bZ4Xリコールから考える品質問題対応

6月にリコールが発表、生産が中止していたトヨタ「bz4X」。10/6、リコールへの対策と生産再開が発表されました。問題の原因は、そしてなぜこれほど時間がかかってしまったのか。どこより詳しく解説します。
カッパッパ 2022.10.12
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ご安全に!

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トヨタ、待望のBEV「bZ4X」。ようやくトヨタが本格的にBEVに参入…のはずだったのですが、販売開始とほぼ同時にリコール生産停止。問題はなかなか解決されず、生産再開に3か月以上の時間を要しました。工場で生産が止まること自体が重大問題ですが、その期間がこれほどまでになるのは本当に異例。

なぜリコールは起きてしまったのか。そして、なぜこれほどまで時間がかかってしまったのか。BEVだからこの問題は起きてしまったのか。どこよりも詳しく説明します。また、今回のトヨタの対応、自動車メーカーがいかにして品質異常について取り組むかがわかる大変良い事例になっています。自動車業界では避けては通れない品質問題。発生した際に、どのように対処していくか、業界の方はもちろん、業界外の方にもばっちりわかるようイチから徹底解説します。

異常「ハブボルト抜けによる異音発生、最悪脱輪」

10/6、トヨタより「bZ4X」の不具合対策の内容、および生産再開が発表されました。6月から3か月以上。実に長い期間生産停止。「BEVは作らないだけ。トヨタが本気を出せば、BEV作るのは簡単だ」という意見を覆す、重大な品質問題。

起きた異常内容は

「ディスクホイール取付部において、ホイールの加工およびハブボルトの仕様が不適切なため、ハブボルトの締結力が車両の走行性能に対して不足し、連続した急加速や急制動の繰返し等で、当該ボルトが緩むことがある。そのため、そのままの状態で走行を続けると、異音が発生し、最悪の場合、タイヤが脱落するおそれがある」

簡単にまとめると、「急制動や急加速を繰り返すと、ハブボルトが抜けてタイヤが取れてしまう」異常。自動車が動かなくなるだけでなく、走行中であれば、クルマに乗っている人の命に危険が及び、またタイヤが脱輪すれば周囲の歩行者を巻き込んでしまうことも(脱輪の異常で思い出されるのは死亡者も出して、「空飛ぶタイヤ」で小説化もされた三菱自動車のリコール隠し…)

「タイヤが外れる」は自動車の基本機能を満たさず、安全にかかわる極めて重大な品質問題。リコールで生産を止めるのも当然。では、なぜこの異常は起きてしまったのでしょう?

原因⇒「ディスクホイールの面性状が規定外れ」

https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1445585.html
https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1445585.html

原因は「ディスクホイールの面性状の規定外れ」。タイヤはブレーキローターの取り付け面と、ホイールの取り付け面をハブボルトによって締め付けて取り付けられています。タイヤが外れないためには「すべり難さ=すべり面の摩擦係数Xボルトが押さえつける力(軸力)」がタイヤの回転方向の力を超えている必要があります。

前田CTOは、このようなハブボルトの緩みが起きた原因について、ディスクホイールの製造品質のブレが想定よりも広かったことを挙げる。工業製品である限り、ある程度の品質揺らぎは製造上の理由で仕方がないが、設計想定値の範囲外のホイールが存在したこと。「ホイール側の面性状が規定どおりにできていないくて、滑りやすい状態にあった」(前田CTO)とし、規定トルクでハブボルトを締めたとしても、使われ方によって緩んでくる場合があるという。
 ホイール側の面性状として、加工の荒さがあったといい、適正に出ていなかった(適正に面が加工されていなかった)ため、「ホイールの加工方法を、適正な図面値が出るように見直した」(前田CTO)と説明した。

今回の品質異常で興味深いのは、一定期間の該当ロットが問題なのではなく、品質のばらつきによる異常である点。量産品は生産上、どうしても寸法や成分などにばらつきが生じます。そして、ばらつきが発生しても要求仕様が満たせるよう公差が決められています。生産の準備を行う際には、公差内に収まる(不良を発生させない)=工程能力を確保することが求められるのですが、今回はディスクホイールの面性状において、工程能力が不十分だった模様。生産準備の基礎の基礎なので、ここで躓くのはちょっと意外。(ちなみに工程能力がない場合は全数検査をして良品のみ出荷して対応など、現場にとってかなりつらい作業が必要になったりします)

当該ロットだけ品質アウト!となれば、対象ロット、期間分を対象にリコールとすれば良いのですが、工程能力が足りていないとなると、異常(公差外れ)がいつ生産分でどれほど出ているかが不明。(概ねの割合は推定できますが)今回は立ち上げ当初で異常が発生したため、比較的少ない数量でSTOP、全量部品交換で対応となりましたが、発覚が遅れれば、市場で非常に多くの異常が出た可能性があります。考えただけでも恐ろしい…

BEVだから起きた問題??

そして気になるのは今回の異常はBEV特有の問題なのかどうか。

答えは「BEVだから起こったわけではないが、条件上BEVで起きやすい異常」

  「すべり難さ=すべり面の摩擦係数Xボルトが押さえつける力(軸力)」がタイヤの回転方向の力を超えている必要がある

上記で説明した「タイヤの回転方向の力」は自動車のトルク、そして車重に大きな影響を受けます。BEVはモーターで駆動するため、トルクがガソリン車よりも高い+電池を積んでいるため車重が大きい=タイヤの回転方向の力が大きくなります。そのため、求められるすべり難さも一般的なガソリン車よりは大きくなります。ただ、トルク、車重が大きいのはBEVだけではなくPHEVなども同様。BEV特有の問題ではありませんという点は理解しておいた方がよいでしょう。(ただしBEVの特徴上、起こりやすいのも事実

加えていうと、タイヤ(ホイール)の締結方法は「ハブナット式」と「ハブボルト式」の2種類があり、今回の異常は「ハブボルト式」で発生しています。日本車はこれまで「ハブナット式」が多く、トヨタも同様。直近のレクサスなど一部車両から「ハブボルト式」に変更してはいるものの、車種としては少ない。「ハブボルト式」への知見が多くなかったことも今回のリコールの一端を占めているのかもしれません

対策はダブルで

今回の異常に対しての対策は2つ。

対策はハブボルトをワッシャー形状一体型から、ハブボルトとワッシャーをそれぞれ別部品とし、さらにOリング状のゴムを挟み込んでいるとのこと。同時にディスクホイールを全車両良品に交換。ハブボルト、ディスクホイールの両面から対策を施す。

ここでのポイントは異常が起きたディスクホイールだけでなく、ハブボルトにも対策が打たれている点です。ディスクホイールの面粗さが問題であれば、ディスクホイールを交換するだけで良いはず。理論、設計上はそれでハブボルトが緩むことはありません。ただ、今回の異常を受けて安全率を高める、そのためにハブボルト側も改善。

問題のあったディスクホイールの工程能力は「ホイールの加工方法を、適正な図面値が出るように見直した」とのことなので、刃具や加工方法を見直したのだろうなと推定。ハブボルトもワッシャーとボルトを別部品に+Oリング追加とコストがUPしているのだろうなと業界中の人としては思うところです。(コスト吸収のために他部品でVAが求められたりするのだろうなぁ…)

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