【TURING 山本CEOインタビュー①】スタートアップは発明だ

「We overtake Tesla」レベル5の自動運転車を2025年に発売する計画を掲げる今日本で一番熱いEVベンチャーTURING。CEOである山本一成氏をモビイマ!が独占インタビュー。第1弾ではTURING設立の経緯を詳しくお聞きしました。
カッパッパ 2022.08.31
誰でも

 アメリカ、中国で次々と立ち上がるEVベンチャー。時価総額世界一で販売を伸ばし続けるテスラやAmazonからの受注を受けているRivian、交換式電池で注目を集め、欧州やアジアにも進出を始めたNIO…世界で多様な新興EVメーカーが躍進を続ける中で、日本ではユニコーンと呼ばれる評価額が10億ドルを超えるEVベンチャーは現れていません。

ただ日本でもEVベンチャーは立ち上がりつつあります。日本のEVベンチャーの中で今最も熱い企業がTURING

「We overtake Tesla」レベル5の自動運転車を2025年に発売する計画を掲げ、現在シード(大枠のビジネスが決まった段階)として10億円の資金を調達。数々の新聞、メディアでも特集され、非常に注目を集めています。

そんなTURINGのCEO、山本一成氏にモビイマが独占インタビュー。ダメもとでTwitterのDMで直接お願いして実現したこの企画、今回から4回に分けて発信します。ここでしか読めない充実した内容。日本の自動車業界のこれからを考える上で非常に参考になるインタビューです。それでは早速お読みください!

TURING CEO 山本一成氏 プロフィール

将棋名人を倒した超人間級AI Ponanzaの開発者。AIカンパニー・HEROZを初期メンバーとして立ち上げ東証一部上場に尽力、現在も同社で技術顧問を務める。2021年、TURING株式会社を共同設立。名古屋大学 特任准教授、愛知学院大学 特任教授も兼任。
TURING HPより

カッパッパとしては、将棋Ponanzaの開発で自動車業界に来られる前から存じていたというかすごく憧れの存在の方(情熱大陸も見た)。「ディープラーニング」ドリブンでクルマを製造し、レベル5完全自動運転EVの販売を掲げるTURING、CEO。

Twitterアカウント: @issei_y

note:

留年から生まれた将棋AI

佐藤名人と指す将棋AI PONANZA
佐藤名人と指す将棋AI PONANZA

カッパッパ(以下 カッパ⁾:

この度はインタビューする機会をいただきありがとうございます。まず初めに、TURING設立に至るまでの道のりをお伺いしたいです。

山本一成氏(以下 山本⁾:

私は東京大学に入学したのですが、2008年ぐらいに留年しちゃったんですね(笑) 留年をすると、人間考えるもので、「これからどういう未来になるのかな」と考えてみました。当時は今と違ってそれほど流行ってる訳じゃなかったんですが、コンピューターがいわゆるムーアの法則で、年々すごい速度で進歩していました。「これ、コンピューターの時代が来るじゃん」、特にソフトウェアが来ると思ってプログラミングを始めました。

当時課題をどうするか、いろいろ考えました。私は将棋がすごく好きで、アマチュア5段ぐらいの実力があって結構強かったんです。そこで将棋を指すプログラムを書いてみよう、そこから始めました。そこ以降の内容は、すでに他のインタビューでも語っているので割愛します。

将棋のプログラムを作っていく中で、今の人工知能、強化学習、深層学習といった大きなビッグトレンドを受けながら、強力に将棋AIが強くなる過程を見てきました。これは本当にすごくて、アマチュア5段だった自分よりもはるかに、将棋の名人より強くなっていく。しかも、まだ人間が指したことのない手を、自分対自分の膨大な解析結果から生み出して、人間よりもはるかにうまいプレーを実現する。単純に読みが鋭いというより、人間が知らない知識を獲得していったことは、当時の自分が聞いたらびっくりすると思います。そういったビックトレンドの中で、名人と対局するときはかなり強い将棋のプログラムができていました。

そして、ベンチャーへ

山本:あとHEROZというベンチャーに入りました。 ベンチャーなので、当然ながら何にもなかく、当時はUNITYでスマホアプリ「将棋ウォーズ」を開発しました。今もまだ現役で、もう7億対局を超えたくらい使われています。この数字、7億対局はなかなかすごい。将棋は二人いないとゲームできないので、10億回以上遊ばれてる計算になります、

また当時ビッグトレンドとして、ガラケーからスマホに変わり始めることもちょうど起こりました。 普及が2割から3割を超えたような時代。まだ何もなかったところに、スマホ大陸が突然現れた。その波に乗ることができたことも非常に大きいと思っています。

そのビッグトレンドの中で、新しいビジネスがたくさん花開きました。例えばメルカリ。セカンドハンド、中古市場は昔からありましたが、スマホ上で簡単に取引できるようになった。スマホ上でのWEBゲームも同じ。GREEなど、スマホでゲームができるようになりました。HEROZもスマホやAIを活用した、コンサル、DXの推進を進めて、業績を一部上場基準まで満たして上場、私も初期メンバーとして上場を経験しました。

「スタートアップ」という発明

山本:金融市場と接続するってすごいことで、スタートアップという現代の新しい資本主義の流れは大きいと思っています。 テスラやGOOGLE、FACEBOOKもスタートアップの文脈で始まっているんですよね。 スタートアップは数十年前の企業とは結構異なっている点があります。

端的に一つ例を挙げると、資金調達。話が前後しますが、TURINGは最初に資金を10億円調達しました。なぜTURINGは10億円もらえたんでしょう。10億円あげたい人がいたというわけじゃ当然なく、TURINGの成長性に期待し、今後上場するだろうと見込み、TURING株の一部と交換したことによって、10億円を手に入れてます。

これはテスラ、GOOGLE、FACEBOOKといった今とんでもなく大きく見えるスタートアップもそういうやり方で始まっています。トヨタやホンダなどの日本の伝統的なクルマ会社とは全く異なる登り方です

この金融システムや資金調達はある種の発明だと思っています。インセンティブを揃えるという意味での発明です。

ただ車を作ろうと思ったら、とんでもないお金が必要です。TURINGが調達した10億円をもってしても全然足りない。ですので今後、TURINGはもっといろんな方法でお金を獲得していく必要があります。

別の話として、新しい車会社が日本から生まれるって悪い話じゃないですよね。アメリカとか中国見るとめっちゃ新しい車会社がある。できるのかできないのか分かんないですけど(笑) 何百チームもあって、そのほとんどはまともに車を作れないまま終わるんですが、テスラやNIOはクルマをすでに作れている。自動運転系でもベンチャー企業を挙げ出したらきりがない。成功のシナリオは異なってますが、何百も生まれていくことがすごく大事だと思っていて、たくさんのチャレンジャーが生まれているからこそ業界が盛り上がる。これがまず何より大事だと思ってます。

スタートアップが世界を動かす

山本:私はスタートアップのダイナミクスをすごく感じていて、中国もすごいんですけど、やっぱりアメリカが強い。アメリカの強さは、スタートアップ経済の株などを資金調達といった契約に落とし込んで、ある種の才覚のある人たちによって運用されているところ。これが一番強力なシステムになっていると思ってます。

この話がすごく好きなので掘り下げると、昔は価値を作るのが簡単でした。語弊があるのかもしれませんが、道を作ってダムを作って、速い電車、新幹線みたいなインフラを作ればよかった。誰にとっても分かりやすい価値で、国も応援しやすかった。ただ、現代は「日々道をメンテする」「新しい新幹線伸ばす」は悪い話ではないんですが、明らかに効果が減ってきている。

例えばGOOGLEマップ、なぜトヨタマップじゃないのか。ヨーイドンで始めたならトヨタの方が絶対近かったはずです。情報産業は目に見えないもので、価値が直感的に分かりづらい難しさがあります。ただ、一方で情報産業の大きさそのものは、もう誰もが認めるところですよね。情報産業に限らず、現代が難しいのはそもそも「どこに何の価値があるのか」が、分かりやすく見えるわけではないところ。国家が機能不全になってるのかなって思ってます。

例えば、いろんな官公庁の人たちと話するのですが、みんな頑張ってます。個人レベルでいうと、それは間違いない。ただ、全体としてあんまり冴えないことはみんな同意するじゃないですか。

私は将棋プログラムを作る時に、いろんな企業さんにスポンサーをお願いしました。上場企業の執行役員の方に話した際に「何の価値があるの、それ」と言われたことをすごく覚えているんですよ。当時、私の言葉が拙かったのもあるんですが、どういう価値があるのかをちゃんと伝えられなかった。

ただ、そんな言葉を尽くさなくても、今となっては明確。将棋プログラムがあって、上場企業がスポンサーをして盛り上げていたら、その企業の価値が絶対に上がりました。そういった経験もあり、何に価値があるのかがすごく難しい時代になったと感じています。だから、そういった時代を乗り越えるために、才覚になる力を与えていくスタートアップが必要だと思っています。

この時代を乗り越える、さらに資本主義経済や科学、そういった人類を前進させるのは、今かなり大きな部分をスタートアップが担っているという理解をしています。少なくともアメリカは間違いなくそうです。一方で、悲しいことですが、日本だと、スタートアップの波は以前より大きくなったものの、すごくちっちゃい。

特に自動車業界はスタートアップの波があまりありません。TURINGにも大手自動車メーカーの方が入りますが、スタートアップのインセンティブ設計やどういうビジョンを考えてるのかといったことの共有に大変さを感じています。もちろん、我々が説明していく必要があるし、こういったインセンティブ、利益設計によってみんなで一緒に車をつくる、ある種の発明なんですけど、文化が違いますよね。

***

初回のインタビューはここまで。次回は「『素敵な勘違い』が日本自動車業界を変える」、TURINGの取り組み、自動車スタートアップとして成功したテスラの辿ってきた道のりについてお伺いします。

こちらも中身の濃い非常に面白いインタビューになっておりますので乞うご期待です!

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