【時価総額はトヨタの4倍!】テスラ、圧倒的成長を支える“6つの理由”_前編_モビイマVol.43

自動車業界の最新ニュース解説を発信するニュースレター、モビイマ!第43号。時価総額で自動車メーカー断トツTOP、時価総額はトヨタの4倍のテスラ。なぜここまで成長し、株価が伸ばすことができたのか。業界の中目線でその”6つの理由”を解説します。今回は前編としてテスラが作る「クルマ」の”すごさ”を説明します。
カッパッパ 2021.12.04
誰でも

ご安全に!

2021年は自動車業界にとって苦境の1年。部品供給問題により、生産したくても生産できず、販売台数、売上を伸ばすことが出来ない苦しい時期が続きました。そんな中、前年比大幅増を成し遂げたのがテスラ。生産台数は減ることなく、増える一方。そして株価もうなぎ上り、昨年時価総額でトヨタを抜くと、あっという間にトヨタの4倍近くになりました。

直近の決算は実に好調で、21年7-9月期の営業利益率は14.6%と自動車メーカーとして類を見ないほど高くなっています。かつては赤字から抜け出せなくなっていた時期がありましたが、現段階では黒字がどこまで伸びるのかのフェーズに。

いやいや、本当にテスラはすごい

「モビイマ!」では今回から3回に分けてテスラを徹底分析します!

最初2回は「なぜテスラはここまで伸びたのか。」その理由を自動車業界の中の人視点で徹底分析。結果見えてきたのは『6つの理由』。前編となる今回は、テスラが作る「クルマ」の”すごさ”について解説します。テスラが持つ「自動車メーカー」として強みとは。

そして、次回は「企業としてのテスラの”すごさ”」3回目は「今後テスラに立ちはだかる壁」について解説。

この3週の記事を読めば自動車業界の台風の目であるテスラがばっちり理解できる。自動車業界の人だけでなく、投資先として「テスラ」を持っているor考えている人、必見です。ここでしか読めない情報を含んだ、どこよりも詳しいテスラ分析、早速スタートです。

1.モビコラム

モビコラムでは、カッパッパが自動車業界最新トレンドを独自の視点と切り口で語るコラムです。かなり力を入れた内容で仕事/投資に役立つこと間違いなし!

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直近の決算でみるテスラのすごさ

まずはテスラがどれほど成功しているのか直近の決算から見ていきましょう。

決算のまとめ
決算のまとめ

2021年7~9月の総売上高は137億5700万ドルで過去最高を更新。前年同期比では+57%。営業利益は20億400万ドルで、前年同期比は+148%の大幅増。前期4~6月の13億1200万ドルと比べても+52%増と著しい伸びを見せています。

他の自動車メーカーが半導体不足で苦しみ、生産、販売を伸ばせない中でテスラのこの成長は群を抜いています。

自動車部門の詳細
自動車部門の詳細

しかもすごいのはこの利益の大半を自動車、EVの販売で成し遂げている点です。自動車部門売上高は120億5700万ドル。利益は3億6730万ドルで営業利益率は14.6%と高水準。これは業績の極めて好調だったトヨタの12.6%よりも高く、自動車メーカーでは考えられない高い数値です。

自動車業界ではこれまでに見たこともない業績、決算内容。なぜテスラはここまで好業績を叩き出せるようになったのか。その理由を探っていきましょう。

テスラの強み①:ソフトウェア重視の車両設計

前編となる今回は、テスラが製造する「クルマ」の観点から3点の”強み”を解説します。

既存の自動車製造では考えられない設計や製造。テスラの作り出すクルマは「オンリーワン」の価値を持ち、多くの熱狂的なファンを生み、そして販売に繋がっています。

テスラのクルマで1番特徴的なのは「ハードウェアではなく、ソフトウェア志向の車両設計」です。従来の自動車はエンジンやボディといったハードありき。ソフトウェアはあくまでもハードをコントロールするための1部品であり、ハードの発達が自動車の性能を上げ、ハードを主体とした設計が行われてきました。

テスラは自動車の設計段階で「ソフトウェア」を重視。その思想が如実に表れているのが「統合ECU」です。「ボディー・コントローラー(BC)」と呼ぶ基板群で車両に散らばるECU(電子制御ユニット)を集中させた部品。↓の図を見ると大変よくわかるのですが、既存の自動車ではECUと各機能でセットで搭載し制御しているのに対し、テスラは統合されたECUで自動車全体を管理。

https://www.notion.so/ECU-xTECH-c539e66f1afd4a858be571f42655c6c9#35bde79d8bc5440d974bd85a2169a490
https://www.notion.so/ECU-xTECH-c539e66f1afd4a858be571f42655c6c9#35bde79d8bc5440d974bd85a2169a490

ソフトウェアファーストの車両設計の思想がなければ、ここまで大胆なECU配置はまずできない。既存のしがらみにとらわれない、テスラだからこそできる車両設計。この統合ECUにより車内のECU・ハーネスの数/リレー・ヒューズを大幅に削減。また自動車のソフトウェアをupdateするOTAにも対応が容易になります。

統合ECUは様々なメリットがある一方で開発/変更への負担が大きいため、人材、お金などの多量のリソースが必要です。テスラのすごさは従来のやり方、ハードウェア重視にとらわれず、会社全体として取り組み、やり遂げたことにあります。

テスラ モデル3の内装
テスラ モデル3の内装

ソフトウェア重視のクルマ作りは統合ECUだけでなく、車内の設備にも反映されています。テスラの車内はほとんど物理ボタンはなく、操作はタッチパネル。物理ボタンはその機能を更新することはできませんが、タッチパネルなら、システムの更新で新たな機能を追加、拡充が可能です。また、オプションの加速機能のアップグレードやシートヒーター機能は課金することで実装されます。既存の自動車メーカーにはないとことんソフトウェアを重視したクルマ作りは斬新なUXを消費者に提供し、熱狂的なファンがつく一要因にもなっています。

またモデルYに搭載されている部品「オクトバルブ」も非常にテスラらしい部品の1つ。EVでは、車内の熱管理が非常に重要で、航続距離や電池寿命に大きく影響します。自動車では通常、空調やリチウムイオン電池など、部品ごとに独立した冷却・加温の回路を備えますが、テスラのオクトバルブは車両システム全体として熱を管理。この部品により、これまで活用していなかったバッテリーやe-Axle(モーター、インバータ、トランスミッション)からの排熱を利用、極寒時はバッテリーのみを暖房することができるなど、多彩な熱管理が可能になりました。またOTAによる機能更新も対応可能で、この機能が更新していけば、よりクルマの性能が向上していきます。

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/nmc/18/00011/00116/
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/nmc/18/00011/00116/

またソフトウェアを重視するテスラの設計思想は今回の半導体供給問題でも大きな役割を果たしました。他社が半導体が確保できず、大きく生産を減らす中、テスラは生産を落とすことなく販売を伸ばしました。その要因は具体的に語られてはいないのですが、「統合ECUのため、搭載されている半導体の数が少ない」「不足になっている旧世代の半導体ではなく、比較的在庫のある性能の高い新世代半導体を搭載している」「新世代半導体の単価が高く、利益が出やすいため半導体メーカーが優先供給している」が挙げられており、テスラ独自の車両設計がプラスになったのは間違いなさそうです。

また供給危機の際に、「コントローラーを半導体に合わせる」という飛び道具まで実施したことがIR資料の中で上がっています。

Aという半導体を使用するコントローラーしかない場合、その半導体Aが入手困難になってしまうと、コントローラーもそれを組み込むクルマも生産できなくなる。現実に世界中の自動車工場は半導体不足で止まっている。しかし半導体Bならば入手できるかもしれない。その半導体Bを使うコントローラーで同じ機能や性能を得られるならば、クルマの生産は止まらない。

理屈は確かにそうなんですが、自動車業界では半導体は工程/設計変更にとても手間がかかる部品で一朝一夕でできることではありません。(実際品質は十分に検証されて保たれているかはグレーだと個人的に思います)ソフトウェア人材が極めて充実している/重大問題に対し、既存の考えにとらわれないいち早い経営判断ができる、テスラだからこそ成し遂げられた施策。

ソフトウェア重視の設計は、テスラのクルマ作りの根本であり、他社と全く違う機能を持ち、消費者にこれまでにないUXを提供する、一番の”武器”なのです。

テスラの強み②:革新的な製造技術の開発/採用

既存の枠にとらわれないのは設計思想だけではありません。テスラは自動車生産にも革新的な方法を取り入れています。

その代表が「メガキャスティング」。これまでクルマのボディは多くの場合、鋼材をプレス⇒押し出し成型⇒各部品を溶接し、製造されてきました。ただ、工程があればあるほど、作業/付随する人員も増えmあす。なるべくシンプルにする⇒ならば一括鋳造だ!と一気に鋳造(金属を溶かし成型する製造方法)成型する製造方法を確立。

超大型のダイキャストマシン「ギガプレス」を採用し、モデルYのフロント部アンダーボディを一体成型へ。鋳造は熱処理や金属が充填されない鋳巣の問題が発生しやすく、大型部品には向かないとされてきたのですが、テスラは従来の考えを覆し、量産に採用。現在新規ラインに次々取り入れられています。

ギガプレス めちゃくちゃでかくてメンテナンス大変そう
ギガプレス めちゃくちゃでかくてメンテナンス大変そう

一体成型になることで工場の工程もシンプルになり、作業ロボットや人員も削減。製造コストの削減になり、テスラの価格競争力を生む一要因になっています。

またテスラの製造工程を示すエピソードとしてこんな話が。

例えばテスラでモデル3の電気自動車を作ってた時、車の底にバッテリーパックがあって、それはカーボンファイバーでコーティングされていたんだ。製造工程でそのカーボンファイバーコーティングが問題で、まず自動化をかんばった。ロボットをチューニングして少しづつ自動化を向上させた。その後さらにスピードを上げられないか、といろいろと知恵を絞った。その時にやったのはバッテリーをコーティングする際の持ち上げ方やらを工夫して、最適化もがんばってたんだ。ある程度は成功したのかもしれない。
それで最後に聞いたんだ「ところでこのカーボンファイバーのマットはなんのためにあるんだ?」って。
そしたらバッテリー制御チームが「それはノイズと振動を吸収するためです」って言うんだ。
それでノイズ解析チームに行って同じ質問をしたんだ。そしたら「それは火災防止のためです」って言うんだ。
それで「おいおい、君らなに言ってんだよ」ってなって、 それぞれのチームに集まってもらってしっかり話し合ってテストもしたんだ。ノイズと振動をマイクで拾って録音して、マット有りとマット無しの違いを調べて、火災検査もそれぞれやって。それでなんの違いも無かったんだ。どんなテストをやってもマット有りと無しの違いがひとつも出てこなかったんだ。結果的に「カーボンファイバーのマットなんかいらねーよ!」ってなってね。
そこのカーボンファイバーの製造過程のコストはだいたい 200 万ドルだったね。コーティングのために自動化をがんばって、高速化のアイデアもいろいろ試してやってたのが全部無駄だった。全部だ!
素直に言ってテスラには世界有数の頭のいいエンジニア達が集まってるよ。その賢い人達の知恵を結集して高速化や自動化に邁進して、たったひとつの素朴な疑問「このマットはなんのためにあるの?」という小学生でもできそうな質問を見逃していたんだ。

書かれている内容は製造業としては当然の「ムダ」をなくすなのですが、経営者が現場を理解し、全体最適で判断、公の場で発信できることは大変すばらしい。こうした工程の改善を積み重ね、テスラは利益を生み出すクルマの量産に成功しています。

テスラの強み➂:量産体制の確立

テスラ工場内のロボット
テスラ工場内のロボット

個人的にテスラで一番すごいと思うのは実はこの「量産体制の確立」。自動車を「量産する」ことは実に大変でハードルの高く、技術、ノウハウ、そして投資が必要。自動車業界の参入障壁が高いのは「量産」が極めて難しいからです。

量産の難しさをケーキ作りに例えると

  • 個人が家で時間をかけて作るケーキ

  • 街中のケーキ屋さんが日々数十個を作り販売するケーキ

  • コンビニ向けに工場で大量生産されるケーキ

必要となるノウハウ、成功させるために必要な準備は全く異なります。個人が時間をかけて作るケーキは自動車でいえば試作品にあたるわけですが、試作品が上手くいったからといって量産が上手く行くかというと、実は全くわかりません。

「安定した品質で多量に、しかも利益が出るよう低コストで生産」自動車の場合、事前に多額な金額をかけて設備を導入。そして導入した設備が十分に満足できる性能である、また人員の教育も合わせて実施するなど独自のノウハウが必要で新規参入の企業には極めてハードルが高い。

フリーモンド工場
フリーモンド工場

現にテスラも立ち上げ当初は非常に製造に苦しみました。モデル3立ち上げ時は計画では週に5000台生産予定が、四半期で生産できたのがわずか260台。生産プロセスが上手くいかず、量産は全く上手くいかなかったのです。この際にはフリーモント工場に大型テントによる新規ラインを増設し生産能力を向上。その後改善を重ね、今ではグローバル全体4半期で20万台を超える生産ができるように。もはや新興ではなく、量産メーカー。ここまで実績が積みあがれば、自社の経験から量産ノウハウを獲得し、今後大きく生産を伸ばしていくことが出来るでしょう。

(ちなみに今この量産の壁にぶち当たっているのが「RIvian」。量産は開始したものの、月100台レベルで納入先も社内の人から。2022年1月納入予定が半年ほどずれることが発信されています。この量産の壁を果たして超えることが出来るのか、それはいつになるのかに注目です)

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今回はテスラの「クルマ」からその強みを分析しました。従来の自動車製造にとらわれないテスラの「クルマ」は大きな魅力となり、躍進の原動力となっています。

いやいや、本当にテスラはすごい(2回目)

次週では「企業」としてのテスラが”すごい”理由とこれからについて解説します。今回同様、どっぷり濃い内容になっていますので乞うご期待!(3回目の立ちはだかる壁もすごく充実してます)

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【カッパッパの独り言】

カッパッパ、「アンチテスラ」と言われ、Twitterでもカッパッパアンチ派は概ねテスラ派の方になっている…のですが、実際テスラは本当にすごいと思っています(3回目)。ただ、ベンチャー仕草、グレーゾーンを攻めるところがテスラにはあり、既存メーカーが大企業で従来の暗黙というか、危険だからやっていない領域を平気でやってしまうことがあり、「そこはおかしいやろ」と突っ込んでいる…つもりです。なるべく良い悪いのバランスはとろうとしているのですが、なかなか難しい。

そしてトヨタ賛同者とも思われがちなのですが、こちらはトヨタが落ち目になるとカッパッパも大ピンチということでトヨタ寄りになってしまうのかなと。こちらも悪い意見も上げるようにはしているんですが、うーんやっぱり難しい。

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今週のカッパッパのネタ帳はこちら。一番のビッグニュース、「日産の長期戦略発表」こちら電池戦略について悟空さんと再び対談中。乞うご期待!

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今回のニュースレター、感想をいただけると大変励みになります。もしよろしければTwitterで呟いていただけると大変うれしいです!次週の後編もお楽しみに。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました!!

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