【コロナの次は電力問題?】中国電力危機で工場稼働停止、部品供給危機へ_モビイマ!【Vol.27】

自動車業界の最新ニュース解説を発信するニュースレター、モビイマ!第27号。【ニュース】東南アジアでのコロナ感染拡大がひと段落したところにやってきた新たな部品供給問題「中国電力制限」工場稼働停止が相次ぐこの問題について詳しく解説します。
カッパッパ
2021.10.04
読者限定

ご安全に!

気が付けば今年も残すところ90日を切りました。ずっとマスクつけている2021年。緊急事態宣言が明けたので飲みに行きたいと思いつつ、今年も忘年会の開催はなさそうです。いいのやら悪いのやら。そもそも貯まっている送別会はいつか開催されるのだろうか。

さてさて「モビイマ!」Vol27スタートです。

【目次】

1. モビニュース!

  • コロナの次は電力問題?中国電力危機で工場稼働停止、部品供給危機へ
  • スピード重視が招いたコンプラ違反。トヨタ、相次ぐ不正車検発覚
  • 今週のテスラ

2.モビカイブ

  • 行ってみよう、オンライン工場見学「日産」

3.余談:ヘノヘノカッパッパ

  • 今週のおすすめ。

1. モビニュース!

「モビニュース!」では、自動車業界1週間の注目ニュースや記事を紹介し、Twitterよりも深掘りした情報・視点を発信します。自動車業界の最新トレンドはこれさえ読めば大丈夫!

***

コロナの次は電力問題?中国電力危機で工場稼働停止、部品供給危機へ

jp.reuters.com

中国では、政府が環境政策を重視する影響で深刻な電力不足が起きている。一部地域で重工産業が低迷し、中国の経済成長に悪影響が及ぶとアナリストは指摘する。
中国の電源構成は石炭火力の比率が圧倒的に大きい。しかし石炭の価格上昇や供給減少で、暖房需要が高まる冬を前に電力不足に陥っている。
https://jp.reuters.com/article/china-power-idJPKBN2GN0MH

自動車業界を悩ませる部品供給網の乱れ。半導体は依然厳しい状況にあるものの、直近問題となっていた東南アジアでのコロナ感染拡大によるロックダウンは片が付いてきた…と思いきやここにきて新たな問題が浮上。

「中国、電力危機による操業制限」です。

中国で、電力が足りず、ほぼ全土で電力制限がかかるように。実は中国、電力制限はよくあることなのですが、今回は規模が大変大きく、各種生産に影響を与えるまでに。

中国で深刻な電力不足 アップル・テスラ向け工場停止(写真=AP)

米アップルや米テスラ向け部品を生産しているとされる工場が操業を停止し、日系企業にも影響が出始めている。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM275M50X20C21A9000000/

政府主導で制限が行われ、すでにアップルやテスラの仕入れ先でも操業中止。特に江蘇省など政府の基準を守れていない省で電力規制が積極的におこなれている模様。

エネルギー消費が今年上半期(1~6月)に増加したとして、江蘇省や広東省、福建省など9省・自治区に最も厳しい警告等級の「1級」を発令。各地方政府は、エネルギー消費の多い企業の電力消費を厳しく管理し、電力使用量の削減を図ってきた経緯がある。

江蘇省の蘇州市は蘇州工業園区があり、今部品供給問題となっている半導体の工場も多数立地しています。(ルネサス蘇州工場もあり)在庫の少なくなっている半導体の供給がよりタイトになる可能性が高いです。

もちろん、日本の自動車メーカーに関わる工場にでも電力の制限、それに伴う操業停止が出始めており、部品供給に問題が出始めています。中国から日本などに輸出する部品に関しては、運送のリードタイムがあるため、今のところ操業に影響を与えるまでには至っていません。ただ、中国国内の自動車メーカーに納める部品については在庫が少なく、電力制限により部品が生産できないとなると、自動車メーカーを止める結果になりかねません。また完成車の工場そのものが電力制限を受けるとそもそも組み立て自体ができない事態に。ただでさえ、半導体問題により、生産の調整がなされ、前年比がマイナスとなった中国自動車生産。ここにきて大きな不安要素が生まれています。

なぜ電力危機が起きているのか。その理由は政府の打ち出した「脱炭素化のビジョン」が先行し、安価なエネルギー資源であった石炭発電が制限+石炭の価格が高騰しているためです。

www.bloomberg.co.jp

中国では電力需要が伸びる一方で、「環境に悪い」とされる石炭の採掘は資金供給の停止や安全基準の確保、政府の気候変動取り組みへの強化により、拡大が出来ていません。

そして石炭の輸入に関しても主要国であるオーストラリアとの取引中止が続いており、数量を増やすことが出来ていません。頼みの再生可能エネルギーも今現在は安定供給はできておらず、波が大きいため電力不足を解消するまでには至りません。

急激な電力電源シフトによる歪み⇒電力不足危機+値段高騰。イギリスでも同様の問題が起きており、脱炭素に向けた電力シフトが容易ではないことを実感させられます。問題の根本的な解決が見えないため、今後10月以降もこうした電力規制が継続されるかもしれません。中国でGDPを大幅に下げるような電力規制が長続きするのか、そもそも構造的に電力規制しないと立ち行かない状況になっているのか、脱炭素に向けたエネルギー規制を現段階でどこまで実施するのか。複数の相反する要素が絡み合い、全く先が読めません。

中国、なにをするにしても政府がすごく思い切りが良い決断をしがちなので、今後政府の動向に注目していく必要があります。

タイミング良いのか悪いのか、10/1~7は国慶節で祝日になります。この期間分の在庫を作れていれば当面は問題ありませんし、電力の消費が下がるであろう、この期間で挽回が出来れば、部品の供給に影響は出ないかもしれません。ただ国慶節明けに同様の電力規制が続くようであれば、部品供給リスクは大幅に上がります。

一難去ってまた一難。2021年、自動車業界は本当に部品供給に悩み続ける1年になりそうです。(本当にサプライチェーン問題は難しい)

スピード重視が招いたコンプラ違反。トヨタ、相次ぐ不正車検発覚

response.jp
トヨタ自動車が系列の販売会社を調査した結果、計15社16店で車検の不正行為が明らかになったと発表した。対象となる台数は調査のきっかけとなった不正分を含め累計で6659台に及ぶ。国土交通省は7月に不正が発覚したトヨタモビリティ東京の店舗「レクサス高輪」について、車を国の車検場に持ち込まず車検サービスを店で完結できる認証の「指定自動車整備事業」を取り消す処分を下したという。
https://response.jp/article/2021/09/30/349914.html

7月に発覚したトヨタ販売会社の不正車検。トヨタの中で調査を進めた結果、新たに15社、全国6659台の不正が発覚。国内最大手トヨタ、信頼できるはずの「トヨタ販売店」が起こした違反だけに非常に多くの反響が寄せられています。(トヨタ販売店は「トヨタ自動車」とは別会社になりますが、多くの経営層はトヨタから出向、またトヨタ車を売る実質的なユーザーとの接点であり、トヨタ自動車本体にも責任、影響があります。)

車検は法律で決められた項目を点検し、基準に満たしていない点は整備/修理する必要があります。車を安全に乗るために、車検は適格に行われなくてはなりません。

今回明らかになったのは、サービスを優先するあまり薄れてしまった法令遵守意識の低下です。安価な車検専門業者と対抗するために、自動車メーカーディーラーでも様々な取り組みを行っています。その1つが「スピード車検」。車を預けてから1時間程度で車検が完了する、このサービスはユーザーにとっては時間の節約になり、大変便利です。一方で業者としては時間が限定され、早急に車検の実施を行うことが必要であり、現場の負荷は非常に大きくなります。製造業の基本はQCD、「品質、コスト、納期」ですが、この納期を優先するあまり品質を無視する。現場では起こりがちではありますが、発生/流出を含め起こらない仕組みを整えていかなくてはいけません。

こうした不正に対し、「現場が勝手にやったことだ」という批判は間違いです。現場がなぜ不正をしなければならなかったのか、なぜ不正を発見し、防ぐことが出来なかったのか。これは会社の仕組みの問題であり、現場、そしてそこで働く人を責めることはできません。得意のなぜなぜ分析で真因を突き止め、再発防止に向けた対策を十分に練る必要があります。

課題として、「サービス現場における過大な業務量と、エンジニアの人員不足」、「車検制度への役割認識と遵法意識の不足」、「経営層・管理者と現場作業者の風通しの悪さ」、「指定整備における監査機能の不備」、「車検を正しくおこなうためのお客様への確認や説明の不足」(中略)
必要な人員の増強や、サービス機器の更新などを最優先で進めるとともに、不正を誘発する背景となりうる要因を改善すべく、働く環境の改善や、職場風土づくり、改善をリードし継続できる人材の育成などについても、早急に取り組んでいく。

報道されている課題は実に一般的で起こりがちな内容ですし、対策もいわば「普通」のこと。ただ、その「普通」ができない現状が不正を生み出したのです。当たり前のことをちゃんとやれる「仕組み」を整える。どれだけスピードをもってやり切るかが企業としての真剣さを表す指標になります。

そして今回の不正の背景には「販売会社の経営層が営業成果重視で現場に無理をさせ、メーカーも目標達成型の表彰制度で助長してしまった」、本来あるべき姿から離れたあり方を推し進める会社方針の問題もあります。(これも現場ベースで起こりがち)サービスを落としてでも、法令を守る。その決断を現場でできる、それを評価する風土、環境を作り上げることが再発防止、信頼回復につながるでしょう。

最後に今回の不正にあたり、オンラインの会見で非常に気になったのは人員の確保の在り方です。

また、人手不足による現場の負荷も不正の背景にあったとし、外国人留学生や技能実習生を含めた採用促進などを課題に挙げた。佐藤氏は「エンジニアを志願する若者は少なくなっているが、クルマが好きで、販売店で働いている人もいる」と説明。「高度化したモビリティー(移動手段)が出るなかで、夢のある職場にしないといけない。オールジャパンで取り組む問題だ」と述べ、自動車業界の人材育成について言及した。

本来、人手が足りないのであれば高い給料を払ってでも人員を確保すべきです。しかし、会見で挙げられたのは「外国人留学生や技能実習生を含めた採用促進」。自動車整備士は人員不足にも関わらず「クルマが好き」で好きなことを仕事にしている=やりがいがあるから給料が低くてもよい職種だとされがちです。日本では自動車の保有年数は非常に長く、日常メンテナンスの重要性は増す一方。しかし、整備士志願者は減り、給料も低いため、人員不足は解消される見込みがありません。すでに人材の獲得競争が起きているという報道もあります。

自動車整備士の仕事、需給に見合った待遇の改善。実はこれが今回の不正の1番の対策なのでは?と個人的には思うのですが、どうやらなかなか難しいようで…今後、自動車整備士はEVなどの電動化も進むと異なる専門性も求められていくことになります。自動車整備士の問題は日本自動車業界全体の問題として取り組んでいくべきではないでしょうか。(自動車業界で働く550万人の幸せを量産するために)

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