【始まるのはこれからだ】トヨタ新技術徹底解説【水素編】

6/13に発表されたトヨタのクルマに関わる新技術。どの発表もこれからのクルマを大きく変える重要なものばかり。今回のニュースレターはその中でも「水素」関連技術に注目。その内容を徹底解説します。
カッパッパ 2023.07.08
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先日子どもにねだられて「てれびくん」という幼児向け雑誌を買ったら、1680円もして驚愕したカッパッパです。ハードカバーよりも高い…

6/13に発表されたトヨタ、「クルマの未来を変える新技術」。今回はその中でも「水素」に焦点を当てて、その技術を解説します。カーボンニュートラルにおいて重要な役割を果たすとされる「水素」。ただし長年研究がされてはいるものの、依然コストは非常に高く、普及には至っていません。BEVへのシフトが進む中で、水素にリソースを配分するのは無駄なのではないかという批判もあります。

ただ今回の発表で明らかになったのは水素の持つ大きな可能性とトヨタが本気で水素に取り組んでいる姿勢。自動車だけでなく、水素の生産、社会システムにどう織り込むのかまで含めた研究開発。「水素はこれから始まる」と実感できるその技術発表の中身を詳細に解説します。

一気に伸びる燃料電池

(出所:トヨタ自動車)

(出所:トヨタ自動車)

現状、まだまだ小さい水素市場規模。しかしながら、2030年頃には使用が拡大。中国(4000万t)欧州(2500万t)、アメリカ(2500万t)を中心に水素活用が広まり、モビリティ、自動車でも水素の使用は増える見込みです(ちなみに日本は300万t見込みと少数)

水素の利用拡大に伴って、燃料電池の市場規模も拡大。2030年には5兆円規模になり、トヨタにも10万台のオファーが。その中心はトラックを中心とした商用車。(航続距離が必要とされ、短時間での燃料補給が可能、エネルギー効率の高い燃料電池車は商用車に適しているとされています。)2022年燃料電池車であるMIRAIの販売台数が4,000台なので、あと7年で25倍になる計画です。

少し気になるのは果たして10万台はどのブランドから出すのか。商用車メインなのであれば、トヨタの子会社である「日野自動車」がメインになる…はずなのですが、品質問題の影響もあり、ダイムラートラック(三菱ふそう)と経営統合することが決まっています。おそらく経営統合後の会社から燃料電池トラックを出していくことになるでしょう。(いすゞ自動車は燃料電池ではホンダと提携することが発表済)。今回経営統合が決まったことで、販売網も拡大し、燃料電池トラックのオファー増にもつながっているのかもしれません。

ではトヨタはこの水素、燃料電池に関してどのような戦略を進めているか。その3つの方針が示されたのが↓図。

(出所:トヨタ自動車)

(出所:トヨタ自動車)

水素を使用する現地での生産、パートナーとの連携、そして技術革新による競争力強化。それぞれどんな構想を描いているか。個別に分けて解説します。

性能が大きく向上「次世代セル」

(出所:トヨタ自動車)

(出所:トヨタ自動車)

一番の肝、今回の水素関連でも最も注目度の高い「技術革新」。トヨタが発表したのは「次世代FC(燃料電池)システム」。現在MIRAIに採用されている現行品に比べ、大幅に性能を向上。次世代では①耐久性を大幅向上し、商用車で使用されるディーゼルに比べ、メンテナンス期間を2.5倍に、②セル枚数削減を実施し、スタック(積層)コストを1/2、➂航続距離を20%UP。電極の出力密度も向上させ、実現すれば東京⇔大阪間を1回のH2充填で走行が可能なスペックになります。実用化見込みは2026年。メインとなる商用車では大衆車とは使用環境が大きく異なり、航続距離や走行距離など厳しい目で選択がなされます。商用ユースに見合う性能が確保できれば、多少割高でもCSR、環境に優しいというメリットがあるため、採用が進んでいくことでしょう。

(出所:トヨタ自動車)

(出所:トヨタ自動車)

そしてセルの作り方にも工夫が。大型トラックと一般車では燃料電池に求められる出力は大きく異なりますが、出力のバリエーションはセルの枚数を変えることで対応。同一の設備で混流可能なセルを生産=セル共通化を実施することでコスト低減。汎用性の高い設備は需要の弾力性が高く、稼働率も上がり、設備投資を抑えることが出来ます。こうした共通化は燃料電池のコスト削減に大きく寄与します。

(出所:トヨタ自動車)

(出所:トヨタ自動車)

このような技術革新+量産効果(数が増えることによる購入品単価減や1個当たりの設備償却費の低下など)+現地生産(輸送費のコスト減など)で次世代ではunit当たりのコストを大幅に削減。2030年では▲37%、さらに20万台体制になった際には1/2、▲50%を見込んでいます。

(出所:トヨタ自動車)

(出所:トヨタ自動車)

また燃料電池以外の部品でも、共通化。水素を入れるタンクは高圧で高い品質が求められ、またその容量は性能を大きく左右します。このタンクを水素が使われる様々な分野(大型トラックやクレーンなど)で規格化。種類を減らすことで、開発費を削減し、量産効果による材料/部品費を削減してコストを▲25%。

水素は自動車以外の様々な分野に活用可能です。トヨタが水素を使用するための「セル」や「タンク」の共通化、規格化を推し進めていくことで、数量を増やし、コストを大きく削減する。「水素社会」を見据えた戦略になっています。

なお、現地生産で具体的な地域名は出されていなかったものの、「使う」量が多いのは「中国」「アメリカ」「欧州」の3大地域。今後トヨタはこれらの地域で水素、サプライチェーンを構築し、現地生産で燃料電池を生産していくこととなるのでしょう(日本は使うが限られるので生産は限定的かも。。。)

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