【池田直渡氏対談➂】テスラは『トヨタの失敗』を繰り返さずにいられるか

自動車業界の最新ニュース解説を発信するニュースレター、モビイマ!。今回は1周年特別企画、自動車ジャーナリストの重鎮、池田直渡さんとの対談記事をお送りします。国内、海外含め多岐に及ぶ内容。第3回目は「テスラは『トヨタの失敗』を繰り返さずにいられるか」です。
カッパッパ 2022.06.11
誰でも

ご安全に!

1番好きなことが休日に昼間からお酒をだらだら飲むことだと気がついたダメ妖怪、カッパッパです。(外で飲めるとなおよい)

今回は池田直渡氏(@naotoikeda)との対談第3弾をお送りします。

今回はテスラの抱えるリスク、そして今後どうなるのかを改めてまとめた内容。テスラはかつてのトヨタと同じ轍を踏むことなく、このまま成長していけるのか。とても充実した、ここでしか読めない対談。それでは早速続きをどうぞ。

1.モビトーク

テスラだから許されるはどこまで続く?

カッパ:

自動車ってすごいいろんな使われ方があって、それに対して1個1個安全を確かめながら作っているっていうのがある中で、テスラは市場にベータ版出しても許されるし、甘く見られているのではってよく思います。

池田:

あれが許されるんなら、みんな苦労はないですよね。

カッパ:

その通りです。グレーなところを攻めていて、そこやっていいんや、やっちゃうんだみたいなところはすごくあります。

池田:

実験室レベルの技術をベータ版だと言って市販車に実装しちゃうわけですからね。「条件が良いときできる」ことと「どんな条件でもできる」ことは全く別ですから。

カッパ:

ベータ版を市場に出してそれに喜んで乗る人がいるところ、そのブランド力はテスラの強みですよね。

池田:

そこはそうですが、ユーザー自身が被害に遭うリスクを理解したとしても、加害に回った時、そんなリスクを許容していない第三者を巻き込む可能性が結構あるわけで、その辺りを規制する監督官庁のお怒りを、テスラは非常に軽視してるわけですよ。

カッパ:

最近は比較的従うようになりましたよね。

池田:

全面的に否定はしません。ある意味、「監督官庁様々」と、お上に対してへりくだるのではなく、対立する関係に持ってっちゃうってのはテスラはすごいなと。既存の自動車メーカーと話してると、いやもうちょっと戦ってもいいんじゃないか、正論だったら言っちゃえばいいじゃんって思うんだけど、波風立てたくないってのはすごいある。ただ最終的には、黙って言いなりになるのも、怒られても耳を貸さないのもどっちも理想的じゃない。どっちもおかしいってボクは思ってます。 

リスクの高い中国市場

カッパ:

最近はテスラもNHTSAやら中国でのいうことを聞くことになってきたのかなと。

池田:

NHTSAのリコール警告の無視に関しては、原則的にサービス拠点が足りないので、やりたくても対応ができない面もあります。台数的にレアな存在のうちは良かったかもしれませんが、今の規模だとその辺りの社会的責任はやはり果たしていく義務があるでしょう。 

それと、中国に関しては結構危ない。中国は2001年にWTOに加盟して以来、ずっとWTOのルールを無視していました。原則的に完成車の輸入は認めないので、中国国内でクルマを売りたければ中国で製造するしかないのですが、それに際しては現地法人が過半を出資した合弁会社しか設立を認めない。外資単独では工場建てられなかったんです。それが、中国共産党のやり方。明確なルール違反ですから、世界からずっと強く批判をされてきた結果、「2021年からWTOルール違反をやめます」と。その第1号としてテスラは外資100%のメーカーとして始めて単独出資で中国法人を設立し、工場を作らせてもらった。 

だけど今のところテスラだけ。今後他社も認めるかどうかはよくわからない。だから形の上では、現状ではテスラだけ特例措置を適用した様な状況にあるわけです。 

当然、共産党としてはテスラに強い興味があるから第1号にしたわけでしょうし、それをイーロン・マスクに自由に経営させる連中ではないです。中国政府とのやり方を見てると、「お前ら特別扱いしたんだからもっと言うこと聞いてくれ」になっている。有形無形で圧力が掛かっています。

車載カメラをスパイ活動だと言ったり、モーターショーでテスラのブレーキはおかしいとクルマの上に乗って騒ぐ人が出たり。こういうのを暢気に個別の事象だと思っていると、多分違います。モーターショーのクレーマーなんて、共産党が意図的に見逃さない限り騒ぎが起きる前に逮捕されるでしょう。それが動画に収められて、世界に発信されていることがどういう意味か考えた方が良いです。下手するとそもそも全部が共産党の仕込みの可能性もある。

要するに明らかに目を付けられていて、隙あらば会社ごと手に入れたい。その前段階として、色々圧力を掛けているとボクは見ています。これは自由経済の国では考えられないめちゃくちゃな話ですよ。中国で特別扱いを受けるのは「何とかより高いものはない」の可能性があるのです。 

カッパ:

イーロン・マスクもTwitterで割と派手なことはするけど中国は絶対に触れない。テスラはすごい中国で伸びてますし、上海工場は多分一番儲かってる工場。そう考えると、モデルや中国一本足はリスクになりえますね。

池田:

テスラの中国法人には、内部に共産党が設立されているはずです。そんなことあるわけないって思うのは日本人だけで、中国で一定以上の企業組織になると必ずそうなるのです。これは避けられない。我々が知らない世界なんですよ。 ちなみに信じがたいことに共産党は取締役会よりも株主会よりも上に位置する、憲法より上で、憲法の外にある。会社の中に共産党ができるってことはどういうことですかって話。 

カッパ:

やっぱりリスクは高いですよね。100%出資の中でテスラがどうなっていくか、中国がどうなっていくか。

池田:

自由経済の世界の常識では100%自国出資だったら安全だろうって普通は思うんだけども、総会より上に共産党というものがあるっていうのは我々の常識じゃないわけですよね。それがある国でビジネスをやるリスク。そういうことでデカップリングだと言われ、今外資企業は絶賛脱出中です。 

カッパ:

テスラがこれから伸びるのは中国なので次に手掛けるのは上海の能増か工場をもう一つ建てるかなと思うんですけど。日本メーカーでも中国進出を重視しているところもありますよね? 彼らは大丈夫なんでしょうか?

池田:

正直なところ、日本メーカーで中国のリスクを織り込んでコントロールできているのは、多分トヨタ1社だけだと思いますね。

テスラは「トヨタの失敗」を繰り返さずにいられるか

池田:

テスラの未来は、需要の頭打ちをどう超えていくかっていう戦いです。いまのところそのステージにまだ来てない。とにかく需要が先行していてそれに追いついて作ればいい。そういう意味ではまだビジネスの正念場に達してないんですよ。 

カッパ:

その段階に行くのは池田さん、いつ頃だと思いますか?

池田:

そこは商品の人気次第なのでつかめません。歯切れが悪いですけれども、工場の生産調整をしなきゃならなくなったところが勝負のわかれ目でしょうね。 

カッパ:

そこで損益分岐点なり、2009年のトヨタの失敗をするかどうかですね。

池田:

普通に考えると、今、えらい勢いで工場をどんどん作っちゃってるので、このまま行くと生産キャパがオーバーシュートしたときには地獄が待ってる。100万を達成したばかりの会社が50万台レベルの工場をいくつも作っている。オーバーシュートしたら何が起きるのか、稼働率が多分50%とかになってしまう。

カッパ:

償却などを考えると、稼働率85%とかでも厳しい。今のトヨタが確かグローバルで85%くらいだったはず。85%でも利益がでるのかどうか。

池田:

トヨタは2009年のリーマンショックの時、1000万台からマイナス15%、850万台まで下がって赤字になった。それに懲りて改革を続けて、今回の決算説明会で発表されたように損益分岐台数をめちゃくちゃ引き下げました。グラフを見る限り、2009年3月の6割掛け。生産規模が半分くらいに落っこちても、何とか生き残れる。必死にやってきて、損益分岐台数を下げながらそこにたどり着いた。

とにかく今、テスラの命運は、生産と需要のバランスがどこで逆転するか。そのときに対処できるかどうか。普通に考えると対処できる可能性を感じない。今は客が誰にも頼まれずに勝手にポチって、買ったことを喜んで拡散しあって、次のポチリを誘発してるんだけど、どっかでそれが止まっちゃったときに、どういう手が打てるんですかって考えた時に、実質的には値下げ以外に何にもないんですよ。営業マンいない、宣伝も打たない。自然に売れること以外に何かできるオプションを持っていない。 

カッパ:

そうなってきたときに、株価もどうなるかですですね…今期の4-6月は上海が動いていないのでおそらく業績ダメそうですけど。

池田:

ベルリンも疑っているんですよね、本当に稼働率大丈夫なのか。一つは当局との揉め事、もう一つは、ベルリンで作る以上、絶対東ヨーロッパ圏で部品調達しているはずでその影響がないのか。 ウクライナのハーネスとか本当に使ってないのか、使ってたんだとするとそれ大変なことになるかもしれませんよと。上海とベルリンが両方止まったら、どうなりますかって話。

カッパ:

工場の稼働開始すると、償却費が乗ってくるはずなので負担は重い。

池田:

定額償却だったらまだいいけど、比率償却だったら最初は負担がさらに重い。

BEV全体も含めて、供給と需要が釣り合ってきたときにどうなるのか。次の見ものはそこ。供給が上回ったときに逆回転が始まるっていう構造があまり理解されていない。規模と時期はわからないけれど、それは必ず来る。なので、今を起点に計算するんだったら成長2倍ぐらいまでが限度。それも単年です。テスラは、2倍の成長をここ数年繰り返しちゃってる。慣れてしまったので、2倍はなんてことはないと過小評価してるけど、実は毎年2倍っていうのは相当な成長率で、既に危険な領域だと思います。

カッパ:

倍になっていくことは台数もどんどん増えていくわけで、その分、受けるダメージっていうのもでかくなっていくんですよね。

***

テスラの対談はここまで。供給>需要となった時にテスラは果たして利益があがるのか。そのタイミングがいつになるのか。今は問題がなくてもいずれぶつかる問題。既存メーカーの経営課題に直面したテスラがどのような手を打つのか、注目です。

次回以降は日本メーカー、そしてEVを巡る問題の対談をお送りします。まだまだ続く対談。こちらも非常に濃い内容になっています。次回、こうご期待!

自動車業界トレンドをチェック

・トヨタやテスラなど自動車メーカー最新情報
・CASEなどの業界トレンドを詳細に解説
・各自動車メーカーの戦略や決算分析
5分でわかるクルマニュース_モビイマ!9/25
読者限定
【切り札はサトウキビ】南米最大の自動車市場ブラジルが示す脱炭素の多様な...
サポートメンバー
5分でわかるクルマニュース_モビイマ!
読者限定
【崩れる牙城】中国メーカー進出で競争激化するASEAN自動車市場のこれ...
サポートメンバー
5分でわかるクルマニュース_モビイマ!9/11
読者限定
【シェア75%】日本自動車メーカーの稼ぎ頭、ASEANってどんな市場?...
サポートメンバー
5分でわかるクルマニュース_モビイマ!9/4
読者限定
【部品点数半減?!】進む自動車部品一体化がもたらす光と闇
サポートメンバー