【自動車メーカー決算解説_トヨタ】時は来た!過去最高の販売台数とBEVで攻める2023年

自動車業界の最新ニュース解説を発信するニュースレター、モビイマ!。「各自動車メーカーの23年3月期決算」を解説します。今回はみなさんお待ちかねのトヨタ。佐藤新社長を迎え、新体制へ移行。EVシフトも本格化させ26年150万台の目標を掲げているトヨタ。その足元の業績は?そして23年度の業績見通しは?
カッパッパ 2023.05.13
誰でも

ご安全に!

飴を食べるとすぐに噛んでしまうタイプ、カッパッパです。少なくてものど飴はもう少し舐めた方が良いのではないか。

2022年世界TOPの販売台数、グローバルでシェアを伸ばし、日本メーカーの中では頭1つ抜けている、世界に誇る自動車メーカー、トヨタ。4/1に豊田章男氏が社長を引退し、新社長佐藤氏が就任。新たな電動化計画も発表され、次のフェーズへ向かおうとしています。トヨタの動向は自動車業界のみならず、日本経済全体にも影響し、今後を占う重要な指標。半導体不足が解消される中で、いつからフル生産になるのか。そしてEVシフトにより、台数が落ち込んでいる中国市場への対応は。はてさて決算の身やいかに…

1.売上過去最高更新ながらも原材料高(1.5兆円)で減収

 トヨタ自動車は5月10日、2023年3月期通期決算を発表した。2023年3月期通期連結業績(2022年4月1日~2023年3月31日)は、営業収益37兆1542億円、営業利益2兆7250億円で増収減益と発表した。過去最高の営業収益となったものの、営業利益は資源価格の高騰などで前期を2706億円下まわった。税引き後の利益は2兆4513億円となり、当期利益率は6.6%となった。
トヨタ 2023年3月期 決算説明会 プレゼンテーション資料より引用

トヨタ 2023年3月期 決算説明会 プレゼンテーション資料より引用

2023年3期売り上げは営業収益37兆1542億円と過去最高を記録。円安、そして東南アジアでの販売好調などの要因により売り上げは前年よりも増加しました。一方で営業利益2兆7250億円と大きく減益に。営業利益率も7.3%と前期と比べ2.2ポイント下がる結果に。売り上げが伸びたにも関わらず、利益が伸びきらなかった理由は何なのか?

トヨタ 2023年3月期 決算説明会 プレゼンテーション資料より引用

トヨタ 2023年3月期 決算説明会 プレゼンテーション資料より引用

その要因はやはり「原材料価格高騰」。当期だけで1兆5450億円のコストUP。円安による為替益1兆2800億円、原価低減2550億円とほぼ相殺。賃上げによる労務費、CASEなどの研究開発費や減価償却費の増加、また米国における急激な利上げに伴うスワップ評価損、加えてロシアからの事業撤退がマイナスとなり、その分減収となりました。(とはいえ、なんだかんだで2兆7000億稼いでいるのは本当にすごい)

トヨタ 2023年3月期 決算説明会 プレゼンテーション資料より引用

トヨタ 2023年3月期 決算説明会 プレゼンテーション資料より引用

連結の販売台数は882万台、トヨタ/レクサスブランドでは961万台、ダイハツや日野自動車を含めたグループ総販売台数では1056万台。前年度と比較して+1.7%(グループ総販売台数)。2022年販売台数世界一であり、他社と比較しても、シェアの伸びは頭一つ抜けています。

ちなみに原材料高が1兆5000億円で販売台数が1056万台なので、単純計算で1台当たり15万円のコストUP。そりゃ値上げしないと利益の確保は難しい…

なお地域別にみると今回特に伸びているのは東南アジア。半導体を多く使う⇒比較的機能の高いクルマが作れない一方で、半導体使用量の少ない東南アジア向け車種では生産が回復し、販売、利益が伸びていることが今期の特徴です。

また電動化比率は29.8%とほぼ3割。5.4%の伸びを見せており、HEVが主流ですが確実に電動化は進んでいます。

トヨタ 2023年3月期 決算説明会 プレゼンテーション資料より引用

トヨタ 2023年3月期 決算説明会 プレゼンテーション資料より引用

地域ごとの利益を見ると、北米が大きく減少。これは原材料高騰と販売台数減に加え、おそらく人件費高騰も要因の1つ。ドル箱市場だったはずですが、原価高騰を価格に反映しきれず、大きく落ち込む結果に。金利上昇に伴うスワップでの損失を含めると赤字に。他社に比べても北米の大幅減が目立つのが気になります。欧州もロシア撤退の損失があり、大きくマイナス。日本は円安の恩恵を受け大幅プラス、東南アジアではコロナ禍からの回復やタイバーツ安の為替益によりプラスに転じています。

トヨタ 2023年3月期 決算説明会 プレゼンテーション資料より引用

トヨタ 2023年3月期 決算説明会 プレゼンテーション資料より引用

なお、中国は微減。9月までは好調だっただけにコロナによる散発的なロックダウンや23年に入ってからの販売落ち込みが影響を与えている模様です。

2.2023年は挽回の年!

トヨタ 2023年3月期 決算説明会 プレゼンテーション資料より引用

トヨタ 2023年3月期 決算説明会 プレゼンテーション資料より引用

今期の連結販売台数は23年3月期から+8.8%の960万台。グループでの総販売台数(ダイハツ/日野自動車含む)は+7.8%、1138万台。この数年苦しんできた半導体供給不足は緩和。半導体のリスクを見える化し、代替品への切り替えを進めていることが会見の中で発表がありました。供給制約から解放され、生産の挽回を仕掛ける計画台数になっています。世界どの地域でも台数が伸びる計画になっていますが、一番伸びが見込まれているのは日本で+12.1%、25.1万台。バックオーダーが貯まり、納期が長期化していましたが、今期は改善に向かいそうで、消費者としてもうれしいところです。

トヨタ 2023年3月期 決算説明会 プレゼンテーション資料より引用

トヨタ 2023年3月期 決算説明会 プレゼンテーション資料より引用

トヨタ 2023年3月期 決算説明会 プレゼンテーション資料より引用

トヨタ 2023年3月期 決算説明会 プレゼンテーション資料より引用

トヨタ・レクサスでの生産台数の見通しは前期比+10.6%の1010万台。国内の生産台数は4年ぶりに300万台を超える見込み。直近の生産台数(3~5月)は各月で過去最高を超えるレベルとなっており、このままいけば23年は過去最高の生産台数となる見込み。これまで生産量が落ちて、売上が立たず苦しんできたサプライヤーにとって増産は好材料。事前に発表のあったトヨタ系部品メーカーは軒並み増収増益を見込んでいます。(一方で過去最高レベルの生産量になるので生産能力が追い付くかが重要に。)

「意志のある踊り場」がようやく終わり、これからは右肩上がり、販売/生産を加速させる1年になりそうです。

トヨタ 2023年3月期 決算説明会 プレゼンテーション資料より引用

トヨタ 2023年3月期 決算説明会 プレゼンテーション資料より引用

今期の業績見通しは営業収益+8458億、38兆円、営業利益+2750億円の3兆円。どちらも過去最高。日本企業として営業利益3兆円を達成できた企業はこれまでなく、トヨタが果たして実現できるのかに注目が集まります。生産/販売台数は半導体供給不足の緩和を見込んでかなり挑戦的であることも事実。デンソーの決算では車両生産10%下振れも織り込まれていました。中国市場での地場メーカーの躍進や北米の景気後退懸念がある中で過去最高の生産/販売台数を達成し、営業利益3兆円を成し遂げることができるのか

トヨタ 2023年3月期 決算説明会 プレゼンテーション資料より引用

トヨタ 2023年3月期 決算説明会 プレゼンテーション資料より引用

このトヨタの高い採算性を支えているのが十八番である原価改善/TPSと営業面での努力。原材料価格が高騰する中で、原価改善を進め、コロナ禍前よりも収益が上がる体質へ成長しています。これからもCASE対応で設備投資/研究開発費が増える中で資金の確保のために、コストを削減し、収益を向上させる取り組みは欠かすことができない活動になっています。

また今期見通しの注目ポイントは想定レート。トヨタはいつも大変手堅く見積もる傾向があるのですが、今期は1$=125円、足元134円なので10円近い差があり、円安になるほど輸出の多いトヨタにとっては有利になるため、まだまだ伸びしろはあります。販売台数が計画未達成であっても、為替要因により、営業利益の達成はできるかもしれません。

3.BEVは5倍の20万台(そして全方位も維持)

トヨタ 2023年3月期 決算説明会 佐藤社長メッセージより引用

トヨタ 2023年3月期 決算説明会 佐藤社長メッセージより引用

そして今回の決算会見で強調されたのは、電動化の取り組み。遅れていると指摘された来たBEVに関しては、事前に発表のあった26年150万台を基準とし、今期では20.2万台の目標を掲げました。前期が3.8万台なので+16.4万台、伸びは535%。(ちなみにBEV20万台は2022年のBMWのBEV販売台数とほぼイコール)総販売台数が多いため、全体に占める割合で見れば、少なく見えるかもしれませんが、台数で見れば海外メーカーにも匹敵。達成されれば、「EVシフトの遅れ」への批判は少なくなることでしょう。中国で販売開始した「bZ3」やレクサス「RZ」で販売を拡大させる計画です。(これまでの発表車種だけで20万台達成できるのか、追加車種があるのか)

トヨタ 2023年3月期 決算説明会 佐藤社長メッセージより引用

トヨタ 2023年3月期 決算説明会 佐藤社長メッセージより引用

BEVのラインナップでは26年までに10モデルの投入を発表。先日上海モーターショーで発表あった「bZスポーツ・クロスオーバー・コンセプト/bZフレックススペース・コンセプト」やIMV BEVは発表済みで今後どの地域でどんなクルマが投入されていくのか「クルマ屋が作るBEV」とは果たしてどんなクルマになるのかが気になるところ(スポーツのセダンシルエットは一体なにだろう)

トヨタ 2023年3月期 決算説明会 佐藤社長メッセージより引用

トヨタ 2023年3月期 決算説明会 佐藤社長メッセージより引用

また合わせて、BEVを手掛ける専任組織「BEVファクトリー」を新設。2026年に発売予定の「新世代BEV」はこのBEVファクトリーで開発が行なわれ、 「ソフトウェアプラットフォーム」、「電子プラットフォーム」、「車台」と、全てが刷新される予定。コンセプトモデルを2023年秋に開催される「ジャパンモビリティショー」で公開予定となっており、今から発表が楽しみです。

トヨタ 2023年3月期 決算説明会 佐藤社長メッセージより引用

トヨタ 2023年3月期 決算説明会 佐藤社長メッセージより引用

ただトヨタの基本「全方位」は変更がありません。敵は炭素、BEVだけでなくHEVや水素も含めた事業戦略は新社長になっても揺るがない。

トヨタ 2023年3月期 決算説明会 佐藤社長メッセージより引用

トヨタ 2023年3月期 決算説明会 佐藤社長メッセージより引用

トヨタ 2023年3月期 決算説明会 佐藤社長メッセージより引用

トヨタ 2023年3月期 決算説明会 佐藤社長メッセージより引用

特に力が入れられているのが水素。水素を作る時の電力がーであったり、ステーションにやたらお金が必要といろいろ言われがちなのですが、クリーンエネルギーであることに間違いはなく、今後ますます技術発展は進んでいきます。グラフにあるように2030年はまだまだ少ないかも知れませんが、その後の20年で大きく成長する見込み。トヨタはBEVのその先を考えて開発を進めているといえるのかも知れません。トヨタのタイでの社会実験を考えると、クルマ、モビリティだけでなく水素全体のパッケージや運用を含めた社会システムについても取り組みが進められていきそうです。全方位、その先を見据えた戦略は今儲かっている世界1のトヨタだからこそできる戦略だと思います(もちろん戦略の妥当性は個人で是非がある)

***

今期の見通しは生産/売上は共に過去最高。半導体不足から脱却しBEVにも本腰を入れ始めたトヨタ。ただ依然続く原材料高や新興メーカーの台頭が著しい中国市場、アメリカの景気後退、金利上昇など懸念事項は山積みです。トヨタの動向は自動車業界のみならず、日本経済全体に影響を与えます。果たして日本企業として初の営業利益3兆円を達成できるのか。本当に今年BEV20万台販売できるのか。 

今は世界のTOP企業トヨタ。社長も交代する中で今後も今の地位を維持し続けられるのか。今後のトヨタの動向(特に電動化関連と各地域での販売)に注目です。

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