【もはや『確トラ』?】4つの切り口で見えてくる大統領選がもたらすアメリカ自動車業界大変動

2024年11月に実施されるアメリカ大統領選挙。民主党バイデン氏 VS 共和党トランプ氏の争いは、直近トランプ氏がリードし、政権交代する可能性が高まっています。トランプ政権になると自動車業界にはどんな影響が出るのか。その詳細を解説します。
カッパッパ 2024.07.20
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「Make America Great Again」トランプ氏の大統領第二幕が始まる可能性が高まっています。共和党の大統領予備選挙を制し、バイデン氏との一騎打ちに挑んでいるトランプ氏。6月までの支持率ではバイデン氏を若干リードし「もしトラ」=もしかするとトランプ氏が大統領に返り咲くかも、という予測が立てられていました。しかし、7月に入り状況は一変。元々高齢が不安要素となっていたバイデン氏がTV討論で口ごもる、健康状態に不安を感じさせる内容で支持率は急落。直近、重要会見での言い間違いも相次ぎ、大統領選候補の辞退を促す声も上がっていました。

そうした中で7/14に起きたトランプ氏銃撃事件。顔をかすめ、銃弾がわずかにずれれば、命の危険もあった暗殺未遂。銃撃後のトランプ氏が立ち上がり、こぶし掲げる様子は「暴力に屈しない強いリーダー」を感じさせました。印象的な写真が発信されたこともあり、この事件によって、「強いアメリカ」の象徴ともなったトランプ氏。もはや「もしトラ」ではなく「確トラ」、トランプ氏が大統領が確定的の段階に入りつつあります。

日本自動車メーカーが今絶好調な理由は北米がドル箱市場として、大きな利益を上げているから。そのアメリカでトランプ氏が大統領になった場合、自動車業界にはどのような影響があるのか。各社の将来に大きく影響する「確トラ」がもたらす未来を解説します。

気候変動は二の次

トランプ氏の方針については、大統領で当選した際の公約を掲げた「アジェンダ47」、7/8に発表された共和党綱領案、大統領選を前に各地で行われている演説などのトランプ氏本人からの情報発信をベースに読み解きます。

まずトランプ氏が現在のバイデン大統領と大きく異なるのはエネルギー政策、気候変動を重視していない点です。バイデン政権は「気候変動」を目玉政策として掲げ、CO2排出削減に向けて多額の税金をかけて、技術開発/普及振興に努めてきました。その代表が「IRA(インフレ抑制法)」。この法律で推されたのがBEV(電気自動車)。消費者への最大$7500の購入補助金やBEV基幹部品となる電池への税免除/投資促進は自動車業界に大きな影響を与えました。この数年のBEVの伸びはこのIRAによって支えられていたと言って間違いないでしょう。

トランプ氏が大統領に就任した際にはバイデン氏が取り組んできた環境政策を撤回し、石油や天然ガスを重視した政策へ移行することを発表しています。「ドリル、ベイビー、ドリル(掘って、掘って、掘りまくれ)!」のスローガンを掲げ、アメリカの石油・天然ガス産業を後押し。天然ガスの採掘や石油のパイプラインの整備に関する連邦政府の許可を迅速化⇒生産量を増やしエネルギーのコストを低減させる予定です。実現すれば、アメリカの原油生産量が増え、ガソリン価格も低下することが予想されます。

バイデン政権が気候変動対策を重視しBEV普及を促すのに対し、トランプ氏は言わば「反・脱炭素」。化石燃料重視の政策へ転換し、内燃機関車回帰へ。現在、EVシフトに慎重で、内燃機関車の技術が高い+開発を進めている日本自動車メーカーにとってはプラス要因となる見込みです。

アンチ中国

トランプ氏の大きな特徴は外交政策において、対中国に非常に厳しい対応を取る点です。トランプ氏が大統領であった際には、中国原産品の輸入に最大25%の追加関税措置。輸出管理規制も強化し、中国の特定企業への輸出も制限しました。

今回の公約においても一律10%の一定関税を課す+優遇関税での輸入を認めてきた中国の最恵国待遇の撤廃が唱えられています。投資についても、対中投資や中国企業の米国企業買収に新ルールを追加。こうした政策が実現すれば、米国生産での輸出コストの増大やサプライチェーンの見直しが必要となります。

そしてトランプ氏が大きな懸念を掲げているのが中国製のBEV。安価なBEVは自動車業界への影響が大きく、バイデン政権でも関税が25%→100%に引き上げられました。中国メーカーはこの関税を回避すべく、隣国であるメキシコに進出し、北米自動車生産を拡大する予定…となっていましたが、BYDメキシコ工場への優遇が凍結される報道が出るなど、アメリカ→メキシコ間の圧力が強まっています。トランプ氏はメキシコ製の中国BEVにも100%の関税を課すことを公言しており、トランプ氏が当選すれば中国メーカーのアメリカ攻略は極めて困難になるでしょう。

アメリカ第一主義

「Make America Great Again」トランプ氏が重視するのはアメリカの産業振興。特に製造業のアメリカ自国生産を促す=保護主義政策をとることが明言されています。トランプ氏は前就任時ではTPP(環太平洋パートナーシップ)を離脱、上述のように中国にも追加関税を実施し、国内産業の保護、および振興を進めました。

懸念されるのは現在続いているドル高の是正です、世界の他通貨と比較してドル高は顕著であり、他国から安い製品が輸入される要因となっています。ドル高改善に向け、自国通貨安となっている国(代表例は日本)を為替操作していると認定し、制裁関税が検討される=ドル安を促す政策を取られる可能性があります。

現在、日本自動車メーカーが好調なのはアメリカへの完成車輸出が円安効果もあり、大きな利益を上げているから。足元が1$=157円ほどと歴史的なレベルまで円安が進んでいますが、トランプ氏が就任後は円高に振れる→輸出による利益が減る可能性があります。またアメリカ現地での生産が求められる(輸入品は関税が追加される/現調率規定の強化)可能性があり、サプライチェーンの構築見直しが必要になるかもしれません。2023年はアメリカビッグ3よりも他自動車メーカーのシェアが上回った=国外メーカーのシェアが伸びています。自動車産業に従事している人が多い=多くの投票を集める基盤であるため、アメリカ国内の自動車産業を推し進める公約/政策が施行されていくことでしょう。

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