5分でわかるクルマニュース_モビイマ!3/6

自動車業界の最新ニュース解説を発信するニュースレター、モビイマ!。先週のニュースをダイジェストで紹介。この記事だけ読めば、最新の自動車ニュースを抑えられる。1週間の始まりにぜひ一読を。
カッパッパ 2023.03.06
誰でも

ご安全に!

徐々にあったかくなって、ダウンをいつ仕舞うか考えているカッパッパです。

油断しているとまた寒くなって、衣替えのタイミングが難しい。子どもはTシャツで外で元気に遊んでいるんですが。

先週のニュース/トピックスをカッパッパが厳選。コメント付きで解説。この記事だけ読めば、最新の自動車ニュースを抑えられる。1週間の始まりにぜひ一読を。

電動化目標引き上げ

日産自動車はEV=電気自動車などの「電動車」の販売比率を引き上げると発表しました。ヨーロッパでは、2026年度に全体の98%を電動車とする方針で、EVシフトへの対応をさらに加速させます。
日産自動車は、電気自動車やハイブリッド車などの「電動車」の販売比率の目標を発表し、世界全体では2026年度に44%以上と、おととし11月に示した40%から引き上げました。

ますます加速するEVシフト。変わりゆく状況に対し、日産が電動化の目標を引き上げる計画を発表しました。従来の計画では2030年度電動化率50%→55%と5%の引き上げ。

2026年度の電動車販売比率は、欧州:98%(←75%)日本:58%(←55%)中国:35%(←40%)米国:2030年度までにEVのみで40%以上(変更なし)で全体としては40%から44%以上に情報修正しました。

今回の発表、まず「電動化」なので今回の販売比率はxEV、BEVだけでなくHEVも含めた計画であることに留意が必要です。(「電動化」の言葉の定義がややこしい問題)

地域ごとに見ていくと欧州では主力となる小型SUV「ジューク」、SUV「キャシュカイ」の次期型車をEV専用車として投入。26年度までに販売車種を拡充させ、電動車の販売比率を向上。直近では次期排ガス規制「Euro 7」が正式に提案なされ、今回の日産のように、電動化率を上げていかなければ対応が難しい状況。世界の中でも欧州は最も早く電動化が進んでいくことになるでしょう。

日本では軽EV「サクラ」の販売が好調であることを受け、電動化率を引き上げ。メインはHEVになるかと思われますが、これまで「リーフ」で先行してきた日本のEV市場を掴み、シェアを伸ばしたいところ。本当に「サクラ」良いクルマですね(値上げしちゃったけど)

興味深いのは中国。BEV、PHEVを中心とした「新エネ車」の伸びが著しいのですが、電動化率は引き下げ。その要因は「排出ガス規制強化が先送りされたから」としていますが、中国は当初の予想よりもEVシフトが進んでいます。その伸びを受けて、BEVの競争は激化し、23年に入ってからは各社が一斉に値下げし、価格競争の段階に。そして、日産は22年中国で大きくシェアを落としています。現状、BEVを低価格で売ることは利益が非常にでづらく、あえてICEで勝負する選択に出たのかもしれません。

そして米国。バイデン政権のEV推しの政策によりこの1年で大きくEVシフトへ舵を切りました。26年以降にセダンとSUVそれぞれ2車種ずつ計4車種のEVを投入。「インフレ抑制法」の要件を満たし、7500ドルの税控除を受けられる生産体制(現調化)を整備。対応できるのが26年以降になるのが難しいところで、それまでどうシェアを維持していくのかが注目ポイントだと思います。

また「SDV(ソフトウェア定義車両)」の拡大も発表。コネクテッドカーのサービスを強化し、車内コンテンツからオンデマンド機能まで、ソフトウェアを活用して多様な顧客ニーズへ対応するSDV。テスラが先行するこの分野、既存メーカーである日産がどこまで機能高い「ソフトウェア」車両を作ることが出来るのか。今後の販売動向を大きく分けるポイントでどういった機能、UXを提供できるのか、注目です。

強みは車両だけではありません

テスラは1日、低価格の小型電気自動車(EV)を数年内に投入する計画を発表した。新たな車両組み立て方式の工場をメキシコ北部に建設し、生産コストの半減を目指す。ガソリンエンジン車並みの車種を品ぞろえし、EV市場で追い上げるライバルを突き放す。

テスラ、3月1日に投資家向けイベント「Investor DAY」を開催。事業計画「マスタープラン3」が発表されました。

期待されていた廉価BEV「モデル2」や次期ハードウェア「HW4」搭載時期の具体的な発表はなく、自動車関連で目新しいのは「メキシコの新工場建設が正式発表」くらい…期待が高すぎたこともあり、少し肩透かし、株価も下落しました。

今回の「マスタープラン3」はテスラの掲げる「持続可能な社会」に向けた取り組みが中心。

HIRO MIZUNO
@hiromichimizuno
昨日のテスラインベスターディでイーロンの発表したマスタープラン3についての大きな誤解は、マスタープラン3が、「テスラを成長させる」ことを目的としたプランではなく、「テスラを成長させることにより、地球環境を持続可能なものにする」ことを目的としたというプランだということからきています。
2023/03/03 15:14
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自動車というよりはヒートポンプや電池事業でを含め、いかに環境へ優しい技術革新を進めるのかがメインになっていました。よく言われる「テスラは自動車メーカーではない」が大変わかるマスタープラン…

自動車業界の人としては説明に合った自動車生産技術やサプライヤーチェーン構築が大変面白かったです。

Membo
@membo1003
廉価テスラの作り方、Before-After。
(便宜上AfterはModelY)

ヘンリー・フォード以来の「先に車体を組み立て塗装して、あとから部品を取り付ける」という伝統手法から、「先に部品を組み立てて、最後にパネルで蓋をする」手法に変更とのこと。

これで無理な姿勢でインパクトレンチ構えなくて済む。
2023/03/02 12:05
72Retweet 288Likes

その中でも一番気になったのが車両の組み立て方法の変更。車体に部品を取り付ける→部品を先にサブASSYして最後にパネルで蓋をする方法へ。これはブロック工法といって、過去船の建造に採用されていたのですが、自動車で採用するのは多分テスラが初めて。最後のASSYをどういった手法で行うのか。製造ラインのレイアウトがどうするのだろうと気になることばかり。あとこちらの手法を採用すると各部品の組み立て数を調整することで需要の変動に合わせた製造ラインができるはず(多分タクトタイムの調整が容易になる)。これまでのテスラのラインは少品種大量生産に向いた製造ラインになっていて、需要減に対応しづらかったのですが、この工法が取り入れられることで少ない量でも利益の出やすい製造ラインを作ることができる…かもしれません。

他にもモデルYが当初と比べて▲30%のコスト削減を達成したや半導体供給不足なかでのサプライヤーとの連携など、自動車業界の中の人的には参考になるトピックがてんこ盛りでした。テスラの魅力は車両のこれまでにないUXやSCを含めた充電網の整備で語られることがおおいのですが、生産技術や強靭なサプライチェーンや自社開発力も大きな強さだと思います。(むしろ今後はそうした点で競争力をもつのでは思っています)

価格改定は各社で違い

ホンダが主要な1次取引先に対する値下げ要請を2024年3月期は行わない方針であることが1日、明らかになった。原材料やエネルギー価格の高騰、4輪車の減産などでサプライヤーの事業環境が悪化していることに配慮した。1次取引先への要請を見送ることによって、2次、3次取引先に対しても原材料高騰などに応じた価格転嫁を促すことを要請。部品会社の費用負担を減らすことで、サプライチェーン(供給網)の競争力強化につなげる。

年に1回もしくは半期に1回、自動車メーカーからサプライヤーへ一定率の値下げを要求する自動車業界慣例の「価格改定」。この度ホンダはこの価格改定を見送りへ。

他業界の方からすると理由もなしに価格を下げるのはおかしいと批判されることも多い価格改定。やたらトヨタだけが批判されたりするのですが、国内、海外含めて自動車メーカーからの要請はあり、また価格改定を受けないと次の受注も得ることが出来ず、サプライヤーとしては価格改定を見込んで利益が出るよう生産性を向上させていかないといけません。(現状維持んではNG→この生産性向上が日本の自動車業界の競争力を培ってきたところもあるので一概に悪いとは言えない)

ただ、直近の自動車メーカーばかりが儲かる状況(供給不足で販売奨励金が減って利益率が高まっている)でサプライヤーは生産台数が伸びずに苦しい状況の中では「価格改定」は非常に厳しい。自動車メーカー⇔サプライヤーは共存共栄の関係にあり、継続して良い製品を作り出すためには利益の出る適正な価格設定が重要。ホンダ系のケイレツは業績が厳しい企業も多く、今回の改定見送りは先を見据えた戦略と言えるでしょう。

23年の価格改定は自動車メーカーによって対応が分かれています。トヨタは基本見送りですが、一部の大手企業は改訂を実施予定。日産は通常通り価格改定を実施。今後のサプライチェーン構築、そして業績にも直結するだけに各社がどのような対応をとるのか注目です。

***

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今回も最後までお読みいただきありがとうございました!!

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・CASEなどの業界トレンドを詳細に解説
・各自動車メーカーの戦略や決算分析

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