【徹底解説:自動車メーカー決算 三菱自】業績絶好調!その要因はやはり…

自動車業界の最新ニュース解説を発信するニュースレター、モビイマ!。今週からは「各自動車メーカーの22年4-12月期決算」を解説します。TOPバッターは三菱自動車。フラグシップモデル「アウトランダー」と軽EVが絶好調な三菱自動車の業績はいかに。
カッパッパ 2023.02.06
誰でも

ご安全に!

のどを痛めたのでのど飴を買おうとしたらほしいものが大体売り切れ、カッパッパです。VICSのレモン味欲しいです。

今週から完成車メーカー決算発表週間。激しく動く為替と重くのしかかる原材料高。各社の業績がいかなる状況にあるのか。そして2022年通期見通しに変更はあるのか。どこよりも詳しく解説します。

まずTOPバッターは三菱自動車。前年の落ち込みが激しかったため、前年比プラスは間違いないのですが、果たしてその幅がどの程度なのか。アウトランダー、軽EVの受注が好調だが、その効果はいかに。

1.前年同期比大幅増もその中身は…

 三菱自動車工業は2月2日、2022年度 第3四半期決算を発表。第3四半期累計(2022年4月1日~12月31日)の売上高は前年同期(1兆4161億3100万円)から27.5%増となる1兆8053億2000万円、営業利益は前年同期(559億4400万円)から174.7%増の1536億9900万円、営業利益率は8.5%、当期純利益は前年同期(447億3700万円)から192.3%増の1307億5400万円。また、グローバル販売台数は前年同期(68万7000台)から5万7000台減の63万台となった。


三菱自動車「2022年度 第3四半期決算報告 プレゼンテーション資料」より引用

三菱自動車「2022年度 第3四半期決算報告 プレゼンテーション資料」より引用

2022年4-12月は大幅な増収増益。売り上げは前年同期比27%増の1兆8053億円、営業利益は+175%の1537億円と極めて好調な内容。販売台数が68.7万台⇒63.0万台と5.7万台減る中、売り上げ、営業利益が増加しているのは1台当たりの単価、利益が大きく上がっていることを意味しています。

一見、好決算に見えるのですが、具体的にその中身を見ていくと、三菱自動車の実力とは言えない要因も大きく影響しています。

営業利益がどのように改善されたのかを見ると一番大きいのは「為替」。+802億円と営業利益増加分の8割を占めています。。増益の要因は多くの部分は外部要因。体質や販売台数の伸びといった「会社の実力」は200億弱となっています。台数/売価/販売費の改善が合計で706億円あるものの、資材費/輸送費の高騰で相殺される形に。自動車業界全体を苦しめる原材料高は三菱自動車も同様で、資材/輸送費だけで545億円のコスト増。販売が63万台なので、1台当たり約86,000円コストが膨らんでいます。やはり、資材費/輸送費高騰、この後に発表されていく他自動車メーカーの決算でも大きな重荷となりそうです。

販売台数の地域別推移をみると、落ち込んでいるのは欧州と中国。欧州はロシアウクライナ侵攻の影響により全体の需要が下がっている、また三菱自動車はルノー/日産とのアライアンスの中で欧州メインではないため、販売を減らしていることも考えられます。(決算資料でも各地域ごとの分析で対象外/通期見通しでも大きく減)中国はロックダウンの影響や地場メーカー(特にEV)の伸びによる減少が考えられるのですが、グローバルで半導体が不足する中で他地域を優先しているともとらえることが出来ます。その証拠に担当の東南アジアでは台数を伸ばしており、戦略に沿った販売を展開していると言えそうです。

2.2022年度見通しは据え置き!(果たして配当は?)

2022年度の通期見通しは据え置き。営業利益は1700億円、利益率は6.9%。5%を超えれば御の字の自動車メーカーの業績。20年度まで赤字を出していたことを考えると、経営状況は大きく改善しています。20年発表の中長期計画では2025年に営業利益率6.0%を目標としていましたが、大幅な円安もあり、かなり前倒しで達成する見込みです。

ポイントは販売台数が前年比▲7.1万台の86.6万台としながら利益率が向上している点。為替の要因が大きくはあるものの、原材料高の中で「会社の実力」として200億弱の収益性向上を成し遂げており、進めてきた構造改革が実を結びつつあります。

ここまで業績が回復するとなると、気になるのは配当が復活するかどうか。営業利益だけで言えば過去最高レベルになるので流石に配当だすやろ…と思うのですが、果たしてどうなるのか。個人的に一番気になるのはこの配当だったりします。

3.軽EVと新型デリカミニめっちゃ売れてます。

  三菱自動車の決算発表で見とれるのはASEANが極めて重要であること。

数ある市場の中でもASEANは台数が増加。三菱自動車はASEANで高いブランド力があり、売れ筋もピックアップトラック「トライトン」やSUV「エクスパンダ―」など収益性の高い車種ばかり。ASEANの売れ行きが三菱自動車の業績を決めるといっても過言ではありません。

(ちなみにこちら「トライトン」は国内も再導入がされるとのことで、台数は出ないと思うのですが、すごく楽しみです。)

またサクラと共にカーオブザイヤーを受賞した軽EV「eKクロスEV」も受注好調。水島工場で三菱自動車が生産を担当するEVはフラグシップモデル、「アウトランダー」と共に三菱自動車を支える重要車種になっています。

ただ今年に入り値上げを発表。これに関しては決算会見で、「BEVの価格戦略をどのように進めていくかという質問」に対し、

「そのクルマごとの価値をしっかりと価格に反映して、結果的に当社としてもしっかりと利益が上がるような形で販売していくということが当社の基本的な考えになります。現時点ではこの考えを変えるつもりはございません」と回答。BEVでも販売台数や市場シェアを拡大するために、車両1台あたりの利益を圧迫するような戦略は採らないことを改めて強調した。
https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1475580.html

値下げによる価格競争をするのではなく、利益をしっかり保ち価格設定を実施していく旨が回答されました。この点は今回の決算でも重要な部分だと思います(テスラの値下げに追随するかは本当に各社の命運を分けると思います)

また1月に発表された8月発売開始予定の新型デリカミニも受注好調。三菱自動車らしいアウトドア仕様の軽自動車。発売1ヵ月経たずに4000台を受注。軽は価格が低いために利益が出づらいのですが、180万からと軽自動車では高価格帯であり、販売が伸びればより収益を伸ばすことが出来るでしょう。

***

TOPバッター、三菱自動車は好調な決算となりました。ただ中身を見れば為替差が追い風になっているものの、原材料高の影響は非常に大きく、他社も同様に好調な決算になるかどうかは未知数…

以降も各メーカー決算、順次解説していきます。乞うご期待!

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