【徹底解説:自動車メーカー決算②】なぜSUBARUと日産で決算の明暗が分かれたのか?

自動車業界の最新ニュース解説を発信するニュースレター、モビイマ!。今週、来週にわたり「各自動車メーカーの21年10-12月決算」を解説します。今回はSUBARUと日産を発信します。
カッパッパ 2022.02.09
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自動車メーカー決算発表Week。前回の三菱自動車、スズキに引き続き、今回はSUBARUと日産を解説します。

大きく明暗の分かれた2社。SUBARUは売り上げが下がり、通期でも下方修正する一方で日産はコンセンサスを超え、通期見通しを上方修正しました。

なぜ同じ自動車メーカーなのにこれほど業績で差が出てしまったのか。そのカギは「販売奨励金」です。

それでは、2社の決算について発表資料を基に分析していきましょう。

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1.モビコラム

モビコラムでは、カッパッパが自動車業界最新トレンドを独自の視点と切り口で語るコラムです。かなり力を入れた内容で仕事/投資に役立つこと間違いなし!

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① 売れるクルマがない!生産台数減と原材料高騰が大ダメージ。SUBARU決算

SUBARU(スバル、東京都渋谷区、中村知美社長)は7日、2022年3月期連結決算の業績予想を修正し、純利益を1100億円から750億円(前期比2.0%減)に引き下げた。世界的な半導体不足による部品供給の遅れが想定以上に長期化し、これまでの減産分を挽回できないと見通した。半導体不足による減産は昨年4~12月で約21万台に及ぶことも明かした。
 通期の業績予想について、売上高は2兆9000億円から2兆7000億円(4.6%減)に、営業利益は1500億円から1000億円(2.4%減)にそれぞれ引き下げた。世界販売台数の通期計画も、前回発表から9万台引き下げて74万台(14.0%減)とした。

今週の決算発表、完成車メーカーTOPバッターはSUBARU21年3Qの内容は非常に厳しいものになりました。

半導体供給問題による生産台数大幅減が要因となり、前期比で大きく減収減益。売り上げは6659億円(前期比△1906億円)、営業利益は227億円(前期比△449億円)。売り上げが23%も落ち込んでいるので、それは儲からない…生産が伸び悩み、業績に大きな影響を与えた形になっています。前の四半期に比べても今回3Qの落ち込みは非常に大きく、10-12月は生産に本当に苦労した時期だったことがうかがえます。

21年4~12月までの累積でも前期比より減収減益。会見ではこの期間で「約21万台が半導体供給問題により生産減」。スバルの年間生産量が概ね100万台だとすれば、3Q生産可能量⁼75万台に対しての21万台の減産幅は30%近くになります。自動車メーカーは稼働率が下がれば、1台当たりにかかる償却費が上がるため、利益は出にくく…日本メーカーの中で一番減産割合が大きいのはSUBARUなのですが、今回の決算は減産の影響をもろにくらった内容になっています。

そして減産以外にも大ダメージを与えているのが原材料高騰

21年4~12月までの累積、SUBARU+SIA(アメリカ現法)合わせて、551億円のマイナス要因に。為替レート差や原価低減のプラス要因を大きく超え、営業利益を押し下げる要因になっています。

前回のニュースレターでも発信しましたが、自動車メーカーでは今回のプラス要因として「販売奨励金減」があります。「在庫が少ない⇒値引きしないでも売れる⇒値引きの原資となるメーカー支給の販売奨励金減」。決算発表の中でも

米国市場向け販売奨励金については、前年の台当たり1,300ドルに対し450ドル減となる850ドルとなり、奨励金総額としては380億円の削減

増益要因として述べられていました。しかし、実はSUBARUはアメリカで人気が高く、在庫が少なかったため、販売奨励金が多くなかったという前提が…そのため、他社に比べると、販売奨励金減の恩恵は少なくなっています。

日本メーカーの中でも大きい減産幅、そして増益要因となる販売奨励金減が比較的低いことにより非常に厳しい決算になりました。通期見通しも売上高は2兆9000億円から2兆7000億円(4.6%減)に、営業利益は1500億円から1000億円(2.4%減)にそれぞれ引き下げ。本当に作れていないことが辛い…

ただ需要そのものは非常に旺盛です。

主要市場のアメリカでは運搬中(パイプライン)の在庫を販売するほどの売れ行き。バックオーダーも42000台。生産すればすぐに販売に結びつき、販売奨励金少なく、高く売れる。生産が正常化すれば一気に業績が好転することは間違いないでしょう。

半導体供給問題がいつ解消するのか。SUBARUの業績はその1点にかかっています。

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