【修正版】相次ぐ材料値上げ。自動車メーカーに押し寄せる原価アップの波/ギリギリの在庫が途切れるとき_モビイマ!【Vol.20】

自動車業界の最新ニュース解説、おすすめレポ、本を紹介するニュースレター、モビイマ!第20号修正版。【ニュース】相次ぐ材料値上げ。自動車メーカーに押し寄せる原価アップの波/ギリギリの在庫が途切れるとき/今週のテスラetc.
カッパッパ 2021.08.30
読者限定

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クルマのイマがわかる「モビイマ!」

( 2021年8月30日発行  修正版)

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ご安全に!

「2回連続でやってしまった」

とニュースレター間違って8/28に編集途中で送ってしまいました。仕切り直しで追加、増補した修正版を送付します。本当に申し訳ありません…

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残暑がつらい!この暑さ、エアコンの効いた部屋で、甲子園見て凌ぐのが一番なんですが、現実はそういうわけにもいかず。

マスクが暑くて不快でしかたない!

そんなときはアイスに限る!ということで今日は最後にアイスを紹介しています。

では「モビイマ!」Vol20スタートです。

【目次】

1. Weekly Mobility News

  • 相次ぐ材料値上げ。自動車メーカーに押し寄せる原価アップの波

  • ギリギリで繋いでいる在庫が途切れるとき

  • 今週のテスラ

2.モビカイブ

  • 生き残るのはコイツだ!!いすゞ「フォワード」

3.余談:ヘノヘノカッパッパ

  • 今週の楽しみ

【今週のクイズ】

時代の移り変わりとともにクルマは進化していくもの。どんどん機能は追加され、かつては高級車にしか搭載されていなかった機能も今では通常装備になっています。

かつてクルマの3種の神器と言われた機能。全て付いていると「フル装備」として売りにだされる。その機能は「カーエアコン」「パワステ」、もう一つは何でしょう?

ここに配置されたボタンは、ニュースレター上でのみ押すことができます。

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1. Weekly Mobility News

Weekly Mobility Newsでは、自動車業界1週間の注目ニュースや記事を紹介し、Twitterよりも深掘りした情報・視点を発信します。自動車業界の最新トレンドはこれさえ読めば大丈夫!

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相次ぐ材料値上げ。自動車メーカーに押し寄せる原価アップの波

今年度下半期の自動車用鋼材をめぐる日本製鉄とトヨタ自動車の価格交渉が、大幅値上げで決着した。
トヨタは車用部品に使う鋼材を鉄鋼大手からまとめて調達し、取引先の部品メーカーにおろしている。関係者によると、今秋から来春までの今年度下半期の価格を、1トン当たり2万円ほど引き上げる。

トヨタ自動車と日本製鉄、半期ごとに行われる価格改定の交渉、今回は大幅値上げの+2万円での決着。2010年以降最大の上げ幅となりました。自動車業界では車用部品の鋼材を自動車メーカーが一括でまとめて購入し、自動車部品メーカーに有償支給する、トヨタの場合だと「トヨタ集中購買材(通称:トヨタ集購)」という仕組みがあります。今回の値段決定は21年下期の集購材の単価として反映されます。

トヨタ自動車と日本製鉄の交渉は、自動車と鉄鋼業界の「チャンピョン交渉」とされ、他のさまざまな製品に使われる鋼材の価格の目安ともなっているため、今回これだけ値段が上がったことで、車部品用の自給材や他産業の鋼材についても影響は波及していきそうです。

一般的に車1台あたり、0.7トンの鉄を使うとされていて、今回の2万/トンの値上げだと単純計算で1.5万円原材料費が上がることになります。車の値段が上がらなければ、その分利益が減ることになるので、自動車メーカーにとってはかなり影響の大きい値上げになりました。

ちなみにこの「集中購買」。まとまった数量が確保でき、品質、価格交渉を含めた窓口が一本化され効率的といったメリットがあるのですが、これまでは自動車メーカー側が力をもって価格がなかなか上がらないといった問題もありました。今回の交渉では日本製鉄が供給の停止まで交渉の材料にするなどかなり強気の姿勢で交渉に望んでおり、従来の関係とは異なる様相を見せています。

さて原材料なんですが、上がっているのは鉄鋼だけじゃありません

昨年末より供給不足となっていた樹脂、ナイロン66は4月の値上げに引き続き、9月も値上げを実施。主原料がそもそも値上がりしているので仕方がない…

世界中で不足している半導体についても、値上げが始まっています。需要と供給の関係からすれば値上げは当然なのかもしれませんが、使用する数量も多くなっているだけに原価UPへの影響は避けられません。

実はこの原材料費の高騰。21年4~6月の決算でもすでに影響が出ています。例えばトヨタであれば「原価低減の努力」で資材高騰の影響により50億円の減益(通常だと得意の原価低減で増益)に。21年通期の見通しにおいても「資材高騰」はリスクとして明確に述べられています。

https://global.toyota/pages/global_toyota/ir/financial-results/2022_1q_presentation_2_jp.pdf

https://global.toyota/pages/global_toyota/ir/financial-results/2022_1q_presentation_2_jp.pdf

上記に挙げたもの以外でも、あちこちで資材が高騰し、原価UPにつながっています。4~6月は自動車メーカー各社業績は回復、非常に利益率は良かったのですが、この原価UPをそのまま許容すると、今期の業績はこれから苦しくなっていくでしょう。

基本的には車の価格は変わることがないので、資材高騰による原価UPが積み重なるとその分利益が少なくなり、なかなか業績が厳しくなる…と考えると、ユーザーに直接販売し、部品費の高騰を販売価格に反映させるテスラってやっぱり変化に強い(よいか悪いかは別として)。既存の自動車メーカーでも今後そうした直販、価格反映がされていくのかもしれません。

ギリギリで繋いでいる在庫が途切れるとき

マツダは、中国からの貨物便運休の影響で、8月23日夜勤の一部から操業を停止している広島本社工場および防府工場について、操業停止期間を8月31日まで延長すると発表した。
マツダは当初、両工場について、8月24日(夜勤)まで操業を停止すると発表したいたが、中国からの貨物便運行再開が未だ不透明なため、8月27日(夜勤)までの操業停止延長を発表。中国での貨物積載場の再開見込みがなお不透明であること、東南アジアにおける新型コロナウイルス感染拡大により、部品調達に支障が出る見込みとなったため、操業停止期間をさらに8月31日まで延長することを決定した。工場操業再開は9月1日の予定。
https://response.jp/article/2021/08/27/348950.html

半導体供給問題、東南アジアでのコロナ感染拡大。自動車メーカーの生産は首の皮1枚、各社綱渡りで生産をつないでいます。そんな状況を象徴するのがマツダの操業停止

中国・上海浦東空港でコロナ感染者が確認。航空貨物を取り扱いが休止になり、貨物便の運休や受託停止・制限が拡大マツダで生産に使用する部品が欠品し、操業がSTOPになる事態に至りました。当初は稼働調整は1日で発表がありましたが、その後期間は延長。8/28時点では8/31まで約1週間休止に。通常であれば1週間の操業停止、まずありえない…

今回の操業停止で特徴的だったのは休止が直前になって発表。その後、期間も延長されていった点です。先日のトヨタショックでは自動車メーカーからの次月内示段階で調整が入りましたが、今回は当日になってからの生産調整。予想していなかった事態なのだと考えられます。

今回欠品となった部品がどのようなものなのかはわかりませんが、海外から輸入して使用する部品はトラブルが起きやすいため、安全在庫を厚めに持ち、多少の遅れがあっても生産に影響が与えない手配を行っています。今回の停止は「安全在庫がない」、しかも「運搬のリードタイムが少ない航空便を使って、ぎりぎりで手配」(運搬リードタイム:船 3~4週間、航空便 1週間)している現状が明らかになりました。

半導体供給問題、東南アジアの感染拡大で各社のサプライチェーンは通常とは全く異なる状況、各地で供給リスクが高まっています。マレーシア、タイ、ベトナムなど部品を含めた自動車生産の盛んな東南アジア地域のロックダウンは日本の自動車メーカーの部品供給網を寸断。まだまだ先が見通せません。

しかも中国では上海空港以外でも港湾のターミナルがコロナ感染者確認で2週間停止と物流の混乱が続き、全世界でのコンテナ不足や北米の船混みも解消されていません。

そして、日本でもコロナクラスターで工場が休止

部品供給リスクありすぎやろ!と、いつどの部品が途切れてもおかしくない状況。一体いつまで続くのか。9月はトヨタ大減産があるので、その間に少しでも状況が改善される、在庫が積みあがるといいなぁと思う今日この頃です。

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続きは、2420文字あります。
  • 2.モビカイブ
  • 3.余談:ヘノヘノカッパッパ

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