【揺らぐ屋台骨】ダイハツ、衝突試験不正で問われる「トヨタグループの品質は大丈夫か?」

4/28に公表されたダイハツでの側面衝突試験不正問題。日野自動車、豊田自動織機に引き続き、認証試験において意図的な不正が行われ、トヨタグループの品質への信頼性が問われる事態となっています。どのような不正がなぜ起きたのか。そしてトヨタグループで高く評価されていた「品質」は果たして問題がないのか。詳細に解説します。
カッパッパ 2023.05.04
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@kappapa03
ジョジョ7部が読みてえと思って、文庫版買うかと思ったら13000円弱で躊躇しているカッパです。
2023/04/29 06:45
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GWでジョジョ7部、SBRを読み終えたカッパッパです。「納得」は全てに優先するぜッ!!

読むとテンションが上がるかつ深い学びがある…人生の指針の多くはジョジョから得ているのではないか。ちなみに一番好きなのは「第5部」、SBRで好きな戦いは「リンゴォ」編です。あと3部のイギーが好きで、このシャツが欲しいのですが2万は流石に手が出せません。着る機会も少ないし…

GW、長期連休に入る直前、4/28夕方に公表されたダイハツの側面衝突試験の不正問題。衝突試験、安全にかかわる自動車でも最も重視される品質が意図的に不正されたいたことは自動車業界のみならず、一般の方々からの反響も多く、一大ニュースとして報道されました。

日本の自動車メーカーが世界で躍進できたのは品質への高い評価があってこそ。中核となるトヨタグループでの意図的な不正。しかも日野自動車、豊田自動織機、ダイハツと相次ぐ発覚にトヨタグループ、日本自動車業界全体の品質が問われる事態になっています。

どのような不正でなぜ起きたのか。そして今後どのような対応が行われるのか。業界の中の人目線で詳細に解説します。

東南アジア向け4車種での側面衝突試験不正

まずはダイハツからの公式発表で今回の不正がどのような内容であったのか、概略を掴んでおきましょう。

車両の側面衝突試験において、認証する車両の前席ドア内張り部品の内部に不正な加工を行っており、法規に定められた側面衝突試験の手順・方法に違反があったことを確認いたしました。
ダイハツ「側面衝突試験の認証申請における当社の不正行為について」より画像引用

ダイハツ「側面衝突試験の認証申請における当社の不正行為について」より画像引用

自動車では販売する前に対象車種が環境や安全といった法規を満たしているのかの試験、認証が必要となります。海外で販売される場合はUN規則に適合しているかの認可が必要になり、騒音や排気、ブレーキなどが基準を満たしているかの試験が実施されます。今回はその中でも衝突安全、「側面衝突試験」にて不正が行われました。対象は東南アジアにて生産される4車種。東南アジアでのダイハツのシェアは高く、またトヨタOEM車も含まれる、対象台数も多く、今回の不正の影響は甚大です。

(ちなみに余談ですが、今回対象となった「トヨタ ヤリスエイティブ」は日本のヤリスとは全く仕様が異なっていて、ハッチバックではなく、コンパクトセダンです)

では具体的にどのような不正が行われたのか。

トヨタ自動車の会見より引用

トヨタ自動車の会見より引用

 前席の部品、ドアトリムに正規部品にはない「切り込み(スリット)」と呼ばれる加工を実施。スリットを入れることで、衝突が起きた際に該当部分が壊れやすくなり、割れた後に「シャープエッジ(尖った形状)」にならない=安全性が高まるよう不正が行われました。

(一般的に衝突試験は「壊れない」ことが重要だと思われがちですが、壊れたとしても人体へ危害がでないかも重要なポイントなのです)

不正への対応と再認証

出所:トヨタ自動車

出所:トヨタ自動車

不正発覚後、該当車種の出荷を一時停止。ダイハツ内で、正規のドアトリムを用いた車両で改めて実施した社内試験では基準が満たされていることが確認されています。今後、審査機関・認証当局の立ち合いのもとでの再試験を行い、側面衝突性能が法規に適合していることが確認されれば、出荷が再開される予定です。

公表された対応ではすでに当局での性能確認が実施されており、出荷停止期間がそれほど長く続くことはなさそうであり、直接の影響は少ないかもしれません。また出荷済み販売済みの該当車種の部品交換などの対応は必要ない見込みです。

なぜ不正は起きたのか/防ぐことができなかったのか

今回の不正での一番のポイントは「なぜ不正が実施されたのか」です。その後の正規部品での試験が合格であったことを踏まえると、「不正な加工をしなくても認証試験は問題なかった」可能性が極めて高くなっています。

これまでにトヨタグループで発覚した日野自動車、豊田自動織機は正規部品の場合、環境、排ガスの基準が満たせないために、意図的な不正が行われていました。しかしながら、今回は自動車の安全にかかわる衝突試験、しかも試験結果は合格であり、本来であれば不正を行う必要はありません。

「十分に法規に適合する実力があるのに不正が行われているのは根が深い。NGをOKに書き換える以上に深刻だと考えている。試験の結果や開発プロセスをみると、複数回の設計変更の上で認証取得のタイミングを迎えている。本来であれば、正式な設計変更として申請すべきだった」

発表後に行われた緊急会見にてトヨタ社長、佐藤氏が述べたように、実力があるにも関わらず、不正が行われたことは問題の根が深く、原因が何かを明確にし、その対策を確実に打っていく必要があります。

現在は推定要因として「試験不合格による手戻りをさけたかった」のではないかという理由が有力視されています。業界関係者の方なら大変よくわかると思いますが、試験が不合格になり、対策を伴って再試験を行うことは人、金、モノのコストが非常にかかり、開発全体のスケジュールにも大きく影響します。少しでも不合格のリスクを下げるために、不正を行った。気持ちはわかりますが、正規部品でない試験は認められるものではなく、安全にかかわる衝突試験で決して許されることではありません。仕事へのプレッシャーで現場判断で行ってしまった、どこまでの了解をもって実施されたのか、これから公表される第3者委員会の報告書待ちになりますが、発生原因を突き止め、再発防止及び他にも問題が起きていないかを確実に検証する必要があります。

また不正を発見する、防ぐ機能が有効に機能していなかった、流出という点でも検証が必要です。会見では「不正した部門は実験と認証が一体で監視が働きにくかった」ことの指摘がされています。不正を起こさないことはもちろんですが、万が一起きた際に検出し、未然に防ぐ措置重要です。相互監視、会社全体としてコンプライアンスが十分に機能する組織、仕組みになっていたのか、なぜ防ぐことが出来なかったのかも今後の対策を含め、注目していく必要があります。

対応から分かる「不正」の深刻さ

今回の不正に対し、ダイハツ、そしてトヨタがいかに深刻として捉えているのかが分かるのが「極めて迅速な対応」です。

4月に内部通報で発覚してから4月末公表までのスピード。1ヵ月満たない期間の中で、自社の再試験まで完了、今後の対応についても明確にしており、急ピッチで社内の検証がされていたことが分かります。

また公表に関しても夕方、ダイハツの正式リリース、会見があった後に親会社であるトヨタが緊急会見。豊田章男会長、佐藤社長のTOPが見解を表明すると共に、記者からの質問に1つずつ回答しました。(ダイハツの会見よりもトヨタの会見の方が詳細で分かりやすく、今後の対応についてもまとまっていました)

安全にかかわる法規違反、意図的な不正。そして日野自動車、豊田自動織機と相次いて、国の認証における不正が続いている現状。トヨタとして極めて重く受けてとめ、「緊急事態」だと捉え、対応がとられています。GW明けには今回の問題に対し、豊田章男会長が出荷国であるタイに赴き、会見を開くことになっています。

これまで日本の自動車業界が誇り、躍進の要因となっていた「高い品質」。中国メーカーやテスラがEVシフトでシェアを伸ばす中で、日本車が選ばれる要因であった「品質」にも疑義が生じるようであれば、世間で言われる「凋落」をより進展させる可能性もあります。今回の不正への対応は迅速かつ対策を明確に打ち出し、再発を絶対に防がなくてはいけません。

トヨタでの緊急会見では「トヨタグループ全体で再点検」を行うよう進めることが発表されていました。業界の中の人としては実務として検証でかなり工数がかかって大変になりそうだなと思う一方、業界全体の信頼回復のためにやらなくてはならない緊急案件だとも思います。

連休明け、なかなか大変になりそうですが、業界のみなさん「やっていきましょう」

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