【徹底解説:自動車メーカー決算 スズキ】伸びしろが半端ない。2030年売上高7兆円へ準備は万端

自動車業界の最新ニュース解説を発信するニュースレター、モビイマ!。「各自動車メーカー23年3月期決算」解説、今回はスズキ。他社とは違う独自戦略、インドに注力するスズキの今期決算そして展望やいかに。
カッパッパ 2023.05.21
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黄砂の飛びすぎで洗車が大変だった、カッパッパです。なぜ洗車した後、すぐに雨が降るのか。

自動車メーカー決算シリーズ、最終回はスズキ。実は日本メーカーの中でも営業利益率の高いスズキ。「下駄」を自称する大衆車メーカー。日本国内の軽自動車市場やインドでは高いシェアを保ち、好業績を続けています。

あと毎回言っていますが、決算資料が地味ですが、わかりやすい構成なのがカッパッパはとても好き。

そんなスズキの決算は果たしてどのような内容だったのか。詳しく解説します。

1.売上/営業利益、過去最高!申し分のない23年3月期決算

自動車メーカー「スズキ」の昨年度1年間の決算は、円安の影響や主力市場のインドで販売が好調だったことなどから、売り上げと最終利益ともに過去最高となりました。
「スズキ」が15日発表した昨年度1年間の決算は
▽売り上げが前の年度より30.1%多い4兆6416億円
▽最終的な利益は37.9%増えて2211億円でした。
売り上げと最終利益ともに過去最高となり、売り上げが4兆円を超えるのは初めてです
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230515/k10014068281000.html

2023年度3月期売上高は前期比30.1%大幅増の4兆6416億円営業利益も前期比83.1 %増の3506億円、営業利益率7.6%。この期だけでいえば、トヨタよりも営業利益率は高い、好業績。 前年は主要市場であるインドでコロナによる落ち込みがあっただけに、今期は大幅増収増益、売上高、営業利益、どちらも過去最高を記録する申し分のない決算となっています。

四半期ごとの推移をみると、23年3月期に入ってから3Qまで右肩上がり。10-12月期は過去最高の売上高、営業利益を記録。4Qは下がりましたが、これは研究開発費の増加という前向きな内容でかつ800億を超える営業利益を確保できているので全く問題ないと言えます。

営業利益について分析すると、プラス効果が大きいのは為替益と台数/売り上げ構成。販売台数が4輪、2輪共に前年比で大きく増加していること、そして高収益の車種に販売がシフトしていることにより大幅に営業利益が伸びています。原材料高騰の939億円のコストUPを吸収し、前期比1591億円のプラスに。ここでもやはり強いなと思わせるのは「外部要因」を明確に分けている点。外部要因を含めない、内部要因だけで前期比プラスを出せると言い切れる資料に現在のスズキの好調ぶりがうかがえます。

また他社同様に円安も大きな追い風。決算会見でも鈴木俊宏社長より「増収増益の一番の要因は円安効果だ。」との発言がありました。為替レートでの損益でインドルピーの効果が最も大きいところがスズキらしい。なお為替益でここまで詳しく書いてくれるのはスズキの決算資料だけ。素晴らしい。

売上高を地域ごとに比較すると全地域でプラス、特にアジアが大幅に増加。前年より大幅な伸びを見せ売上高で+41.1%、営業利益は+250%とほぼ3.5倍に。その中心はやはりインド。マルチスズキとしてインド国内で圧倒的シェア誇るスズキ。やはり業績を決めるはインドでの販売。またスズキは中国での事業が少ないため、中国国内のロックダウン、競争激化の影響が軽微なことも好調の要因の1つ。

決算発表ではマルチスズキ単独での業績も説明。インド国内販売170.7万台、輸出25.9万台。営業利益率は7.3%と前年と比較して、業績は大幅に回復。コロナ禍、そして半導体供給問題が徐々に解消され、スズキの持つ「インドの強み」が如実に表れた決算になりました。

ただシェアTOPを走るインドでも韓国メーカーの進出もあり、安泰とは言えません。そうした中で現在売れ筋となっているSUVで新車種を販売開始、ラインナップを強化。結果SUVシェアを高め、前年比大幅増の販売台数を達成できています。

日本国内も夏以降生産回復。部品供給不足により4-6月期、生産台数は低迷しましたが、9月以降は生産が上向き、コロナ禍前の水準に戻りつつあります。

販売台数の中で唯一落ち込んでいるのは欧州。22年前半に物流の混乱、部品供給問題によりハンガリーのマジャールスズキの稼働が大幅に低下、販売は前期比▲24.0%。アジアが中心といっても、欧州でも一定の需要はあり、今後スズキがより業績を伸ばすには欧州の販売増も欠かすことはできません。インド以外のアジアではパキスタンが大幅減。これは輸入規制により生産ができなくなったためという説明がありました。

さらにスズキではアジア以外の新興国での販売を強化。インドの次としてアフリカの開拓に力を入れており、前年比33.5%のプラス。ガーナでの車両生産も開始し、成長市場への種まきを進めています。

今期の決算資料では電動化の進捗状況も公表。20年3月期では電動化=HEV比率が17.1%だったのに対し、23年3月期では26.7%。年々比率は向上。特に注目すべきは22年3月期→23年3月期でのインドのHEV比率の増加。9.9%→18.0%と倍増しており、HEVの伸びしろが見て取れる、今後の成長が期待できる実績となっています。

今回の決算では4輪、自動車以外の事業も好調。特にマリンは過去最高の売り上げ、営業利益を計上。営業利益3506億円のうち688億円=約2割を2輪、マリンで稼いでおり、4輪、自動車以外でも儲けることが出来るのはスズキの大きな強みです。

いや本当に隙のない好決算。他社と比べても一線を画した、スズキの強さが現れた好業績になっています。

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