【かつてない価格競争】混迷極める中国自動車市場の行く末は

世界最大の自動車市場、中国。その販売台数は2022年,2686万台と日本の5倍以上の巨大市場。コロナ禍での落ち込みも他国に比べれば少なく、21年からは前年比プラス、市場は拡大してきました。ただ23年に入り、状況は一転。かつてないほどの価格競争に突入しています。その理由は何なのか。今後どのようになる+日本メーカーはどうするのか。詳細に解説します。
カッパッパ 2023.04.03
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年明けから継続しようと頑張っている自宅での筋トレがようやく習慣化しつつあるカッパッパです。腕立て、スクワット、腹筋を少しずつですが毎日計測してできるようになりました。今年の健康診断では各種の値が改善されているといいな。

今回のニュースレターのテーマは「世界最大の自動車市場、中国」。販売台数は2022年,2686万台と世界で断トツの1位。日本の5倍以上の巨大市場です。コロナ禍での落ち込みも他国に比べれば少なく、21年からは前年比プラス、市場は拡大傾向。ただ23年に入り、状況は一転。市場は混迷を極め、変化の激しい、まさに「一寸先は闇」の現状となっています。その理由は何なのか。今後どのようになる+日本メーカーの行く末は。徹底的に解説します。

自動車業界の今後を左右する重要な局面。ぜひとも今回のニュースレターを読んで、お仕事/投資の参考にしていただけたらと思います。

***

① 加速するEVシフトと「民族系」の台頭~2022年中国自動車市場まとめ~

まず、前提条件となる2022年の中国自動車市場を整理しておきましょう。

より詳細なレポートが読みたい方はこちらから。

2022年中国自動車販売台数は2686万台、前年比+2.2%。全世界での販売台数のうち。3割以上が中国。また先進国が半導体不足で前年比マイナスとなる中、中国市場は成長を続けています。

22年の中国自動車市場の特徴は「加速するEVシフト」「『民族系』の台頭」です。NEV(新エネ車:BEV+PHEV+FCEV)の22年販売台数は689万台、前年比93.4%の大幅な伸びを見せ、販売台数に占める割合は25.6%と1/4を超え、22年11月からは30%以上を超えました。22年の従来予想は600万台とされており、予想を上回るペースで市場が拡大します。その中でも特に伸びているのがBEV、電気自動車。BEVのみで536万台でNEVのうちの78%を占め、前年292万台から244万台も増加しています。BEV単体だけで日本の新車販売台数(420万台)を超え、成長の速度は年々加速しています。

そしてこのBEVの成長と共に、中国の地場メーカー(not外資)、いわゆる「民族系」の販売台数、シェアが大幅に拡大しています。2020年での民族系のシェアは36%→2022年シェアは47%と11%の大幅増。爆発的成長を見せるBYDを筆頭に急激に販売台数を伸ばし、直近では遂に50%超え。シェアの高かった海外自動車メーカー、特にドイツ、日本メーカーのシェアが大きく落ち込んでいます。また影響は中国国内のみに留まりません。中国から海外への自動車輸出は大幅な伸びを記録。2020年は100万台ほどでしたが、21年は200万台、22年は300万台と年間100万台ペースで増え、22年はドイツを抜いて自動車輸出世界2位(1位は日本)になりました。

これまで中国政府は自動車産業の育成に力を入れてきました。まずは海外メーカーを誘致し、合弁会社を設立することで技術ノウハウの蓄積とサプライチェーンを構築。内燃機関車ではどうしても既存メーカーの長年の研究開発ゆえに技術力で対抗することは難しく、民族系はシェアを伸ばすことが出来ませんでしたが、EVシフトにより状況は変化。動力源がモーターとなり、技術的な参入障壁が下がることで、民族系が相次いで先進的なBEVを投入。政府も補助金で支援することで大幅に販売拡大、既存海外メーカーが半導体不足で生産を落としたこともあり、一気にシェアを伸ばしました。長年の悲願であった中国国内での自動車産業育成が実を結んだ結果となり、中国国内、海外を含め、一気に中国「民族系」の存在感が高まっています。

② 一気に落ち込む実需と価格競争の口火~2022年1月~

ただ23年に入ってから状況は一転します。

一気に実需が落ち込み、23年1月の販売台数は大幅減。春節の時期の都合上(稼働日が少ない)、前年と単純比較はできないのですが、前年比▲35%、前月比▲35.5%の165万台。

なぜこれほど落ち込んでしまったのか。その要因は補助金の打ち切りです。NEVの普及を支えていた補助金+ガソリン車の購入税優遇策は22年12月で打ち切り。その結果、補助金打ち切り前に駆け込みでの実需が発生。補助金の打ち切りは実質的には「値上げ」となり、NEV車では原材料高騰による売価への反映→値上げもあって一気に実需はしぼみ、大幅な販売台数減少につながったのです。

一気に実需が落ち込めば、在庫が大幅に増え、生産の稼働率も下がり、コストが増える。自動車メーカーの業績が悪化することは明らか。そんな中、BEVのTOPメーカーであるテスラが2-4.8万元(約90万円)の大幅な値下げを発表します。受注は一気に回復。2022年末からは一部生産調整に入った報道もありましたが、値下げ以降、春節明けからは再びフル生産、納入台数も全盛期同等の数字まで回復。

TOPメーカーの値下げに他社も追随。値上げを発表していた民族系メーカー各社、海外メーカーも同様の値下げを発表。一番極端な例では米Ford、BEVのSUV「マスタング・マッハE」は、最低価格が20万9900元と、米国の価格の1/3以下にまで下がりました。

かつて見ない、未曽有の価格競争が幕を開けたのです。

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