5分でわかるクルマニュース_モビイマ!3/11

自動車業界の最新ニュース解説を発信するニュースレター、モビイマ!。先週のニュースをダイジェストで紹介。この記事だけ読めば、最新の自動車ニュースを抑えられる。1週間の始まりにぜひ一読を。
カッパッパ 2024.03.11
誰でも

ご安全に!

3月も中盤に入り、GWの予定を本格的に考え始めたカッパッパです。今回の9連休どう過ごそうかな。

月曜の朝は「モビイマ!」の5分でわかるクルマニュースから。

先週のニュース/トピックスをカッパッパが厳選。コメント付きで解説。この記事だけ読めば、最新の自動車ニュースを抑えられる。1週間の始まりにぜひ一読を。

お金はちゃんと払いましょう

下請け業者への支払代金を減額したのは下請法違反に当たるとして、公正取引委員会は7日、日産自動車に再発防止を勧告した。約2年間に部品メーカーなど下請け36社を対象に、一度決まった支払代金から計30億円超を減額したと認定した。減額幅は日産と下請け間で協議して決め、覚書も交わしていた。違法な商慣行は数十年前から常態化していたとみられ、公取委は社長を中心とする順法管理体制を整備するよう日産側に求めた。
公正取引委員会の公式サイトから https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2024/mar/240307_nissan.html

公正取引委員会の公式サイトから https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2024/mar/240307_nissan.html

日産にて仕入先に不当に価格を減額し、支払っていたことが発覚。その額、約30億円と下請法施行以来最高額。1社あたりの最高金額は11億円と非常に多大な金額となっています。

古い話なのかと思いきや、対象期間が2021年以降2023年4月までとずいぶん最近の話。自動車業界で原価低減協力のため、慣習として「割戻金」として仕入先に支払う代金を減額することはありましたが、前提となるのは仕入先の合意があってこそ。完成車メーカーからの一方的な値下げ、割戻金は不当であり、違法です。下請法の最も基本となる内容だけに現在、しかもこれほどの額で実施が行われていたことは正直驚きです。

現在、価格競争が激しくなっており、原価低減の要求が強いことは事実です。自動車業界では年次価格改定、定期的に価格が見直され、その際に一定の低減が求められることが慣習化しています。サプライヤーではその低減を見込んだ上で、それ以上の原価低減を推し進め、利益を向上させる→その努力が日本の自動車競争力の源泉になってきました。

   自動車製造業においては、近年、本件と類似の違反行為が生じ、公正取引委員会が下請法に基づく勧告を行っている。また、下請法に違反するおそれのある行為についても継続して生じており、指導等の対象ともなっている。公正取引委員会としては、このような状況を踏まえ、引き続き、自動車製造業における下請法違反行為に対し、厳正に対処していくとともに、改めて業界団体への周知等を通じた啓発活動を行っていくこととしている。
https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2024/mar/240307_nissan.html

ただしそうした古き慣習は徐々に見直されつつあります。インフレ、賃上げもある中でサプライヤーでも部品の販売価格を上げていかなければ利益を確保することはできません。自動車メーカーでもサプライヤーが潰れてしまえば、部品の調達が滞ることになり、大きな損害が生まれます。両者が共に利益を生み出し、信頼関係を構築できる価格設定にしなければいけません。今回の事件を機に、部品の発注を見直し、自動車業界全体として「正しい」やり方での競争力確保、原価低減、利益を生み出す構造を作り出していくことが必要です。

子会社にして内製化

 トヨタ自動車は2024年3月5日、プライムアースEVエナジー(PEVE)を完全子会社化すると発表した。PEVEに共同出資するパナソニックホールディングスと合意しており、同年3月下旬に完全子会社化する予定だ。車載用バッテリーの量産体制強化につなげる。

トヨタ、今後の電動化に向けた電池供給に向け、共同出資会社であるプライムアースEVエナジー(PEVE)を完全子会社化へ。1996年に設立されたプライムアースEVエナジーはパナソニックと共同で創られ、その後HEVの拡大と共にトヨタの出資が拡大。2010年にはトヨタ自動車80.5%、パナソニックグループ19.5%となり、そして今回完全子会社化が決定しました。

主に角型での電池を生産しているPEVE。生産している電池はHEVに搭載され、累計での生産台数は2000万台超え。電動化を見据えて新工場(新居工場)の稼働も今年始まる予定です。

トヨタの国内での電池戦略では国内三社が関わっており、他ではプライムプラネットエナジー&ソリューションズ(出資比率 : トヨタ 51%、パナソニックHD 49%)がBEV/PHEV/HEV用電池、豊田自動織機がHEV用電池を量産しています。今後、電動化に向け電池需要が高まる中でPEVEは今後、HEV用電池に加え、BEV・PHEV用電池も含めて生産する予定…とされているのですが、どの部分を担当するのかはよくわかっていません。

BAV用の次世代電池では3つの電池が予定されています。パフォーマンス版(角形)⇒プライムプラネットエナジー&ソリューションズ、普及版(新構造/パイポーラ)⇒織機、自社内製、ハイパフォーマンス版新構造/パイポーラ)⇒織機、自社内製となっており、PEVEがどこになるのかは明確になっていません。ただ、そもそもパナソニックの出資比率が低かったこともあり、共同会社では自由度が下がることを考えると、このタイミングで子会社化するのが良いという判断なのかもしれません。

徐々に本格化してきたトヨタの電池調達。25年以降北米などを中心に工場が立ち上がる予定であり、生産の準備が進んでいます。26年150万台という目標はトヨタにとっても非常に高く、達成は容易ではありません。売れ行きもさることながら、今回の子会社を含めた今後の電池戦略、どこでどう作っていくのかにも注目です。

工場は作るの止めます

米電気自動車(EV)メーカー、リビアン・オートモーティブは、ジョージア州での新工場の建設計画を一時中止する。コスト削減を図って突然、方針を変えた。同社は販売価格を抑えたEVモデル「R2」の発売に向け、準備を進めている。

量産は開始したものの、思うように台数を伸びず、赤字が続き株価も低迷しているリビアン。ここでこれまでの戦略を撤回。予定していたジョージア州での新工場の建設計画を一時中止、価格を抑えた新モデル「R2」を現在のイリノイ州の工場で生産し、納入時期を前倒し。「R2」の販売開始は2年後の26年になる予定です。

現状、かなり厳しい業績が続いているリビアン。ポストテスラの筆頭とされていましたが、量産開始が上手くいかない、部品調達コストの上昇、予約のキャンセルも相次いでいるとあって、勢いはありません。会社がつぶれるのは現金がなくなった時。新工場に投資する費用が削減できれば、赤字が続いても現金の確保が可能になる+需要も現工場の生産能力で賄えるとなれば、今回の新工場見送りは現在の状況を考えれば当然なのかもしれません。

BEVは現在レッドオーシャン化しており、黒字化できているのはテスラ、BYDのみ。既存メーカーのFordもBEVで大幅な赤字を出している状況です。これから開発を進めて果たして成功できるのか。数あるBEV新興ベンチャーは生き残ることができるのか。新興ベンチャーの中でも期待が高く、量産にこぎつけたリビアンはこのまま赤字を続けて倒産、もしくは新型車で一気に巻き返しとなるのか。今回の戦略が功を奏するかどうか、今後の業績の行方に注目です。

【今週の一言】

最近、寒暖の差が激しくて周囲でも体調を崩している人が散見されます。みなさんもお気をつけて。。。

***

今回のニュースレター、感想をいただけると大変励みになります。もしよろしければTwitterで呟いていただけると大変うれしいです!

・トヨタやテスラなど自動車メーカー最新情報
・CASEなどの業界トレンドを詳細に解説
・各自動車メーカーの戦略や決算分析

すでに登録済みの方は こちら

サポートメンバー限定
【回り始めた負のスパイラル】テスラは自動車メーカーの『宿命』を乗り切る...
誰でも
【21万台リコール/生産停止】トヨタ看板車種「プリウス」で何が起きてい...
サポートメンバー限定
【チートすぎる低価格】躍進凄まじい中国BEVが激安な3つの理由
読者限定
5分でわかるクルマニュース_モビイマ!4/15
サポートメンバー限定
【日産新中計】『仲間』と共につくり上げるEV巻き返し戦略
読者限定
5分でわかるクルマニュース_モビイマ!4/8
サポートメンバー限定
【日産新中計】全方位で+100万、弧を描く成長は実現できるのか
読者限定
5分でわかるクルマニュース_モビイマ!4/1