【遅れているなんて言わせない】トヨタ新技術徹底解説【BEV性能編】

6/13に発表されたトヨタのクルマに関わる新技術。どの発表もこれからのクルマを大きく変える重要なものばかり。今回のニュースレターはその中でも「BEV性能」に注目。その内容を徹底解説します。
カッパッパ 2023.06.28
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久しぶりにサッカー日本代表戦を見たカッパッパです。子どもも一緒に見てくれてすごく楽しかったのでいつか実際に見に行きたい。ビール飲みながらサッカー見たい。

6/13に発表されたトヨタ、「クルマの未来を変える新技術」。今回はBEV性能編。

これまでトヨタのBEVの販売台数は全体に占める割合が非常に小さい+bZ4X販売に際し、ディスクホールとハブボルトのリコール/生産停止があり、「トヨタはBEVが遅れている→EVシフトに乗り遅れ、凋落していくのでは」という批判があちこちでされてきました。

今回の発表ではBEVの性能に関する技術開発状況を公開。BEVの肝となる電池、そして搭載される部品の開発は他社に比較しても劣らない、先進的なものばかり。特に電池ではゲームチェンジャーになるとされる全固体電池にも言及がありました。

トヨタがこれから作り出していくBEVは果たしてどんなクルマになるのか。技術の「肝」を詳細に解説します。

遂に発表!ゲームチェンジャー「全固体電池」

(出所:トヨタ自動車)

(出所:トヨタ自動車)

BEVの動力源、心臓とも比喩される「電池」。全固体電池は従来の「液体」型電池よりも性能が格段に向上し、ゲームチェンジャーになると言われてきました。では、そもそも全固体電池とは一体どのような電池なのか。

これまでBEVやHEVに搭載されてきたリチウムイオン電池やニッケル水素電池は、電極から「液体」の電解質に電気を取り込み充電を行っています。一方「全固体電池」では、電解質を「固体」に。これによって、電池のエネルギー密度を高くなり、航続距離が増加。また充電時間も短縮、小型化も可能など次世代電池の本命とされてきました。

ただ、全固体電池では耐久性の問題が解決されておらず、現在量産には至っていません。今回のトヨタの発表では「課題であった電池の耐久性を克服する技術的ブレイクスルーを発見」、2027-2028年の実用化にチャレンジすることが公表されました。

全固体電池が搭載されたBEVでは10分以下の充電で約1200キロメートルを走行、航続距離は現在のEVの2.4倍と性能は格段に向上。現在販売されているHEVの航続距離と遜色のない、かつ充電(燃料補給)に関してもガソリン車との差が少ない、非常に魅力的な性能を持ったBEVになる見込みです。

ただしコストについては「おおむね5倍から30倍」というコメントがあり、値段はかなり上がる模様。量産当初で実際に搭載されるのはハイエンドの高級車(レクサス?)に限定されそうです。そもそも1200Kmを10分で充電するような充電設備はおいそれとは設置するわけにはいきません。販売台数の少ないスーパーカーになるでしょう。

ただこうした最新技術の発表は企業によって非常に大事。最初は高級車から、時が経つにつれ、開発も進み大衆車にも実装されるのが自動車技術のパターン。また、全固体電池は世間の関心も高い技術。新聞も今回の発表で取り上げたのは「全固体電池」ばかり。量産化への進捗状況を発表することで、トヨタのBEVへの取り組みイメージは大きく向上し、株価も上昇しました。そうした意味でも「全固体電池」の技術発表は大きな効果を上げました。

本命はこちら!電池でも全方位

(出所:トヨタ自動車)

(出所:トヨタ自動車)

トヨタの直近のBEV戦略にとって、全固体電池よりも重要だと思われるのが、次世代電池の開発。BEVの「航続距離」「充電時間」を左右し、コストにも大きく影響する電池。今回、トヨタは3種類の電池を発表しました。

(出所:トヨタ自動車)

(出所:トヨタ自動車)

トヨタの発表では電池は「形状」「構造」「正極」の3つで分類され、それぞれの技術開発状況を公開。

①「パフォーマンス版」は現在のbZ4X、搭載電池の正当な進化版。「形状:角型」「構造:モノポーラ」「正極:NCM系(ニッケル、コバルト、マンガン=三元系)」の組み合わせ。電池のエネルギー密度を高める+端子部分の構造見直しを行い、性能を大幅に向上。bZ4X比で航続距離は2倍、コストは▲20%、SOC10~80%(電池残量が10%から充電し、80%になるまでの時間)の急速充電時間も10分短縮し、20分に。

②「普及版」では「形状:新構造」「構造:バイポーラ」「正極:LFP系」の組み合わせ。この「バイポーラ構造」はトヨタが先行する技術。現在はアクアとクラウンのHEV用電池に採用されいます。

(出所:トヨタ自動車)

(出所:トヨタ自動車)

バイポーラではセパレーターを挟んで積み重ねることでセルを作ります。そのため、セルごとのケースが不要。部品点数が減ることにより、コスト低減+大きさをコンパクトにすることが可能に。また電気抵抗を小さくすることができる=高出力化も対応可能。このバイポーラX正極材料に安価なリン酸鉄リチウム(LFP)を採用することでコストを▲40%と大幅に削減。航続距離の伸びはパフォーマンス版に劣るものの、大衆車へ搭載し一番数が多くなると予想されるのがこの普及版。まだ「2026年-27年 実用化にチャレンジ」段階とされていますが、量産ができればBEV価格が大きく下がり、普及に大きな役割を果たしていくことでしょう。

そしてさらなる進化として➂「ハイパフォーマンス版」も開発。「形状:新構造」「構造:バイポーラ」「正極:Ni系」の組み合わせ。このバイポーラ構造Xハイニッケル正極を組み合わせにより、ハイパフォーマンス版の電池より進化。パフォーマンス版比で航続距離10%向上、コスト▲10%、急速充電は20分以下と圧倒的性能になる見込み。ここまでくると現在出てきているBEVとは全く異なるスペックで使い勝手も大きく変わりそう。実用化は2027-2028年とかなり先で「チャレンジ」段階ですが、こちらも販売が開始されれば、大変魅力的な性能を持ったBEVになるでしょう。

電池も一つの技術だけでなく、多様な開発を進める「全方位」。トヨタがBEVの開発に本気で取り組み、電池に十分なリソースをつぎ込んでいることが分かる技術開発発表でした。加えて興味深いのが他社との連携。①パフォーマンス版はパナソニックとの協業であるPPES、②➂バイポーラ構造の電池/全固体電池ではGr会社である豊田自動織機と開発。電池戦略において、主要な技術によってパートナーを選び、開発を進めていることが明らかに(バイポーラは織機担当の模様)。他にもBYDやCATLとも連携が発表されており、それぞれの技術、地域に応じた電池調達を進め、トヨタはBEVを作り上げていく見込みです。

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