【徹底解説:自動車メーカー決算 日産】電動化と為替パワーで上方修正!
ご安全に。
こちらのツイートをしたところ、嫁カッパより「長男が生まれる前に、家のお金で返済したでしょ!覚えてないの??」と怒られた嫁認証済みアカウント、カッパッパです。
自動車メーカー決算シリーズ、今回は日産。構造改革がすすめられている日産。EV「アリア」の販売を開始し、軽EVの受注も絶好調。「ノート」や「エクストレイル」の新型車攻勢で、体質改善を図っていますが、その業績やいかに。
これまでは決算発表資料の「やりました」アピールが多かったのですが、今回は控えめ。もうアピールしなくても業績は十分に回復…したのかどうか。カッパッパが代わりに読み解き、どこより詳しく解説します。
1.上期は増収、ただ重くのしかかる原材料/物流費高騰とロシア
2022年度上期の売上高は前年同期(3兆9470億円)から7153億円増となる4兆6623億円、営業利益は前年同期(1391億円)から175億円増となる1566億円、当期純利益は前年同期(1686億円)から1041億円減となる645億円。また、第2四半期累計3か月のグローバル販売台数は前年同期(95万4000台)から20万4000台減の75万台となった。

日産「2022年度 上期決算発表(2022/11/09) プレゼンテーション資料」より引用
2022年上期売り上げは売上高は前年同期(3兆9470億円)から7153億円増となる4兆6623億円(+18%)、営業利益は前年同期(1391億円)から175億円増の1566億円、増収増益。ただし営業利益率は▲0.1ポイント。単純には喜べない業績。なお純利益は前年同期比で▲1041億円と大きく下がっています。

日産「2022年度 上期決算発表(2022/11/09) プレゼンテーション資料」より引用
グローバル販売台数は前年同期比▲21.6%の156.9万台。全需(自動車全体)が▲4.0%なのに対し、大きな差が。特に中国、北米、欧州が▲20%以上と販売の落ち込みが大きくなっています。ただ作れていないのかといわれるとそんなことはなく…

日産「2022年度 上期決算発表(2022/11/09) プレゼンテーション資料」より引用
生産台数は上期全体で前年同期比▲0.9ポイントとほぼ横ばい。作ってはいるものの、販売に結びついておらず、販売台数は減少。

日産「2022年度 上期決算発表(2022/11/09) プレゼンテーション資料」より引用
その分、在庫が回復、22年上期末時点で33万台。こちらが戦略的に積み上げた在庫なら良いのですが、需要が下がったゆえに積みあがっているのであれば問題(判断はつかないのですが)

日産「2022年度 上期決算発表(2022/11/09) プレゼンテーション資料」より引用
営業利益の増減理由を見ると1番マイナスの要因はやはり「原材料/物流費高騰」。円安による為替益が939億プラス、販売パフォーマンス(販売費用=販売奨励金減など)でプラス1906億円になる一方で、原材料で1228億円、物流費で189億円のコストUP。販売パフォーマンスの向上=質の改善が進み、利益の出やすい体質へ変化していることが読み取れる一方で、生産の根本となる原材料の高騰が日産に重くのしかかっています(どの自動車メーカーも同じなのですが)

日産「2022年度 上期決算発表(2022/11/09) プレゼンテーション資料」より引用
そして今期はロシア事業撤退による損失、241億円を計上。前期ではダイムラー株の売却益(790億円)=一過性利益もあったため、純利益では前年同期比マイナスに。241億円、決して少ない額ではなく、今期の業績への影響は大きい…(トヨタやマツダも計上しています)。まさかロシアが戦争を起こすなんて…と予想の斜め上を行く展開ゆえに仕方ないとは思うのですが、事業の中で地政学上のリスクをどう織り込むのかが今後各社重要になってきそうです。
2.進むNISSAN NEXTと新車攻勢

日産「2022年度 上期決算発表(2022/11/09) プレゼンテーション資料」より引用
厳しい内容ばかり述べてきましたが、プラスのニュースもあります。販売台数が減る中で増収=1台当たりの単価は大きく向上。販売費の中身を見ると販売奨励金が大きく減。グローバル全体で1214億円=1台当たり77000円もの改善。価格改定(値上げ)も含め、日産が掲げる「販売の質向上」=事業基盤強化が進んでいることがわかります。

日産「2022年度 上期決算発表(2022/11/09) プレゼンテーション資料」より引用
また電動化を推し進めていることもプラス。EV「アリア」、軽EV「サクラ」は受注好調。BEVの日本での販売比率は13%と国内メーカーでもTOP。HEVを含めた電動車の括りでは52%。日本の電動化にいち早く取り組んでいるメーカー=日産なのは間違いありません。

日産「2022年度 上期決算発表(2022/11/09) プレゼンテーション資料」より引用
かつては平均車齢が長かった日産。この1年でも続々と魅力的な新車を発表。各社受注は好調(特に日本)なだけに、どこまで生産し、販売に結び付けられるのか。下期は他社同様、生産動向が日産の業績のカギとなりそうです。
3.販売台数は引き下げも、為替パワーで上方修正

日産「2022年度 上期決算発表(2022/11/09) プレゼンテーション資料」より引用
通期での販売台数は400万台⇒370万台、▲30万台の下方修正。昨年の387.6万台よりも減る見込み。日産は稼働状況が報道されないので、実際に減産がされているのかがわからないのですが、この数字から判断すると、現在も他社同様生産調整が実施されている可能性が高そう。前回見通しと比較すると、特に減っているのは中国で▲11.6%。中国全体では販売落ち込んでいないので、日産はシェアを落とす結果になるでしょう。(その分、中国新興EVが伸びていそう)。ちなみに2021年中国で一番売れたクルマは日産のシルフィ(セダン)だったりします。

日産「2022年度 上期決算発表(2022/11/09) プレゼンテーション資料」より引用
通期見通しは売上高+9000億円の10兆9000億円、営業利益は+1100億円の3600億円に上方修正。販売台数が減る中で、売上高増は1台当たりの販売価格向上(値上げの浸透、高価格帯へのシフト)によるものでNISSAN NEXTが一定の効果を上げていると言えそうです。

日産「2022年度 上期決算発表(2022/11/09) プレゼンテーション資料」より引用
ただ前回見通しとの差を見ると、今回の上方修正分はほぼ為替差。円安効果で+1250億円と上方修正分とほぼイコール。販売パフォーマンスなどの改善はあるものの、原材料/物流費高騰で相殺。想定以上のコストUPに何とか販売価格の改善で吸収しようとする努力が伺えます。ちなみに新車への投資プラス250億円って中身は何なのだろう。。。
なお為替は1$=135円想定のため、足元の140円前後ではさらにプラスとなる可能性。今回の見通しが達成できれば、営業利益率は3.3%。赤字に苦しんでいた状況からは脱出!したと考えてよいと思います。
構造改革、販売の質向上から黒字を維持できる体質になった日産。ただ改革はまだ道すがら。営業利益率は他社と比べても高いと言えません。ただ、新車攻勢で売上は増加、生産が販売に繋がれば、利益を伸ばせる算段は非常に高い。NISSAN NEXTを達成できるのか(前倒し含む)、今後の生産、販売動向に注目です。
次回は最終回、マツダ。4-6月期は赤字でしたが、待望のラージ商品群の納入が始まり、業績は回復。かなりの好業績に。こちらもどこより、詳しく解説しますので乞うご期待!
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