【自動車メーカー決算解説_トヨタ】手堅い決算、どこより原材料高の影響が大きいその訳は…

自動車業界の最新ニュース解説を発信するニュースレター、モビイマ!。「各自動車メーカーの22年4-12月期決算」を解説します。今回はみなさんお待ちかねのトヨタ。「意思のある踊り場」として減産傾向、原材料高騰もあり、生産、原価上昇に苦しむ一方、想定レート130円に対して大幅な円安は大きなプラス効果。果たして、業績はいかなるものになっているのか。どこより詳しく解説します。
カッパッパ 2023.02.12
誰でも

ご安全に!

体調を崩してはじめてわかる健康の重要さ、カッパッパです。早めに病院に行くって大事ですね。各所にご迷惑をかけて申し訳ない…

2022年世界TOPの販売台数、シェアを確実に伸ばし、日本メーカーの中では頭1つ抜けている、世界に誇る自動車メーカー、トヨタ。直近では豊田章男氏の社長引退も発表され、次のフェーズへ向かおうとしています。トヨタの動向は自動車業界のみならず、日本経済全体にも影響し、今後を占う重要な指標。販売台数は落ち込みが少ないものの「意思のある踊り場」として未だフル生産、挽回体制ではなく、原材料高騰もあり、不安要素はてんこ盛り。ただ一方で想定レートをはるかに超える円安という追い風も。はてさて決算の中身やいかに…

1.売上過去最高更新ながらも原材料高すぎぃ

トヨタ自動車の去年12月まで9か月間のグループ全体の決算は、売り上げにあたる営業収益が27兆4000億円余りと、この時期としては過去最高となった一方、最終的な利益は、原材料価格の高騰の影響で前の年の同じ時期を18%下回り、2年ぶりの減益となりました。
トヨタ自動車の去年4月から12月までのグループ全体の決算は、営業収益が前の年の同じ時期と比べて18%多い27兆4640億円と、この時期としては過去最高となりました。

2022年4-12月期売り上げは営業収益27兆4640億円と同時期では過去最高を記録。円安、そしてASEANや東南アジアでの販売好調などの要因により売り上げは前年よりも増加しました。一方で営業利益2兆980億円と大きく減益に。営業利益率も7.6%と前期と比べ3.9ポイントも下がる結果に。売り上げが伸びたにも関わらず、利益が伸びきらなかった理由は何なのか?

その要因はやはり「原材料価格高騰」。4-12期だけで1兆1100億円のコストUP。円安による為替益1兆450億円、原価低減1700億円でほぼ相殺。賃上げによる労務費、CASEなどの研究開発費や減価償却費の増加、また米国における急激な利上げに伴うスワップ評価損、ロシアからの事業撤退がマイナスとなり、その分減収となりました。(とはいえ、なんだかんだで2兆以上稼いでいるのはすごいんですが)

連結の販売台数は649万台、トヨタ/レクサスブランドでは721万台、ダイハツや日野自動車を含めたグループ総販売台数では789万台。前年度と比較して+1.3%(グループ総販売台数)。2022年販売台数世界一の実力は流石で他社と比較しても、台数は高水準を維持しています。

ちなみに原材料高が1兆1100億円で販売台数が789万台なので、単純計算で1台当たり14万円のコストUP。そりゃ値上げしないと利益の確保は難しいですね…

なお地域別にみると今回特に伸びているのは東南アジア。半導体を多く使う⇒比較的機能の高いクルマが作れない一方で、半導体使用量の少ない東南アジア向け車種では生産が回復し、販売、利益が伸びていることが今期の特徴です。

地域ごとの利益を見ると、北米が大きく減少。これは原材料高騰と販売台数減に加え、おそらく人件費高騰も要因の1つ。ドル箱市場だったはずですが、原価高騰を価格に反映しきれず、大きく落ち込む結果に。他社に比べても北米の大幅減が目立つのが気になります。欧州もロシア撤退の損失があり、大きくマイナス。日本は円安の恩恵を受けプラス、東南アジアではコロナ禍からの回復やタイバーツ安の為替益によりプラスに転じています。

なお、中国はほぼ横ばい。9月までは好調だっただけにコロナによる散発的なロックダウンが影響を与えている模様です。

2.原材料高影響が他社よりも大きいのは…

トヨタ自動車の稼ぐ力が資材高を受けて弱まっている。2022年4〜12月期の原材料高の負担は前年同期から1兆1000億円増え、お家芸の原価低減や車の値上げが追いつかない。電気自動車(EV)専業の米テスラは純利益でトヨタを猛追。1台あたり純利益ではトヨタがテスラの5分の1にとどまる。ガソリン車から燃料電池車(FCV)までを手掛けるトヨタの「全方位」モデルの収益力が問われている。

決算の中身を見れば、過去最高益ながらも減収と「稼ぐ力」が落ちているトヨタ。その要因は「車の値上げが追い付いていない」(特に北米)もあるのですが、一番大きいのは資材費 =原材料高騰。コストUPの金額、1兆1100億円は桁外れであり、1台当たりで計算すると他社よりも大きくなっています。

「(増えた燃料費の)7〜8割はトヨタがもってくれそうだ」。愛知県のある部品会社の幹部は安堵の表情を浮かべる。トヨタは昨年夏ごろから仕入れ先の原材料費や光熱費の一部を肩代わりしている。この会社はトヨタと負担割合の交渉を進め、増えた燃料費の大半を支払ってもらえるメドがついた。別の部品会社幹部は「トヨタほど電気やガス代の面倒を見てくれる自動車メーカーはない」と話す。

仕入先いじめといわれがちのトヨタですが、決算の数字を見ると、仕入先からの価格転嫁を積極的に受け入れていることがわかります。部品メーカーと完成車メーカーは共存共栄の関係。原材料高騰を価格反映することは当然かもしれませんが、実際に受け入れてもらえないメーカーがあることも事実(海外メーカー含む)。ケイレツのメーカーが大幅に下方修正する完成車メーカーもある中で、トヨタ系の部品メーカーは比較的好業績になっています。トヨタの営業利益が下がっている要因は仕入先の値上げ要請を受け入れている結果ととらえておくことは重要だと思います(いやそれでも価格転嫁不十分やんけですとか、自動車業界の構造そのものがおかしいやんけという批判はあると思います。)

3.今のところは横ばいです

2022年度の連結販売台数は前回見通しから横ばい。トヨタ単体880万台/トヨタ/レクサス合計940万台/Gr全体1040万台。依然半導体供給不足は解決せず、フル生産、本格挽回には至らず。23年の総生産台数も上限1060万台と22年とほぼ同数としており、北米での在庫回復や日本の長納期改善は23年中は難しそうな見込みです。

販売は横ばいであったものの生産は▲10万台。海外で▲9万台となっており、中国でのロックダウンが大きく影響していそうです。ただし国内の販売が増えているので、海外向けを国内に振り替えて生産しているとも考えられます。

2022年の通期見通しも横ばい、営業収益36.0兆円、営業利益2.4兆円、当期利益も同じく据え置きの2.36兆円。

通期の為替レートは135円⇒134円へ見直し。為替益の恩恵を受け、売上高達成できれば過去最高になる見込みです。為替は本当に先行きが不透明なので状況によっては、プラスになる可能性は高そうです。

***

通期見通しは横ばいなものの、生産/売上は過去最高レベル。半導体不足問題はこれからもほぼ同様の状況が23年中は続くと考えられ、トヨタの業績もほぼ同レベルになることが予想されます(販売台数世界一/売り上げ過去最高レベル/営業利益率7.0%前後)。これまでの体質改善の結果が出て、情勢が不安定な中でも安定して2兆円/年を超える営業利益を出すことは素晴らしい…

また原材料高騰はいわばトヨタの利益を削って、仕入先の値上げ要請を受け入れていることを示しています。大事なことは安定した業績、一定の黒字を出し、事業を継続していくこと。自動業界が多くの雇用を生み出し、人々の生活を支えている日本。トヨタは三方良し、お客さん、仕入先、社会にとって何がベストか考えた経営をしている。変動激しい世界情勢の中、22年4-12月期はそのことが如実に表れた決算でした。

ただ、営業利益率低下が起こっている、また世界で進んでいるEVシフトの中でシェアは非常に低いことは事実です。しがらみの多さゆえに、動きが限定されてしまうことはトヨタの弱点。22年後半に限定すれば遂にテスラが純利益でトヨタを抜きました。中国ではBYDの躍進が凄まじく、世界各地に進出を広げています。既存メーカーとは違う、身動きの軽いプレイヤーにどう立ち向かっていくのか。

今は世界のTOP企業トヨタ。社長も交代する中で今後も今の地位を維持し続けられるのか。今後のトヨタの動向(特に電動化関連と稼働状況と値上げ)に注目です。

・トヨタやテスラなど自動車メーカー最新情報
・CASEなどの業界トレンドを詳細に解説
・各自動車メーカーの戦略や決算分析

すでに登録済みの方は こちら

誰でも
【21万台リコール/生産停止】トヨタ看板車種「プリウス」で何が起きてい...
サポートメンバー限定
【チートすぎる低価格】躍進凄まじい中国BEVが激安な3つの理由
読者限定
5分でわかるクルマニュース_モビイマ!4/15
サポートメンバー限定
【日産新中計】『仲間』と共につくり上げるEV巻き返し戦略
読者限定
5分でわかるクルマニュース_モビイマ!4/8
サポートメンバー限定
【日産新中計】全方位で+100万、弧を描く成長は実現できるのか
読者限定
5分でわかるクルマニュース_モビイマ!4/1
サポートメンバー限定
【データでがっつり検証】『EVシフトが失速している』は果たして真実か?...