【池田直渡氏対談➂】テスラは『トヨタの失敗』を繰り返さずにいられるか
ご安全に!
1番好きなことが休日に昼間からお酒をだらだら飲むことだと気がついたダメ妖怪、カッパッパです。(外で飲めるとなおよい)
今回は池田直渡氏(@naotoikeda)との対談第3弾をお送りします。
今回はテスラの抱えるリスク、そして今後どうなるのかを改めてまとめた内容。テスラはかつてのトヨタと同じ轍を踏むことなく、このまま成長していけるのか。とても充実した、ここでしか読めない対談。それでは早速続きをどうぞ。
1.モビトーク

テスラだから許されるはどこまで続く?
カッパ:
自動車ってすごいいろんな使われ方があって、それに対して1個1個安全を確かめながら作っているっていうのがある中で、テスラは市場にベータ版出しても許されるし、甘く見られているのではってよく思います。
池田:
あれが許されるんなら、みんな苦労はないですよね。
カッパ:
その通りです。グレーなところを攻めていて、そこやっていいんや、やっちゃうんだみたいなところはすごくあります。
池田:
実験室レベルの技術をベータ版だと言って市販車に実装しちゃうわけですからね。「条件が良いときできる」ことと「どんな条件でもできる」ことは全く別ですから。
カッパ:
ベータ版を市場に出してそれに喜んで乗る人がいるところ、そのブランド力はテスラの強みですよね。
池田:
そこはそうですが、ユーザー自身が被害に遭うリスクを理解したとしても、加害に回った時、そんなリスクを許容していない第三者を巻き込む可能性が結構あるわけで、その辺りを規制する監督官庁のお怒りを、テスラは非常に軽視してるわけですよ。
カッパ:
最近は比較的従うようになりましたよね。
池田:
全面的に否定はしません。ある意味、「監督官庁様々」と、お上に対してへりくだるのではなく、対立する関係に持ってっちゃうってのはテスラはすごいなと。既存の自動車メーカーと話してると、いやもうちょっと戦ってもいいんじゃないか、正論だったら言っちゃえばいいじゃんって思うんだけど、波風立てたくないってのはすごいある。ただ最終的には、黙って言いなりになるのも、怒られても耳を貸さないのもどっちも理想的じゃない。どっちもおかしいってボクは思ってます。
リスクの高い中国市場
カッパ:
最近はテスラもNHTSAやら中国でのいうことを聞くことになってきたのかなと。
池田:
NHTSAのリコール警告の無視に関しては、原則的にサービス拠点が足りないので、やりたくても対応ができない面もあります。台数的にレアな存在のうちは良かったかもしれませんが、今の規模だとその辺りの社会的責任はやはり果たしていく義務があるでしょう。
それと、中国に関しては結構危ない。中国は2001年にWTOに加盟して以来、ずっとWTOのルールを無視していました。原則的に完成車の輸入は認めないので、中国国内でクルマを売りたければ中国で製造するしかないのですが、それに際しては現地法人が過半を出資した合弁会社しか設立を認めない。外資単独では工場建てられなかったんです。それが、中国共産党のやり方。明確なルール違反ですから、世界からずっと強く批判をされてきた結果、「2021年からWTOルール違反をやめます」と。その第1号としてテスラは外資100%のメーカーとして始めて単独出資で中国法人を設立し、工場を作らせてもらった。
だけど今のところテスラだけ。今後他社も認めるかどうかはよくわからない。だから形の上では、現状ではテスラだけ特例措置を適用した様な状況にあるわけです。
当然、共産党としてはテスラに強い興味があるから第1号にしたわけでしょうし、それをイーロン・マスクに自由に経営させる連中ではないです。中国政府とのやり方を見てると、「お前ら特別扱いしたんだからもっと言うこと聞いてくれ」になっている。有形無形で圧力が掛かっています。
車載カメラをスパイ活動だと言ったり、モーターショーでテスラのブレーキはおかしいとクルマの上に乗って騒ぐ人が出たり。こういうのを暢気に個別の事象だと思っていると、多分違います。モーターショーのクレーマーなんて、共産党が意図的に見逃さない限り騒ぎが起きる前に逮捕されるでしょう。それが動画に収められて、世界に発信されていることがどういう意味か考えた方が良いです。下手するとそもそも全部が共産党の仕込みの可能性もある。
要するに明らかに目を付けられていて、隙あらば会社ごと手に入れたい。その前段階として、色々圧力を掛けているとボクは見ています。これは自由経済の国では考えられないめちゃくちゃな話ですよ。中国で特別扱いを受けるのは「何とかより高いものはない」の可能性があるのです。
カッパ:
イーロン・マスクもTwitterで割と派手なことはするけど中国は絶対に触れない。テスラはすごい中国で伸びてますし、上海工場は多分一番儲かってる工場。そう考えると、モデルや中国一本足はリスクになりえますね。
池田:
テスラの中国法人には、内部に共産党が設立されているはずです。そんなことあるわけないって思うのは日本人だけで、中国で一定以上の企業組織になると必ずそうなるのです。これは避けられない。我々が知らない世界なんですよ。 ちなみに信じがたいことに共産党は取締役会よりも株主会よりも上に位置する、憲法より上で、憲法の外にある。会社の中に共産党ができるってことはどういうことですかって話。
カッパ:
やっぱりリスクは高いですよね。100%出資の中でテスラがどうなっていくか、中国がどうなっていくか。
池田:
自由経済の世界の常識では100%自国出資だったら安全だろうって普通は思うんだけども、総会より上に共産党というものがあるっていうのは我々の常識じゃないわけですよね。それがある国でビジネスをやるリスク。そういうことでデカップリングだと言われ、今外資企業は絶賛脱出中です。
カッパ:
テスラがこれから伸びるのは中国なので次に手掛けるのは上海の能増か工場をもう一つ建てるかなと思うんですけど。日本メーカーでも中国進出を重視しているところもありますよね? 彼らは大丈夫なんでしょうか?
池田:
正直なところ、日本メーカーで中国のリスクを織り込んでコントロールできているのは、多分トヨタ1社だけだと思いますね。