【テスラの強み、ここに有り!】ギガプレスがクルマの製造を変える

生産台数を大幅に伸ばし、革新的なEVを販売、株価は自動車業界NO1のテスラ。従来の自動車メーカーとは異なる革新的な取り組みは自動車そのものや販売方法だけでなく、その生産工程にも及んでいます。その代表例が「ギガプレス」。一体何がすごいのか、その詳細をどこより詳しく解説します。
カッパッパ 2022.09.18
サポートメンバー

ご安全に!

秋はやっぱり月見だね!ということで、月見バーガー販売でマクドナルドに足を運んでしまうかッパッパです。

でもコメダの月見の方が3倍くらいすごい。こちらは食べに行く予定がないのですが、購読者の方で食べられた方いたらぜひとも感想をください。ボリューム感、半端ばい。

22年も絶好調。販売台数は年々右肩上がり、飛ぶ鳥を落とす勢いのテスラ。利益率も既存メーカーをはるかに上回る10%後半、株価もダントツ、自動車業界NO1の地位を誇っています。テスラがここまで伸びたのは既存メーカーにはない革新的な取り組みを行い、大きな成果を上げてきたから。加速性能に優れた運転性能、大型ディスプレイに統一されたシンプルかつ高性能なUX、運転手への負担が少ない運転支援、OTAにより年々更新車両性能、販売店を通さないメーカー直販…挙げればきりがありません。

テスラが革新的なのはクルマそのものやビジネスモデルだけではありません。クルマの生産方法も実に革新的、最新技術が取り入れられ、その代表例が「ギガプレス」。テスラの決算発表の中でも強調される、「ストロングポイント」の1つとなっています。

ではこの「ギガプレス」、いったいどんなもので、何がすごいのか。今回の記事ではギガプレスの設備がどのような内容なのかからはじまり、その長所や短所までどこよりも詳しく解説します。これさえ読めば、ギガプレスのことはばっちり、テスラの「強み」をより理解できる内容です。

ギガプレスって何?

https://www.appbank.net/2021/06/18/technology/2084019.php
https://www.appbank.net/2021/06/18/technology/2084019.php

ギガプレスとは一言でいうと「バカでかい鋳造設備」。「プレス」とは名前がついていますが、通常の「プレス加工」=ワーク(加工対象物)に対してプレスによる圧力をかけることで加工を行う機械ではありません。溶けた合金(溶湯)を金型の中に圧力を加えて流し込む加工方法、鋳造(ダイカスト)を行う設備です。(メガキャスティングとも言われています)

ギガプレスの名の通り、7.5M×20Mと非常に巨大な設備。実際にどれだけ大きいかは、こちらの動画をみるとよくわかります。

ギガプレスはイタリアのIDRA社と中国のLK Group製(全てIDRA製だと思っていたのですが、調べると中国はLK Groupかもしれない)となっています。世界でギガプレスを生産しているのは現状2社のみです。

ダイカストでは用途に応じて使われる合金が異なります。鋳造では鉄や銅、チタンやマグネシウムなど様々な合金が用いられ、テスラのギガプレスではアルミ合金が使われています。後述しますが、この合金の成分がダイカスト生産の極めて重要なノウハウとなります。

テスラではこのギガプレスを用いてモデルYのリア部分を生産、現在はフロント部分でも採用され、適用範囲が広がっています。(下記写真青字部分)

ギガプレスの製造工程

https://www.sunrise-metal.com/tesla-giga-press-die-casting-machine/
https://www.sunrise-metal.com/tesla-giga-press-die-casting-machine/

ギガプレスでの生産の流れを説明します。なぜか異様に詳しいサイト(英文)がありましたのでこちらをベースに解説。(中国メーカーのオウンドメディアっぽいのですが、なぜそんなにギガプレスに詳しいのか謎)

ギガプレスでは金型がセットされており、その金型にアルミ合金を高速・高圧で注入することで製品=車体のフロントとリア部品を生産します。

まずはアルミを溶かすところから。アルミの合金を加熱炉に投入。ギガプレスには2つの加熱炉があり、1つ目の加熱炉では天然ガスにより850℃まで加熱し、アルミを溶かし、不純物を取り除きまsう。2つ目の加熱炉では電気による加熱で温度を750℃~850℃に調整します。

金型の準備として、分離が容易にできるよう、事前に潤滑剤(油)の塗布が実施されます。

そして溶けたアルミ合金をギガプレスへ。この際の圧力がギガプレスを表す単位となっており、5500tや6200tの設備が現在導入。ギガテキサスでは9000tの設備が導入されている模様です。部品が固まるまで金型の中で放置。400℃ほどのになった段階で部品を取り出します。

その後急冷タンクで部品を冷却。この急冷は部品の強度などの特性への影響が大きく、どれくらいの速度で行うか重要な工程であり、安定した品質を保つためにはノウハウが必要になります。185℃程度まで冷却されたあと、洗浄。

仕上げとして、部品に付着した余分な金属を取り除く、寸法確保のため、プレス工程を実施。 X-Ray machines(放射線測定器)で検査し内部に欠陥がないか確認(ここ重要)。問題がなければ、レーザーにより部品のトリミング、CNCマシンでの金具の穴あけ加工を実施し、精度をCMM(三次元測定機)で確認し、部品が完成します。

ちなみに生産途中で出た端材や品質NGとなった車体はもう一度溶かすことで再び材料として使うことが可能です。

テスラ ギガプレスと従来の車体との違い

    (↑一般的な車両の製造工程 車体は0:34から)

車体のフロントとリアを一体成型するギガプレス。従来のクルマとはどのように違うのでしょうか。

まず違うのは材料です。一般的なクルマは鉄、鋼板(冷延圧延鋼板)が使われます。テスラギガプレスではアルミ合金を使用。使われている金属が異なるのです。

次に製造工程。従来の車体製造工程は圧延鋼板を切断⇒パーツごとにプレス加工、成形⇒各部品を溶接の順で行われるのが一般的。一方テスラはギガプレスの工程のみ一体成型で車体を製造します。(フロント、リア部分以外は通常と同じくプレス⇒溶接)

最後に部品数。従来の車体ではそれぞれのパーツごとに分けられてプレスするため部品数が多くなります。ギガプレス採用前のモデル3ではフロント、リアのパーツだけで171個。ギガプレスは一体成型となるため、部品は2個のみ。大幅な部品数削減が可能になります。

テスラ 22年1Q資料より
テスラ 22年1Q資料より

この記事はサポートメンバー限定です

続きは、3340文字あります。

下記からメールアドレスを入力し、サポートメンバー登録することで読むことができます

登録する

すでに登録された方はこちらからログイン

読者の方にはこんな内容を直接お届けしてます。

・トヨタやテスラなど自動車メーカー最新情報
・CASEなどの業界トレンドを詳細に解説
・各自動車メーカーの戦略や決算分析

近日配信予定

  • 毎週月曜朝に「5分でわかるクルマニュース」
  • 各自動車メーカー10-12月決算分析
  • どこより詳しい自動車メーカー企業研究
5分でわかるクルマニュース_モビイマ!3/27
読者限定
どこより詳しい企業研究2023年版_部品メーカー個別企業編
サポートメンバー
どこより詳しい企業研究2023年版_部品メーカー全体編
サポートメンバー
5分でわかるクルマニュース_モビイマ!3/20
読者限定
5分でわかるクルマニュース_モビイマ!3/13
読者限定
どこより詳しい企業研究2023年版_ダイハツ編
サポートメンバー
【イベント開催:3/11 21:30~】ストレングスコーチングのすすめ
誰でも
5分でわかるクルマニュース_モビイマ!3/6
誰でも