
IATF16949についてもっと詳しく知りたい方がいらっしゃいましたら、徹底的に解説しているブログを運営していますので、是非、アクセスを!Twitterもやってます。宜しければフォローお願いします!
いやはや、本当に参考になりました。日本が誇る自動車の品質もこの仕組みが機能して成り立っています。業務だと「そんなことまで!」と敬遠しがちなんですが、過去のトラブルや業界全体の知見が集まってできた仕組み。気嫌いせずに、品質を理解して業務取り組んでいこうと思いました。 (PPAPの内容を確認しながら)
こちら皆さんからのご感想お待ちしております。良ければtwitterで呟いていただけると泣いて喜びます。
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