【CASEで変わる自動車生産】「垂直統合」「水平分業」正解はどちらなのか?【Vol.21】

自動車業界の最新ニュース解説、おすすめレポ、本を紹介するニュースレター、モビイマ!第21号。【コラム】CASEで変わる自動車生産「垂直統合」「水平分業」正解はどちらなのか?【Vol.21】
カッパッパ 2021.09.01
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クルマのイマがわかる「モビイマ!」

( 2021年9月2日発行 )

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ご安全に!

遂に9月に突入。2021年も残すところあと3か月弱になりました。

今年は忘年会なんとか開けるかなーと思っていたのですが、今の感染拡大の状況を見るとなかなか厳しそう。開かれていない送別会がどれだけあるのか。

飲みに行っても問題ない。当たり前だったそんな日々が早く戻るといいなと思いながら、一緒に飲みに行きたい人リストを作っています。

それではモビイマ!スタートです。

【目次】

1. モビコラム

  • 【CASEで変わる自動車生産】「垂直統合」「水平分業」正解はどちらなのか?

2.余談:ヘノヘノカッパッパ

  • 原稿がボツになる

1.モビコラム

モビコラムでは、カッパッパが自動車業界最新トレンドを独自の視点と切り口で語るコラムです。かなり力を入れた内容で仕事/投資に役立つこと間違いなし!

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新規参入相次ぐ自動車業界

アップルカーのニュースが世間をにぎわせています。

アップルが自動車の生産を始めるのではないか。2021年になってから、こうした報道が相次ぎました。最初は韓国の現代/起亜グループ、日本メーカーなどに打診をかけていると報道、各社が否定したものの、その後は電池メーカーとの協同が計画され、BMWでEVの開発を勤めたTOPを雇用したことも発表されました。

自動運転プロジェクト「Taitan」の研究、開発を進めていたアップルが本格的に自動車産業に進出してくる…?

こうした中で注目されているのが、iPhoneと同様の生産方式、開発、設計のみを自社で行い生産は他者に委託する「ファブレス」そして、「水平分業型」での自動車生産です。

これまで自動車業界では完成車メーカーを頂点とする「垂直統合型」での自動車生産が主流でした。しかし、完成車メーカーの技術の核である「内燃機関」エンジンが不要となるEVでは「水平分業型」での生産が進み始めています。日本の佐川急便が導入を決めたEVトラックは中国の広西汽車集団が生産を行いますが、日本のベンチャー企業であるASFが企画と開発を担当しています。中国の電気メーカー、鴻海(ホンハイ)もEV開発プラットホーム「MIH」を立ち上げ、サプライヤー集会には1000社超える企業が参画しました。

日本は得意としていた家電やPCの分野で「垂直統合型」のビジネスモデルから脱せなかった結果、台湾や韓国企業に価格競争力で劣り、シェアを奪われた苦い歴史があります。果たして自動車も家電の二の舞になってしまうのか。100年に一度と言われる技術革新「CASE」の時代、「垂直統合型」「水平分業型」自動車生産はどちらが正解なのでしょうか。

「垂直統合型」の自動車生産

これまで自動車の生産、特に日本自動車業界では「垂直統合型」の生産が主流でした。「垂直統合型」とは開発から生産、販売まですべてを1つもしくはグループで行う生産形式です。日本で際立って特徴的なのは「ケイレツ」と言われる完成車メーカーを頂点とした部品メーカーとの繋がりです。完成車メーカーが部品の仕様を決め、関係会社の一次仕入先に割り当て、一次仕入先は仕様を満たすため、2次仕入先以降の調達を実施し開発を進める。ケイレツ会社間で役割分担を行い、連携し合い、互いに調整しながら組み合わせ、「すり合わせ型」の開発を進め、高い品質を維持する。

部品メーカーからすれば、完成車メーカーへの納入は確約されているため、見通しが立てやすい。リスクをいとわずに研究開発を進めることで部品産業の競争力を高め、結果、自動車本体の完成度を向上させてきました。「ケイレツ」は日本自動車メーカーが世界に躍進できた要因の1つです。

「水平分業型」の自動車生産

「垂直統合型」に対し、「水平分業型」は製品の中心となる開発研究を自社で行い、それ以外の製造や販売を外部に委託するビジネスモデルです。

実は生産委託での完成車生産は一部で実施されています。有名なのはカナダのメーカー、マグナシュタイヤー。トヨタのGRスープラやメルセデスベンツ Gクラスを委託生産し、日本のソニーの試作車であるVISIONSの組み立ても担当しました。ただ現在請け負っているのは、多品種少量生産で大規模設備投資に見合わない車種に限定。大量生産大規模モデルのファブレス生産は自動車業界ではまだ行われていません。(マグナシュタイヤーは新興EV、フィスカーの委託生産が決定済 アップルカーでも生産の最有力候補とされています。)

技術革新CASEの進展により、自動車の部品構成、開発プロセスは変わりつつあります。自動車生産の核部品、内燃機関のエンジンは完成車メーカーのノウハウの塊であり、新規企業が参入することは極めて困難でした。ただEVでは内燃機関がモーターへと転換。部品点数もモジュール化の進展により、3万点から2万点へ大きく減少。開発の基本となる「プラットフォーム」の共通化も可能になり、これまで実現の難しかった「水平分業型」での自動車生産の可能性が広がりました。これまで実機でしか検証できなかった部品間の組み合わせ、調整をバーチャル・シミュレーションで開発するモデルベース開発(MBD)も進められています。

https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2019FY/000582.pdf

https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2019FY/000582.pdf

各部品の調整を行う「垂直統合型」よりも、水平分業型は開発スピードが早く、時代のニーズをいち早く掴み反映できる利点もあります。

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続きは、2202文字あります。
  • 2.余談:ヘノヘノカッパッパ

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