【データでがっつり検証】『EVシフトが失速している』は果たして真実か?

これまで加速し続けてきたEVシフトの失速が声高に叫ばれています。欧州の2035年内燃機関車廃止撤回から徐々に風向きが変わりはじめ、2023年後半以降はHEVを主軸として戦略を練ってきた日本メーカーの「正しさ」が強調される記事が多く発表されています。果たして本当にEVシフトは失速しているのか。その現状をデータでがっつり検証します。
カッパッパ 2024.03.30
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「これからはEVの時代だ。」2021年ごろから加速したEVへの期待の高まり。テスラは年50%を超える成長を遂げ、時価総額は一時トヨタの4倍以上にまで達しました。他EVベンチャー企業の株価も大きく上昇。一方でEVの販売車種/台数が少ない日本メーカーは時代から取り残されると多くの批判を受けてきました。

しかし、23年後半以降、その風潮は大きく変わりました。欧州の2035年内燃機関車全面廃止が撤回され、一部は容認へ。BYDを代表とする中国メーカーが躍進する中で、EVシフトで先行していた欧州/米国が懸念を表明。世界各国で補助金の打ち切りが続くこともあり、EVには逆風が吹いています。「EVシフトが遅れる」と見込んでいた日本メーカーの戦略が評価され、株価が上昇。EV関連株は軒並み下落し、「EVバブルが弾けた」という論調すらあります。

ただ、電気自動車のシェアは下がっておらず、成長を続けている、EVシフトは進んでいると主張される方もいます。果たして本当にEVシフトは失速しているのか。具体的な販売データをもとに主力市場である中国、アメリカ、欧州3地域のEV販売市場の現状、トレンドを詳細に解説します。

◆各地域販売データ参照元
中国:CPCA(中国自動車工業会) 全国乘用车市场分析
アメリカ:Argonne Light Duty Electric Drive Vehicles Monthly Sales Updates - Historical Data
欧州:ACEA(欧州自動車工業会) New car registrations

【15秒でわかる】EVシフト失速まとめ

  • 23年は22年と比べて、電気自動車販売の伸びは大きく低下し、成長は鈍化

  • 各地域でBEVの販売は23/8以降伸び悩み、24年に入ってからは低下

  • 24年電気自動車の販売台数、シェアは中国は伸びる余地があるが、欧州、アメリカでは横ばい、もしくは低下の可能性が高い

  • BEVの販売は補助金によって左右され、政策が与える影響が大きい

「電気自動車」をどこまで含めるのか問題

EVシフトについて、言及する際に気を付けるべきなのは、「電気自動車」の定義をどこに置くのか、具体的にはPHEV(プラグインハイブリッド車)を含めるのかどうかが重要です。PHEVは外部充電が可能/電力によるモーターだけで走行可能なハイブリッド車(内燃機関=エンジンを持つ)であり、ガソリンと電気の2つのエネルギーを利用して走行することができます。

IEA(国際エネルギー機関)ではBEVとPHEVを合わせて「EV」を位置づけており、中国のNEV(新エネ車)はBEVとPHEVとFCEVが対象となっています。PHEVはいわば「BEV」(純電気自動車)と「ICE」(内燃機関車)の中間であり、どちらでもカウントが可能です。そのため、報道の際にはPHEVは主張にあった区分で計上され、EVシフトの実態が記事によって異なる要因となっていました。

今回の記事ではEVとPHEVを区分して、分析し、「BEVのみ」「BEVとPHEV合算」、2つで実態がどうなっているのかを解説します。

22年比で明らかに鈍化した成長速度

今回対象とする中国、アメリカ、欧州でのBEV、PHEVを合わせた2023年の販売台数は1326万台。これは全体の9割以上を占めており、この3地域を分析することで、EVシフト全体の動向を把握することができます。

まず2023年、年間で見た場合どのような傾向になっているか。BEV及びPHEVの販売台数は2022年比でそれぞれ増加し、EVシフト自体は進んでいます。ただその成長速度は21年→22年よりも大きく鈍化しており、EVシフトが失速していることは鮮明です。

BEVのみを見た場合、22年では台数+296万台、シェアは6.5ポイント増加しているのに対し、23年では台数+218万台、シェアは1.7ポイント増にとどまっています。23年は半導体不足から回復し、自動車市場の販売台数全体が大きく増加(3地域で+828万台)しているのにも関わらず、23年BEV販売台数の伸びは22年時よりも下がっています。台数、シェアは増えてはいるので、成長は続けてはいるものの、22年ほどの勢いはすでにありません。

BEVとPHEVを合算した台数、シェアもほぼ同様の傾向がみられ、シェアの増加は22年8.5ポイントに対し、23年は3.3ポイント。報道されている「EVの失速(成長速度鈍化)」は全体の傾向として間違いないでしょう。

中国:23年は右肩上がりだけれども

続いて各地域ごとに年間での推移、23年1月~24年2月ごとの台数、シェアについて分析し、直近の動向がどうなっているのか、見ていきましょう。

まずは世界最大の自動車市場であり、最もEVシフトが進んでいる中国から。

23年のNEV(BEV+PHEV)の販売台数は前年比+261万台、シェアは5.9ポイント拡大。ただし22年では前年比+336万台となっており、台数の伸びは前年よりも少なくなっています。これはNEV自体の普及率が上がり、購入できる層が一巡し始めていることにより、成長率は低くなっていると考えられます。

月単位でのBEV+PHEVの販売台数/シェア推移をみると、23年は右肩上がりに伸びていることが分かります。11月には40%のシェアを超え、販売台数の多かった12月は単月で94.5万台にまで達しています。中国ではNEVはアーリーアダプターだけではなく、大衆にも購入が進む普及機に入っていると言えます。世界で最も普及が進んでいる要因は何よりも価格。BYDではガソリン車並みの価格でPHEVを販売。BEVに関しても中国市場の価格は他市場と比べて極めて低く、内燃機関車との差額はわずか。税免除、ランニングコストや所得のしやすさ(大都市におけるナンバープレート発行など)を考えるとNEVを買うのが経済的に合理的な段階にまで達しています。

ただ24年に入ってからは、シェアは低下。中国全体で景気後退懸念、12月年末での駆け込み購入の反動、2月は長期休暇である春節もあり、台数はから全体の台数が大きく落ち込みました。加えてNEVでは新モデルや値下げ期待による買い控えも発生し、シェアも低下しました。24年に入ってからの中国市場は2月までを見れば、NEVの成長は止まったと言えます。

ただ2月中旬以降、状況は一変。BYDが新車種「秦PLUS」のマイナーチェンジを実施し、エントリーモデルの販売を開始。その価格は7万9800元(約159万6000円)。「電比油低(電気はガソリンより安い)」を打ち出し、他BEVもほぼ全車種で値下げ。他社も追随し、3月ではNEVの台数は大きく伸び、45%に達すると予想されています。中国では政府の後押しもあり、依然NEV拡大の基調は大きく、24年も成長が見込まれます

ただ、中国でもBEV単体だけで見るとその成長には陰りが見え始めています。23/8以降、約25%のシェアとなってからは成長が止まり、ほぼ横ばい。1,2月は2割を割っています。PHEVの販売が伸びる一方でBEVは依然充電インフラや航続距離、充電距離の問題はすべて解消されたわけではなく、成長はSTOP。PHEVの方がBEVよりも安価であり、BEVのシェア拡大は今後止まり、PHEVでの増加がNEV全体を押し上げていく可能性が高まっています。24年ではNEV全体だけでなく、BEV単体でのも重要なポイントです。

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