イチから分かる!「全固体電池」

「モビトーーク」は皆が注目するクルマの最新情報を、詳しい方をお招きして、対談形式で解説。今回のテーマは「全固体電池」。日本が開発をリードし、ゲームチェンジャーとして期待される一方で海外では先行して量産する報道もあり現状は複雑。そもそも「全固体電池ってなんやねん」というところから解説します。
カッパッパ 2022.05.19
誰でも

ご安全に!

かれこれ3年くらいずっとダイエット中と言い続けている、間食を辞めれば痩せられるのはわかっているのですが、ついチョコレートをたべてしまう意志薄弱のカッパッパです。

CASEの中でも直近で一番注目を集めている電動化(E)。その中でも注目されているのが「全固体電池」。充電時間が短くなる、航続距離が大幅に伸びるなどゲームチェンジャーになるのではという期待を集める全固体電池の開発。日本メーカーが研究リードしているとされる一方で中国メーカーではすでに量産、搭載される自動車が発表されるなど状況は複雑。

果たして「全固体電池って今どうなっているの?」そもそも全固体電池ってなんやねんというところ、イチから分かるよう、やけに電池が好きな孫悟空さんに教えてもらいました。カッパッパも勉強になることばかり。

この記事を読めば全固体電池はばっちり。明日から職場で「全固体電池ってさ…」とドヤ顔で語れます。周囲と差のつく「全固体電池」解説記事。早速お読みください!

1.モビトーク

今回の対談相手~やけに電池が好きな孫悟空さん~

やけに電池が好きな孫悟空さん。電池にとっても詳しく、各電池ニュースの紹介をしてくれるアカウント。毎回すごく技術的なポイントを抑えた解説を発信。今後の自動車業界の動向を掴みたい業界関連の方ならフォロー必須。

(これまでの対談が非常に好評だったので、今回もお願いしたところ快諾いただけました。)

全固体電池ってそもそもどんな電池?

カッパ:今回も対談お引き受けいただきありがとうございます。今回のテーマは「全固体電池」。この数ヶ月で全固体電池をめぐる数々のニュースがありました。「自動車業界のゲームチェンジャー」として期待がされる一方で、否定的な報道も…カッパッパも正直よくわかっていないので、悟空さんにイチから教えていただきたいと思います。よろしくお願いします。
 まずは「全固体電池」とはどんな電池なのでしょうか?

悟空:こちらこそよろしくな!「全固体ぇ電池」はその名の通り、全て固体ぇで出来ている電池だ。電池は「電極」(正極・負極)と「電解質」を組み合わせてるんだが、電解質は液体ぇである「電解液」を使うのが従来ぇの電池だ。「全固体ぇ電池」の場合、電解質が液体ぇではなく「固体ぇ電解質」になっている。だから液体ぇ材料を使わねぇ全て固体ぇの電池、すなわち全固体ぇ電池っちゅうわけだな。

カッパ:「電解質」=「固体」なんですね!なるほど。ということは、今は電解質は「液体」だと思うのですが、「固体」になることで電池はどのように変わるのでしょう??

悟空:第一はやっぱり安全性の向上だな。今のリチウムイオン電池の電解液に使われてるのは可燃性の有機溶媒ぇ、要するに燃えやすい液だ。それを使う必要が無くなるっちゅうだけでも安全性は確実に上がるな。
 他にも細けぇ話はいろいろとあるが、構造上の制約を減らしたり、使える電極材料の種類を増やしたり、電池設計の自由度を上げていくっちゅうのが大まかな方針だな。

全固体電池を搭載すると車の性能が上がる?

トヨタの全固体電池搭載車両
トヨタの全固体電池搭載車両

カッパ:話を聞くと全固体、ものすごく夢がある。車の性能としては航続距離が長くなったり、充電時間が短くなると聞いたことがあるのですが、その点はいかがでしょう?

悟空:その辺はちっとメディアの過剰な報道が独り歩きしてる感じは否めねぇな。全固体ぇ電池=電解質を固体ぇにしたからって、それだけで電池性能が劇的に向上するわけじゃねぇ
 さっきも言ったように設計の自由度が上がった結果、たとえば従来ぇの液系リチウムイオン電池では使えなかった新しい材料を使えるようになったり、バイポーラ構造にできたり、そういう改良のおかげでより高ぇ性能の電池を作れる可能性があるっちゅう話だ。全固体ぇはあくまでも電池性能向上のための手段のひとつであって目的ではねぇっちゅうことだな。

カッパ:全固体になるだけで、現状の問題が全部解決すると思ってた…違うんですね。ちなみに「新しい材料」ってどんなものがあるんですか?

悟空:正極だと、たとえば「LNMO」っちゅうのがあるな。これは従来ぇの電池よりも高ぇ5V級の電圧にすることができるんだが、その電圧値故に電解液は分解されやすく寿命に難があるんだ。固体ぇ電解質の種類によっては電解液よりも分解されにくい可能性があるぞ。
 あとは硫黄や有機化合物みてぇな材料を正極に使おうとすると、電池の容量は増えるんだが電解液へ溶け出してくるせいでやっぱり寿命特性が良くねぇ。全固体ぇ電池なら液体に溶け出してくるって意味ではその心配ぇはなくなるな。
負極だと、代表的なのはやっぱり「金属リチウム」だな。従来ぇの電池で使おうとすると安全性や耐久性に難があるんだが、全固体ぇ電池にすることで活路を開こうとしてるのはあるな。

カッパ:おお、具体的でわかりやすい。全固体により選択肢が増えることで、性能が上がるんすね。本当にこのあたりわかってなくて勉強になります!

全固体電池を巡る現状 ① 半固体電池

半固体電池を搭載したEVセダン「ET7」(写真:NIO)
半固体電池を搭載したEVセダン「ET7」(写真:NIO)

カッパ:はてさてそんな全固体電池なんですが、直近いろんなニュースがありました。

 この記事が詳しいのですが日産やホンダが試作ラインの設立や投資など具体的な計画を発表海外メーカーも量産化時期を公表。一方で、固体より液系リチウム優先へ政策が変更といったニュースもあります。
 そして、中国メーカーNIOでは半固体体電池を搭載したクルマの販売が開始されました。

 現状での全固体電池の開発状況、量産見込みはどのようになっているのでしょう?

悟空:これはいろんな意味で答え方が難しいんだが……とりあえず冒頭に述べた通りの「全固体ぇ電池」の開発状況は日本勢が先行してる印象。本当に基礎的な研究レベルはもう通り過ぎてて量産も視野に入ってる段階とみてるぞ。

でも、その量産も一筋縄では行かねぇから、各社公表スケジュール通りにいったら万々歳じゃねぇかな。あと、たしかに研究開発レベルは日本勢が先行してると思うんだが、NIOを筆頭に「固体ぇ電池」と銘打つものを市場に投入してくるのは海外勢が先かもしれねぇな。

海外勢はいわゆる「半固体ぇ電池」と呼ばれるタイプの電池をとりあえず出してくる傾向が見られるな。既に全固体ぇ電池といいながら実際ぇは半固体ぇな電池をバスに積んでる事例なんかもある。(ちなみにそのバスは発火事故がTwitterでも拡散してたな……)
求める完成度と市場投入タイミングの兼ね合い。これはいろんな面で付き纏う問題ぇだよな。

Le Parisien
@le_Parisien
Un bus électrique de la RATP a pris feu ce matin à Paris.
C'est le troisième incendie de ce type en Île-de-France en l'espace d'un mois ⬇️
2022/04/30 03:13
2284Retweet 3126Likes

カッパ:全固体は日本がリードしているんですね。全固体が上手くいけば、BEVでも上手く逆転できる可能性がワンチャン…
ちなみに海外が出している「半固体」は全固体とどのように違うのでしょう?

悟空:半固体ぇ電池っちゅうもんに明確な定義があるわけじゃねぇんだが、前に一度まとめてみたことがあるんだ。(詳細が知りたい方は下記ツイートのまとめをチェック)

やけに電池が好きな孫悟空
@denchigoku
おっす、オラ悟空!

最近ちょくちょく

「半固体ぇ電池って何?」
「全固体ぇ電池とどう違うの?」

って質問をもらうからよ、今回はこの辺りの話を一度整理してみっぞ。
この下にボチボチとリプぶら下げるから、よかったら見てくれよな!
2022/02/15 22:13
57Retweet 226Likes

悟空:海外の半固体ぇ電池は何かしらの形でポリマーを使ったもんである場合が多い印象だな。これは大雑把に言えば液を吸ったあとの紙おむつの中身みてぇなもんだ。液体ぇを含んではいるけど流れ出したりはしねぇで柔らかな固体ぇとしての形状を保ってる。そういうイメージだな。

カッパ:紙おむつの中身、わかりやすいです。半固体電池は現段階でも量産が可能で搭載可能な技術段階という認識であってますか?

悟空:半固体ぇの種類にも依るんだが全固体ぇ寄りの先進的なものでなければ現段階でも量産は十分可能だと思うぞ。

カッパ:全固体(半固体?)電池が搭載となると「すげーーー」と安易に思ってしまうのですが、技術レベルにより現在でも十分可能なんですね。NIOなどのニュースを見ると日本遅れてて本当に大丈夫なのかと心配になっていたのですが、どちらかと言うとどの技術段階で車両に採用するのかという戦略側面が大きそう。

全固体電池を巡る現状 ②全固体電池の量産開始時期

日産自動車、全固体電池の試作の様子
日産自動車、全固体電池の試作の様子

カッパ:それでは全固体電池、日本メーカーではいつごろから電気自動車に採用されると悟空さんは考えていますか?

悟空:電気自動車=BEVとすると、結構まだまだ厳しそうだよな。各社がいろんな目標掲げてるが、2020年代ぇ後半に採用されりゃ万々歳。何か不測の事態ぇがありゃ2030年代ぇまでズレ込んでもおかしくはねぇかなぁ。
ただトヨタのHEVも含めていいなら割と早め、ここ数年には何かしら採用されんじゃねぇかな。

カッパ:トヨタは全固体、HEV向きだと言っていましたもんね。確かに量産という面では1番近いかも。全固体、日本の完成車メーカーのゲームチェンジャーとして20年代後半に出てきて、いっきにシェアを…がベストシナリオかな。

全固体電池を巡る現状 ➂最適な投資とは

トヨタの電池戦略
トヨタの電池戦略

カッパ:今回、お話を聞いて思ったのは全固体含め、電池はまだまだ技術が発展途上で今後の伸び代が非常に大きいということです。トヨタのbz4X、サブスクが批判されているのですが、数年経つと電池などの技術が陳腐化して、リセールが低いなんてことが想定されるわけで、実はサブスク良いのかも。
技術の伸び代が大きいとなると、投資のタイミングも難しい…果たして今現在投資している欧州を始めとした海外メーカーが先に市場を席巻してしまうのか、後から参入した日本メーカーが高い性能の電池で巻き返すのか、予測が難しい。

悟空:各企業がどう舵取りすべきかっちゅうのは本当に難しい問題ぇだな。正解なんて誰にもわからねぇしな。BEV市場の先取りって意味じゃ海外勢が先行してぇのもわかる。日本勢が後から巻き返せる保証もねぇしな。
 ただ逆もまた然りだぞ。このタイミングの量産設備投資はでっけえリスクにもなり得る。市場と技術の動向によっちゃ今の設備はかなりの重荷になっちまう。あとは経営面のリスクだけじゃなくて環境面のリスクもあるな。量産体制の確立と製造時環境負荷のバランスのとり方とか、製造量に見合うだけの破棄やリサイクルを準備できるのかとはちゃんと考えとかねぇと、単に作りゃいいってもんじゃねぇな。

カッパ:投資の舵取り、果たして上手くいくかどうかは本当に難しい。今は全盛期を迎えているトヨタのHEVも販売当初は利益が全く出なかったという話。将来の種まきをどう行うのが正解なのかはさっぱりわからんです。

目的化するEVシフト

カッパ:あと、環境に良いが大義名分で始まったはずのEVシフト。ぶっちゃけ実際の環境負荷よりもEVとりあえず作っておけばOKという手段が目的化感はありますね。本筋からはそれますが、 「BEVや電池、こういったメリット/デメリットが両方あって評価が難しい」という話よりも、単純化したBEV推進派、内燃機関絶体派がSNSでは目につきやすい。この点がカッパも悟空さんも悩ましいところかと(遠くを見ながら

悟空:「ぶっちゃけ実際の環境負荷よりもEVとりあえず作っておけばOK」うん、率直に言うとそうだよな。もうちょい場合わけっちゅうか、是々非々の話ができるといいんだけどよ。まぁ単純化したほうがぱっと見はわかりやすいからな。単純にしただけで要件まで削ぎ落としちまったような話が多い気がするけどな。HEV主導とBEV主導は将来ぇの種まきっちゅう意味じゃまるっきり違ぇ話でもあるな。(本題ぇからズレるからここでは言わねぇが)

カッパ:本筋からずれつつあるので、今回はこの辺りで。カッパッパも知らなかったこと、たくさんあり、大変勉強になりました。日本がリードするとされる全固体。果たして巻返しの一要素となりえるのか。今後も注目していきたいと思います。今回もありがとうございました!

悟空:こちらこそありがとな!

***

今回も悟空さんに教えていただき、大変わかりやすい、全固体電池の解説になりました。これからの世界、日本の将来を決める技術、全固体電池。この記事がみなさんの仕事、投資の一助になればと思います。

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