【テスラ2025年2Q決算徹底解説】EVでは最早稼げない!次のブレイクスルーは果たして成し遂げられるのか
「もはやEVで稼ぐのは無理。自動運転やロボット、充電事業で稼ぐしかない」
かつて覇権を取ったテスラのEV事業が曲がり角を迎え、赤字が見えてくるほど業績が悪化しています。 2023年には世界で最も売れた自動車がモデルYとなり、自動車業界でEVのトップランナーとして君臨し続けたテスラ。しかしこの1年で潮目が変わりました。
欧州での補助金廃止、中国での競争激化などを受け、右肩上がりで伸び続けていた販売台数は横ばいになり、ついには減少へ。2024年通期では、販売台数が前年割れし、25年に入ってからも前年同期比減が継続しています。トランプ政権へのイーロン・マスク氏の参画が引き起こすアメリカ国内の反発、欧州での政治的イメージ悪化──。アメリカでのEV補助金廃止や燃費規制の緩和を含めて、テスラにはかつてないほど逆風が吹いています。
2025年4-6月期の決算は、今のテスラを象徴する厳しい業績となりました。この記事では、テスラが直面する危機、そして未来への戦略を、深く掘り下げます。
1.前年同期比減が当たり前になったEV事業

出典:Tesla 2025 Q2 Shareholder Deck
テスラ、2025年4-6月期売上高は224億9600万ドル、(前年同期比:▲12% ) 、gross profit:(粗利益:売上高-売上原価-直接経費⁾は3億878万ドル(前年同期比▲15%)。減収減益となり、営業利益率は4.1%。他社他自動車メーカーと比較しても決して高くない営業利益率となりました。23年以降EV事業の採算性は悪化、24年以降は売上も低下傾向にあり、今回2025年4-6月は過去10年で売上高は最悪の落ち込みとなりました。

出典:Tesla 2025 Q2 Shareholder Deck
自動車事業で見た場合では売上166億6100万ドル、費用137億9500万ドル、粗利率17.2%。ただしこの中にはクレジット販売(CO2排出権の販売)が4.39億ドル計上されており、それを除くと粗利率は14.9%。最盛期(2022年1-3月)では30.0%にまで達した粗利率ですが、その後は右肩下がりで、現状は既存自動車メーカーと同レベルにまで落ち込んでいます。利益を稼ぎづらいBEVだけで、黒字になっていることは賞賛すべきですが、22年頃までの他社を圧倒する勢いはすでにありません。

出典:Tesla 2025 Q2 Shareholder Deck
純利益の推移を見ても、2025年に入ってからの落ち込みは明確です。中国の春節の影響もあり、販売台数の少なかった1-3月よりは純利益は改善してはいるものの、1172億ドルは前年同期比▲16%となっており、成長は止まっていることは間違いありません。
2.モデルチェンジがあっても欧米中の三大市場で落ち込む販売台数

出典:Tesla 2025 Q2 Shareholder Deck
テスラが目下苦しんでいるのEVの販売台数の落ち込みです。25年4-6月期での販売台数は38.4万台と前年同期比▲13%。右肩上がりの成長を続け、「年50%成長」を掲げてきたテスラでしたが、2023年以降は失速し、24年に入ってからは前年同期比減が続いています。2025年4-6月もその傾向は変わらず、前期比▲6万台と大きく落ち込みました。2025年に入ってからEVの販売台数ではライバルBYDに追い越され、世界TOPの座を明け渡す結果となっています。
2025年1-3月期では落ち込んだ要因をテスラは「モデルチェンジによる調整」と分析していましたが、モデルチェンジ後の4-6月でも数量は落ち込んでいます。モデルチェンジ後は消費者が最新モデルを買い求めるため、一般的に台数が増える傾向にあるのですが、今回のテスラには当てはまっていません。主要市場である中国、欧州、アメリカでのBEVでの競争激化に加え、トランプ政権に参画したCEOイーロンマスク氏への政治的な反発による消費者離れも販売減の大きな要因となっています。
欧米中が落ち込みを見せる中で、それ以外の市場で台数を増やす、進出することで、テスラは販売台数を確保する取り組みを始めています。4-6月期は韓国、マレーシア、フィリピン、シンガポールで過去最高の販売台数を記録し、7月からは世界3位の市場、インドでも販売が開始されました。ただこうした海外市場は欧米中と比較すると台数が少なく、テスラ全体の販売台数減をカバーするほどの規模には至っていません。
今回テスラは2025年の通期見通し販売台数を発表しませんでした。このままいけば、2025年は2024年を下回り160~170万台にまで下がる可能性もあります。他事業は成長を続けてはいるものの、依然売上高の3/4はEV事業であり、当面の間はこの厳しい業績が続いていくことでしょう。
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