5分でわかる上海モーターショー_モビイマ!4/24

自動車業界の最新ニュース解説を発信するニュースレター、モビイマ!今回は上海モーターショーのニュースをダイジェストで紹介。この記事だけ読めば、上海モーターショーのポイントを抑えられる。1週間の始まりにぜひ一読を。
カッパッパ 2023.04.24
誰でも

ご安全に!

あと1週間頑張れば、GWに突入。今週を乗り切るぞ!と気概にあふれるカッパッパです。

月曜の朝は「モビイマ!」の5分でわかるクルマニュースから。

今回は上海モーターショーのニュースをカッパッパがコメント付きで解説。この記事だけ読めば、上海モーターショーのポイントを抑えられる。1週間の始まりにぜひ一読を。

やはり主役は「EV」

世界最大の自動車市場、中国。世界各社が鎬を削り、中国国内メーカー、いわゆる「民族系」が大幅にシェアを伸ばす中で行われた上海モーターショー。中心はやはり販売台数が大幅に伸びている電気自動車(EV)でした。

2022年の電気自動車販売台数は536万台。日本の全体の販売台数を超え、新車販売に占める割合は20%にまで達しています。ただそうした動向の中で日本メーカーは電気自動車のモデルが少なく、EVシフトが遅れています。

これからいかなる戦略をとるのか。どんな車種が販売されるモーターショー。今回は各社で新規EVの投入が発表されました。日系メーカーを中心としながら、上海モーターショーで抑えるべきポイントを解説します。

「どんな車種が発表されたの?」と全体観を知りたい方は↓が大変良くまとまっていて、写真での解説がわかりやすいのでとてもおすすめです。

新たな「bZ」

bZ BEVシリーズは、中国では先行して『bZ 4X』(4WDのSUVタイプ)が発売されており、今回、セダンタイプの『bZ 3』が販売を開始した。特に注目されるのは、今回、新たに2台のコンセプトカー『bZ Sport Crossover Concept 智享クロスオーバー』と『bZ FlexSpace Concept 悦動スペース』を世界初披露し、来年に市販化を開始する予定であるという。

4月から社長が交代し、新たな電動化戦略が発表されたトヨタ。今回の上海モーターショーではbZ BEVシリーズにて新たに『bZ Sport Crossover Concept 智享クロスオーバー』と『bZ FlexSpace Concept 悦動スペース』が発表されました。

ポイントは共にトヨタと中国企業が共同で開発した車両である点。『bZ Sport Crossover Concept 智享クロスオーバー』はBYD、『bZ FlexSpace Concept 悦動スペース』はGAC(広州汽車集団)との共同開発となっています。既にBYDと共同開発した「bZ3」は販売が開始されており、トヨタの中国でのBEVは現地企業と連携して進められていくと考えてよいでしょう。(おそらく今回発表された車種は、中国専用モデル)

それにしても『bZ Sport Crossover Concept 智享クロスオーバー』リアがものすごく特徴的。(このまま出るのだろうか)現在販売されているbZシリーズと合わせて、どこまで販売台数を伸ばせるのかが中国でのシェア維持で重要となりそうです。

また今回合わせて発表されたのが、レクサスLM。LMはフラッグシップMPV。トヨタの上級ミニバンのアルファードの上位、レクサス版。内装や外装がより高級仕様となり、これまで中国/アジアで販売されてきました。今回は2代目へフルモデルチェンジ。写真を見ていただけるとわかるのですが、「ショーファードリブン」、前席と後席の間にはパーティション、加えて48インチの大型ワイドディスプレイと一般人には縁遠そうな1台(一生に一度乗ってみたい)

今回のモデルチェンジに伴い、日本、欧州でも販売へ。超高級車ですが、レクサスブランドのフラッグシップモデルとして中国含め全世界で需要は高い。お値段は発表されていないのですが、前モデルが中国で1800万~2300万。高い関税を考えても日本でも1000万円台後半からくらいになるのではないでしょうか。

車と会話できます

日産自動車株式会社は、上海モーターショー2023において、中国初公開となるEVコンセプトカー「Max-Out」(マックスアウト)に加えて、中国のお客さまの多様なニーズにお応えする新たなEVコンセプトカー「Arizon」(アリゾン)を世界初公開した。

日産もEVのコンセプトモデル「Max-Out」, 「Arizon」の2車種を発表。「Arizon」では「エポロ(EPORO)」と名付けられたバーチャルパーソナルアシスタントを搭載。こ「エポロ」は、時間や天気、その他のデータを活用しながら、乗員と対話するAIに。こちらはすでに中国BEVメーカーで採用されているのですが、日産もこうしたソフトウェアでの進化を強調してEVを推しだして販売拡大を進める戦略。ルノー/三菱とも開発を進めているCMF-EVプラットフォームが採用予定(あと自動調光できるサンルーフを打ち出すあたりが中国仕様っぽい)

また合わせて、中国仕様のSUV「パスファインダー コンセプト」も発表。直近では新型エクストレイルの販売不振もあり、ガソリン車のSUVでも挽回をしてきたいところです(日産は中国販売台数の落ち込みが非常に大きい)

5年前倒し

 本田技研工業(ホンダ)は中国・上海で4月18日から開催中の「上海モーターショー」で、バッテリー式EV(BEV)の新車種「e:NP2 Prototype」(イーエヌピーツー プロトタイプ)、「e:NS2 Prototype」(イーエヌエスツー プロトタイプ)、「e:N SUV 序」を世界初公開した。いずれも2024年内の発売を予定している。

ホンダもBEV3車種を発表。既に東風Hondaにて販売開始している「e:NS1/e:NP1」に加え、24年までに「e:N」シリーズが3車種追加。「中国で2027年までに10車種のe:Nシリーズを投入」が発表されており、24年までに半数の5車種が販売される見込みになりました。

ちなみに中国はセダン人気が依然高いのですが、「e:NP2 Prototype」、「e:NS2 Prototype」も純セダンというよりはクロスオーバータイプ。各社SUVタイプのEVコンセプトを発表していて今後はSUVが主流になっていくのかもしれません。(「e:N SUV 序」は北米で販売が予定されている「プロローグ」とコンセプトが同じなの良いですよね)

さてホンダは今従来グローバルで掲げていた「2040年までにEV・FCEVの販売比率100%」の目標を前倒し、中国で「2035年までにEVの販売比率100%」を発表。想定以上のスピードで進む中国のEVシフト。ホンダは中国でのEV専用工場の発表や中国⇒欧州への輸出計画も発表しており、日本3社の中では最も中国の電動化移行の計画が具体的になっています。ただ現状はBEVの販売が遅れ、台数が大きく落ち込み。今後の投入車種でいかにシェアを回復できるかが今後のホンダの注目ポイントです。

日系だけじゃない

今回は日系メーカーだけでなく、他メーカーでもBEVの投入が発表されました。中国市場で外資TOPのVWは初となるセダンタイプのEV「ID.7 」を発表航続距離は1回の充電で最大約700キロメートルで、他社の同種のEVセダンよりも長く、2023年秋に中国と欧州で販売開始、24年には米国にも展開される予定。BMWやメルセデスでは中国での開発人数が大きく増えていることが発表され、各社が中国市場、特にEVに力を入れていることが鮮明にわかる結果となりました。

また新進凄まじい中国メーカーも新車種+新戦略を発表。注目のBYDでは小型EV「海鴎」を披露。 4人乗りの小型ハッチバック型のEV。最低価格は7万8800元(153万)からと廉価で求めやすい値段設定。街乗りには十分な性能を有しており、ガソリン車と比べても安価。格安EVでシェア/販売台数を伸ばしていく戦略の一方で、利益率の高いプレミアムカテゴリーへも新車種を投入。高級車ブランド「仰望(ヤンワン)」の新車種として、EVスーパーカーの「U9」を発表2秒で時速100kmに達するという加速性能が売りで価格は100万元(約1950万円)を超える見込み。また先行して発表されたSUV「U8」では4つのモーターを個別に制御し、その場で360度回転することができるほか、水に浮いてそのまま進むこともできる機能も(使われるのだろうか…)。EVで大衆車から超高級車まで幅広いラインナップを揃えることが出来るのがBYDの強みであり、今後増々台数を伸ばしていきそうです(中国以外含む)。

また「ZEEKR」(ボルボを参加にもつ吉利汽車(Geely)傘下の高級車ブランド)はヨーロッパ進出を発表。中国市場に次ぐ成長市場と見込んで、ヨーロッパの攻略も進められています。

もはや後進国じゃない

今回の上海モーターショーでは中国EVメーカーの技術、開発力の高さが鮮明になりました。グローバル各社の人材を引き抜く、積極的な研究開発/設備投資を行うなど「メイドインチャイナ」は低品質、低価格ではなく、すでに海外で戦えるだけの十分な品質を持っています。企業が乱立し、有象無象と言えるかもしれませんが、勝ち抜くメーカーは既存メーカーに負けるとも劣らない、EVやソフトウェアではむしろ先行している状況となるでしょう。自国の自動車産業育成は中国の長年の目標であり、実を結びつつあります。もはや中国国内だけではなく、欧州やASEANへの輸出も急拡大しており、日本メーカーにとっても大きな脅威に。全体での車両品質や電池の安全性は確かに低いかもしれませんが、量産での実績を積み上げていけば、その品質も向上し、太刀打ちできなくなる可能性もあります。EVに本腰を入れ始めた日本メーカーは果たして先行する中国企業からシェアを奪っていけるのか。この数年で明らかになるでろう、EVシフトでのシェア争いに注目です。

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今回も最後までお読みいただきありがとうございました!!

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