【スズキ 23年第3四半期_決算解説】日本メーカー随一のポテンシャル!過去最高を更新し続ける要因は?

自動車業界の最新ニュース解説を発信するニュースレター、モビイマ!。「各自動車メーカーの23年第3四半期決算解説」今回はスズキ。インドでの販売をベースにした高い利益率、そしてその先を見据えた戦略とは。
カッパッパ 2024.02.13
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「小・少・軽・短・美」を社是として掲げ、「下駄(ゲタ)を極める」と語り、「浜松の中小企業」を自称する自動車メーカー、スズキ。 実は日本メーカーの中でもトヨタに次いで、営業利益率が高く、日本国内の軽自動車市場やインドで高いシェアを保ち、好業績を続けています。過去最高を更新し続けるスズキは23年第3四半期決算も絶好調。その強みはやはり「インド」にありました。

1.増収増益、過去最高更新の要因は「インド」

スズキ「第3四半期決算説明会」より

スズキ「第3四半期決算説明会」より

2023年度4-12月期売上高は前期比12.7%増の3兆8475億円営業利益も前期比29.8 %増の3466億円、営業利益率9.0%。国内メーカーではトヨタに次ぎ営業利益率は2番目、世界各国の既存自動車メーカーと比較しても高営業利益率となっています。同期として売上高、営業利益、経常利益、純利益は過去最高を更新。文句をつけることが難しい好業績となっています。

スズキ「第3四半期決算説明会」より

スズキ「第3四半期決算説明会」より

四半期ごとの推移をみると、23年3月期に入ってからは四半期1兆円以上の売上高をキープ、営業利益も基本的に右肩上がりで営業利益率は7%以上を維持。そして直近の23年10-12月期では若干7-9月きより落ち込んではいるものの過去最高レベル。スズキは年々成長を続けています。

スズキ「第3四半期決算説明会」より

スズキ「第3四半期決算説明会」より

営業利益について分析すると、プラス効果が大きいのは台数増減/売り上げ構成変化。販売台数が4輪、2輪共に前年比で増加していること、そしてインドを中心に高収益の車種(SUV)に販売がシフトしていることにより営業利益が伸びています。他社と違う点は原材料価格変動がプラス→原材料価格が下がっている点。日本では仕入先で原材料が値上がりしているものの、インドでは貴金属、鋼材の値下がり。インドの生産が多いスズキではトータルで見ると原材料は抑えられた結果となっています。一方で労務費(人件費)は賃上げを受けて▲196億円のマイナスに。為替影響で+459億円の追い風もあり、全体で+797億円。他社が外部要因含めた合計での営業利益分析で決算発表資料を公開するのに対し、「外部要因を除いて+247億円」と書ききれる点に現在のスズキの強さを感じます。

スズキ「第3四半期決算説明会」より

スズキ「第3四半期決算説明会」より

売上高を地域ごとに比較するとその他地域以外はプラス。営業利益に注目するとかせいでいるのは日本とアジア。アジアの販売の中心はインド。マルチスズキとしてインド国内で圧倒的シェア誇るスズキ。やはり業績を決めるはインドでの販売動向。

スズキ「第3四半期決算説明会」より

スズキ「第3四半期決算説明会」より

決算発表ではマルチスズキ単独での業績も説明。インド国内販売134.7.万台、輸出20.4万台。営業利益率は9.5%と前年と比較して+2.7ポイント。23年度に入り半導体供給問題が本格的に解消され、生産が回復する中でスズキの持つ「インドの強さ」が如実に表れた決算になっています。インドにおける「スズキ」=日本における「トヨタ」、自動車業界のTOPに君臨し、他社を寄せ付けない売上と高い営業利益率を保っています。

スズキ「第3四半期決算説明会」より

スズキ「第3四半期決算説明会」より

インドでの販売増、収益性向上に大きな効果をあげているのは現在売れ筋となっているSUVでのラインナップ強化。韓国メーカーが進出し、SUVを中心にシェアを伸ばしてきましたが、昨年よりスズキも対抗するSUVを本格的に投入することで乗用車全体のシェアを維持(SUVでのシェアは昨年と比べ倍増以上)。小型車からSUV=高価格帯への移行が進み、売上高増につながっています。インドは昨年日本を抜いて世界販売台数3位となり、自動車保有率、経済成長を踏まえると、世界で最も成長が見込まれる市場。インド自動車市場の拡大に伴い、スズキも増々販売台数を伸ばしていくことになるでしょう。

スズキ「第3四半期決算説明会」より

スズキ「第3四半期決算説明会」より

日本国内も生産が回復し、前期比+5.2%、46.9万台。部品供給不足が本格的に解消し、生産も制約がなくなり増産基調。仕様・設備を充実させたモデルチェンジ時に原材料価格高騰を踏まえた新車価格の値上げを実施/上級グレードの比率向上→その分売上も増加。「庶民の下駄」を自称するスズキでも高価格帯へのシフト、新車価格全体の底上げが進んでいます。

スズキ「第3四半期決算説明会」より

スズキ「第3四半期決算説明会」より

スズキの今回の決算で文句のつけようのない内容ですが、唯一問題があるとすれば、「パキスタンでの生産/販売、落ち込み」。前期8.9万台→今期2.9万台と大幅な減少。パキスタンでは貿易収支の改善のため、2022年5月より自動車(部品を含む)輸入禁止。結果、スズキは販売/生産ができなくなり、台数は大きく落ち込んでいます。現在輸入禁止は解除され生産は回復しつつあるものの、外貨の準備高は低い水準であり、以前の様に自動車部品を輸入し、ノックダウンで生産するのが難しい状況は続く見込みです。

なお、国内他社が中国でのNEVシフト加速による影響を大きく受ける中で、中国での販売がほとんどないスズキは業績への影響が極めて軽微。また他メーカーでの稼ぎ頭である北米での売上も自動車はほとんどありません。中国、北米(アメリカ)は世界の2大市場であるものの、政治的なリスクが大きく、そうした地域での販売が少ないスズキは他社に比べ、これからの将来性に安定性があると考えられます(主要市場であるインドでの韓国もしくは地場メーカーとの競争激化というリスクはあります)

スズキ「第3四半期決算説明会」より

スズキ「第3四半期決算説明会」より

そしてスズキの強みは自動車以外の事業でも利益が上がっている点。マリンは前期比では営業利益が下がったものの、営業利益率は23.6%。堅調な二輪と合わせ、多角化した事業はスズキの強みの1つです。

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