【TURING 山本CEOインタビュー②】「素敵な勘違い」が自動車業界を変える

「We overtake Tesla」レベル5の自動運転車を2025年に発売する計画を掲げる今日本で一番熱いEVベンチャーTURING。CEOである山本一成氏をモビイマ!が独占インタビュー。第2弾ではなぜ自動車ベンチャーだったのか、自動運転開発、ライバル「テスラ」について詳しくお聞きしました。
カッパッパ 2022.09.07
誰でも

大好評、今日本一熱い自動車ベンチャー「TURING」山本CEO(@issei_y)インタビュー。

第2回は「『素敵な勘違い』が日本自動車業界を変える」、なぜ自動車ベンチャーだったのか、自動運転開発、ライバル「テスラ」について詳しくお聞きしました。とても充実した、ここでしか読めない対談。それでは早速続きをどうぞ。

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日本を元気にするための自動車ベンチャー

https://www.wantedly.com/projects/1068739より TURING社内、メンバー

https://www.wantedly.com/projects/1068739より TURING社内、メンバー

山本:大事な話として、大体革新ってのは外から来たやつがやるんですよ。

スタートアップとして、将棋のプログラムを作って、あと大学の先生とかもやったり、情熱大陸でたり、海外含めた講演は本当にいっぱいしたり、すごくいろんないいことが起こったんですが、自分の周りに、この世界に対して還元したいなっていうのをよく思っています。

私自身はもう個人としては、満足しちゃいました(笑)個人として満足しちゃったんですけど、とはいえ、さっき言ったように日本はなんか元気ない。何で元気ないのかの説明をすると、大きな話として、このスタートアップ、ある種の発明がまだ日本の中でアダプトされてない、適用吸収されてない、そこを大きくしたいって思いました。

あとは日本のスタートアップの投資額も増えているので、日本でも車、EVを作るチャレンジをしてもいいんじゃないか。そういうスケールには到達してきたという理解をしてます。私が車を好きだからという点はなくはないですけど、やっぱり産業がでかいと考えて始めました。

自動車、不動産、医療、保険、このあたりの産業がGDP10兆円をはるかに超える。こういった中から、特に外貨を稼げている、そして自分が可能性があるのは車だなと思いました。

カッパ:なるほど。そうやって自動車を選ばれたんですね。車のベンチャーってめちゃくちゃ少ない。日本のベンチャーいくつかはありますけど、今TURINGさんが掲げられているようソフトもハードも作る、すごい高い志を掲げられてるベンチャーっていうのはないと思います。

山本:「We overtake Tesla」ってすごい勘違いをしている。すごい勘違いをしていることは我々もわかっていて、でもこういうこと言うやつはいてもいいんじゃないかなっていうことが、最初にTURINGを作ったときの思いです。

「素敵な勘違い」

山本:共同創業者の青木さん、彼はカーネギーメロン大学で自動運転の研究をやって、日本に帰ってきた。一緒に名古屋大学にいて、名古屋大学はモビリティが強かったので、周辺技術、特にセンサーやLiDAR、自動運転の世界観とかこういう感じなんだよって話を聞きました。なるほどと思って、あとで自分たちでも調べ直すと、中国人、めちゃめちゃ車を作ってることを知りました。本当に何百もあるような会社、チームが車を作ろうといわば「勘違い」をしてる。

車を作るのは本当に難しくて、最近は保安基準とにらめっこして、「何なんだこれは」みたいなことばかりしています(笑)

カッパ:大変よく分かります。

山本:「俺どうすんの」という感じなんですが、でもそういった難しさを理解しながらも、やろうというチームが何百もあるならば、自分たちもやれるんだと思っています。我々が言うのはなんですが、言ってしまえばさして失うものもないですし、これくらいの自分たちが一番勘違いして声を出すのが一番ちょうどいいのかなと思いました。

カッパ:山本さんよく言われてる「素敵な勘違い」ですよね。

山本:大きな話をすると、一番願っていること、TURINGを超えた願いとしては、こんな風に自分たちもやっていい、車産業、あるいはそれすらも超えて一番大きな産業を始めちゃってもいいってことを共有したいです。これが一番の願いです。

カッパ:本当にTURINGさんは自動車業界で異質でかなり特出、雑誌や日経新聞でも取材をされていて、注目を集められているんだなと思います。EVベンチャーは日本で本当に少ない。

山本:本当に頑張らなきゃって思ってます。「スタートアップ」をやるという文脈自体は結構広がってきてて、特に東大生とかよくやります。ですが、みんな無難なスタートアップ。無難なんて単語はおかしいんですけど、SaaSやソフトウェア系で解決しようとしていて、それは素敵な話なんですけど、ある種そこはもう狩場として終わってる。一方でハードウエアみたいな重厚で、さらに難易度が高いところにチャレンジできるようになったのだから、ぜひそこにチャレンジする人が増えたらと思ってます。

自動運転開発の難しさ

山本:自動運転はまず私有地の1周するようなプログラムから始めました。ディープラーニングだけで、白線認識も明示的にはせずに、純粋なディープラーニングの力だけで乗り切ろうとプログラムを書こうとしたんですが、なにより難しかったのはソフトウェア的な話じゃなくて、ADASの乗っ取りですね。

逆に言うと、なんでスタートアップがハードウェアに来れないかっていくつか理由があるんですが、一つはやっぱりハードウェア特有の知識の難しさがあります。

基本的に情報開示もされていないですし、「CANって何」という状態から始まりました(笑) ただハードウェアの知識を集めて、サービスマニュアルなども見ながら進め、客観的なファクトを蓄えていって、すでにいくつか技術として握れているところもあります。

勇気づけられた例としては、エクステリアをいじって、改造車として売ってる会社もあり、そういう会社を見ると、自分たちもできなくはないはずと思っています。TURING、一見すると、何にもない荒野を走っているみたいな感じがありますが、実は道しるべをちゃんと見つけています。「こういった作りになっていて、どう保安基準通しているのか」や「そもそもテスラってどういう風に大きくなっていったのか」はよく比較してみていますね。

テスラが登ってきた道

カッパ:テスラは最初は改造、製造委託から始まってますよね。

山本:テスラの話をすると、今年たぶん100万台の生産を超える。あんなに遠かったトヨタが900万台超ですので、本当にちょっと背中が見えてきた感じです。テスラも、最初からあれほどすごくはないわけで、初めはイーロンマスクの手金、8.5億円ぐらいから始まってるんです。TURINGの調達資金10億円と同じくらい。

最初はロータスのエリーゼのシャーシをホワイトボディー、パワートレイン部分を除いたものをいろいろ契約を結んでもらってきたようです。テスラも最初は改造車から始めてる。彼らが取り組んだのはEV。EVは当時三菱 アイ ミーブが出ているかどうかくらい。当時は速くてカッコイイ平べったい車はEVじゃなかったんですよ。

今は時代が違うのでロードスターといったスポーツカーが最初に取り組むのに良いかは、何とも言えません。ですが、テスラは少なくともEVコンバートをちゃんと商用レベルまで持っていった、しかも新しくカッコイイ速いEVとして、世界に衝撃をもって受け入れられたのかなって思っています。

そこから始めて、モデルS、モデルX。モデルXはすごい面白い車だなと思っていて、なぜかというと、ファルコンウイングの意味がよくわかんない(笑) 扉の開け方がすごく面白い。面白いEVとして世に出て行き、価格帯もかなり上で、両方とも一般的には超高級車です。そんな超高級車セグメントから始めていって、徐々に価格を落としていく。イーロンマスクが2006年ぐらいに描いたマスタープラン見て、そんな風に始めたのかと思いました。

なぜTURINGが改造車を作っているのかというと、テスラのマスタープランをちゃんと追いかけていこう、最初は高級車で面白い車で始めていき、自動運転機能やUX、UIや洗練させ、なんとか量産車につなげたいと思ってます。こんな計画を考えているので、今は改造車に取り組んでいます。

ただ、ちょっと時代が違うので、ひょっとしたら下まわりのプラットフォームをいただける可能性もあります。でも、クルマの難しさは、やっぱり完全に0からはスタートアップは作れないところですね。

カッパ:そうですね。テスラも最初は改造車ですし、フリーモント工場も元々GMの工場が買っていますもんね。

山本:そういう難しさを抱えながらも、何とか乗り越えていきたいなと思ってます。ちゃんと登り切った会社はあるわけですからね。NIOはもう登り切ったって言ってもいいんじゃないかな。まだまだ先はあると思うんですけど。

どういう風に登るかは本当によく考えた方が良いと思っています。今やっているTURINGの事業も変わってくるかもしれない。時代と共に難しさは変わってきてますし、時代とともに簡単になった道もあると思うんですが、少なくともテスラは、もうこの道を何年も前に登っています。ICEからEVに変わったから簡単とは到底言えませんが、新しい可能性はできてきたのかなと思っていて、他の量産車メーカー、新興スタートップメーカーが登ってきた道があるんだから、我々もできるはずと本当に思っています。

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次回は「ソフトウェアとハードウェアを仲良く」よりよいクルマをつくるために必要なこと、自動運転のために必要なAIの進化、「カメラ」を採用した理由、などをお伺いします。

こちらも今回以上に、中身の濃い非常に面白いインタビューになっております。乞うご期待です!

・トヨタやテスラなど自動車メーカー最新情報
・CASEなどの業界トレンドを詳細に解説
・各自動車メーカーの戦略や決算分析

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