【テスラ2025年3Q決算徹底解説】喜べない過去最高!今は耐えるべき『助走期間』

自動車業界の最新ニュース解説を発信するニュースレター、モビイマ!今回は、テスラ2025年7-9月決算について詳細に解説します。
カッパッパ 2025.10.26
サポートメンバー限定

EVのTOPメーカー、テスラが逆境に苦しんでいます。 2023年には世界で最も売れた自動車がモデルYとなり、自動車業界でEVのトップランナーとして君臨し続けたテスラ。しかしイーロン・マスク氏の政治参加によるイメージの悪化、中国での競争激化、既存自動車メーカーのEV新車攻勢などを受け、右肩上がりで伸び続けていた販売台数は横ばいになり、ついには減少へ。2024年通期では、販売台数が前年割れしました。アメリカでのEV補助金廃止や燃費規制の緩和を含めて、テスラにはかつてないほど逆風が吹いています。

 2025年7-9月期の決算は、今のテスラの苦境を象徴する業績となりました。この記事では、テスラが直面する危機、そして未来への戦略を、深く掘り下げます。

1.手放しで喜べない過去最高

  テスラ、2025年7-9月期売上高は280億950万ドル、(前年同期比:+12% ) 、gross profit:(粗利益:売上高-売上原価-直接経費⁾は5億54万ドル(前年同期比+1%)増収増益となり、営業利益率は5.8%。前期25年4-6月までは売上高、粗利益で前年同期比割れが続いていましたが、今期は四半期売上高は過去最高を記録し、前期比増となりました。営業利益率は前期が10.8%と非常に高かったため、前期比ではマイナスとなったものの、2025年1Q(1-3月)2.1%、2Q(4-6月)4.1%と比較すれば、プラスに転じています。

今回、売上高が大きく伸びた要因は主力事業である自動車事業での販売増加です。売上203億5900万ドルと前期と比べ、+15億ドル、4-6月と比較すると50億ドル近く増加しています。ただ売上高が増える一方でコストも増加しています。前年同期は自動車事業単体の粗利が3088億ドル、粗利率16.3%であったのに対し、今期は粗利2944億ドル、粗利率14.7%と採算性が悪化しています。決算資料では固定費の増加、関税の上昇、販売車種の変化が採算性悪化の要因として挙げられています。最盛期(2022年1-3月)では30.0%にまで達した粗利率ですが、その後は右肩下がりで、現状は既存自動車メーカーと同レベルにまで落ち込んでいます。利益を稼ぎづらいBEVだけで、黒字になっていることは賞賛すべきですが、他メーカーと比べ採算性が突出しているわけではありません。

また排出権を販売することによるクレジットが減っている(前期7億3900万ドル→今期4億1700万ドル)ことも心配要素です。クレジットはコストが発生せず、直接利益に結び付くため、テスラの業績を支えた収益。燃費規制の緩和が進んでおり、今後クレジットが減っていった場合、その分テスラの利益が減ることになります。

純利益の推移を見ても、2025年に入ってからの落ち込みは明確です。2025年、テスラの成長が止まっていることは間違いありません。

2.過去最高台数を記録したものの…

テスラの25年7-9月の納車台数は過去最高の49.7万台(前年同期比+7%)。生産台数44.7万台に対し、5万台も多く、納車し、在庫日数も4-6月末の24日から10日と大幅に減っています。記録的な納車台数ですが、この背景にあるのはEV補助金打ち切り前の駆け込み需要です。アメリカでは9月末で最大$7500(日本円で約110万円)の補助金が打ち切り、10月以降は実質的に値上げとなります。言わば需要の先食いをした結果が7-9月納車台数が伸びた要因であり、その反動で10月以降の納車台数が落ち込む可能性が高くなっています。

テスラの決算資料では、「中国での3列シートのモデルYLの販売開始」「韓国や日本での販売増」、「アメリカでの廉価版モデル3、Y投入」が納車台数へのプラス要因として挙げられています。しかし、主力市場アメリカでの補助金打ち切りの影響が大きいこと、欧州で販売減が続いていること、中国国内では現地中国国内メーカーとの熾烈な競争があること、主力車種のモデル3、Yがモデルチェンジしても、販売台数増につながっていないことを踏まえると、今後大幅に台数を伸ばすことは難しいでしょう。

今期テスラは2025年の通期見通し販売台数を発表していません。このままいけば、2025年は2024年を下回り160~170万台にまで下がる可能性もあります。他事業は成長を続けてはいるものの、依然売上高の3/4はEV事業であり、当面の間はこの厳しい業績が続いていくことでしょう。

この記事はサポートメンバー限定です

続きは、2127文字あります。

下記からメールアドレスを入力し、サポートメンバー登録することで読むことができます

登録する

すでに登録された方はこちら

読者の方にはこんな内容を直接お届けしてます。

・トヨタやテスラなど自動車メーカー最新情報
・CASEなどの業界トレンドを詳細に解説
・各自動車メーカーの戦略や決算分析

提携媒体・コラボ実績

誰でも
最新の自動車業界転職市場ってどうですか?【製造系転職エージェントに聞いてみた①】
読者限定
【5分でわかる自動車業界最新ニュース】
サポートメンバー限定
屋根が飛んでも1.5ヶ月で再開!トヨタを支える『災害レジリエンス』の3...
読者限定
【5分でわかる自動車業界最新ニュース】
サポートメンバー限定
【BYD、急減速!?】3つの逆風で迎えた「成長の踊り場」と回復に向けま...
読者限定
【5分でわかる自動車業界最新ニュース】
サポートメンバー限定
【現代自動車新中長期戦略】『柔軟』と『堅実』で実現する世界3位への盤石...
読者限定
【5分でわかる自動車業界最新ニュース】