【コロナ前には戻らない】~2023年自動車販売見込み大幅下方修正、その要因は?_モビイマ!【Vol.26】

自動車業界の最新ニュース解説を発信するニュースレター、モビイマ!第26号。【ニュース】最新の自動車販売予測が発表され、2021年は△500万台の引き下げ、そして2023年まで販売台数が下方修正へ。なぜこれほどの大幅減になったのか、自動車メーカーへの影響は?詳細に解説します。
カッパッパ 2021.09.27
読者限定

ご安全に!

先週は祝日が2回もあって、周りが休みの中、自動車業界は5日出勤となかなかつらい1週間でした。今週で9月も終わり。月末には棚卸しされる方もいらっしゃるのではないでしょうか。普段とは違う非定常作業。けがをしないように十分に気を付けて作業に臨みましょう!(工場の朝会みたいな文章だ…)

では「モビイマ!」Vol26スタートです。

【目次】

1. モビニュース!

  • 【コロナ前には戻らない】2023年までの世界自動車生産予想大幅引き下げへ

  • スバル、20年代後半に一般道での自動運転機能搭載、実用化へ

  • 今週のテスラ

2.モビカイブ

  • 行ってみようオンライン工場見学「三菱自動車」

3.余談:ヘノヘノカッパッパ

  • 好きなラーメン屋に行く話

1. モビニュース!

「モビニュース!」では、自動車業界1週間の注目ニュースや記事を紹介し、Twitterよりも深掘りした情報・視点を発信します。自動車業界の最新トレンドはこれさえ読めば大丈夫!

***

【コロナ前には戻らない】2023年までの世界自動車生産予想大幅引き下げへ

IHSマークイットは16日、半導体不足やサプライチェーン(供給網)を巡る問題により、2021年の世界の小型車生産台数見通しを6.2%(500万台)引き下げ7580万台とした。22年も9.3%下方修正し8260万台とした。
https://jp.reuters.com/article/autos-chips-idJPKBN2GC25M

自動車生産/販売予測を定期的に発表するIHSマークイット。今年2021年及び23年までにかけて、当初の見込みよりも大幅に生産が少なくなる予測が発表されました。2021年は△500万台引き下げ、7580万台。22年も当初の見込みより大幅マイナス△9.3%、8260万台に。

https://ihsmarkit.com/research-analysis/major-revision-for-global-light-vehicle-production-forecast.html

https://ihsmarkit.com/research-analysis/major-revision-for-global-light-vehicle-production-forecast.html

2021年は上のグラフが分かりやすいのですがQ2(4-6月)、Q3(7-9月)が2000万台未満。数量がかなり少なくなっています。これは世界的な半導体供給問題(TSMCを代表とする前工程のファウンドリー)により、各社が生産調整、大幅減産を行ったことが原因です。そして、今回の下方修正は後工程の稼働停止による影響が追加されたためです。

マレーシアは車載用半導体大手の独インフィニオンテクノロジーズや蘭NXPセミコンダクターズ、スイス・STマイクロエレクトロニクスに加えて、日本のルネサスも後工程工場を構える。ほかに、半導体後工程請負業(OSAT)を手がける地元企業もおり、最近の新型コロナ感染拡大が後工程の一大集積地を直撃した。

当初21年の上期には解消されるはず…と言っていた目論見は過去のもの。トヨタが9月10月と大減産に踏み切ったように、10月にかけて日本を含む世界自動車メーカー各社で大幅な生産調整が行われることになりそうです。(現在日本で報道があるのはダイハツ/ホンダ)

https://gyokai-search.com/3-car.htmより引用

https://gyokai-search.com/3-car.htmより引用

こちらは生産ではなく、販売台数推移のグラフになるのですが、ピークだった2018年9584万台のレベルにはしばらくは戻りそうになく、IHSの見込みでは2025年ほどになる見込みとのこと。2010年代右肩上がりで生産/販売を伸ばしてきた自動車各社は20年代に入り、大きな岐路を迎えています。販売台数の低下に対し、過剰な設備を持っていれば、その分固定費が高くなるため、利益が上がらず苦しい経営状況に。加えてCASE,特にEVシフトに向けた研究開発費増加、新規設備投資が重なり、25年くらいまでは、かなり難しいかじ取りを強いられそうです。(在庫がないにも関わらず、需要が高いので一台当たりの利益が過去最高になっているという+要素はありますが:過去記事参照

個人的にはこの生産状況の伸びを踏まえ、25年ごろEVシフトで電池を中心に多額の設備投資しているメーカーの明暗が分かれると思っています。いや、どっちに触れるんでしょう、本当に。あと日本の部品メーカーは完成車メーカー如何で大きく、業績が左右

部品供給問題でバタバタ。毎月どれだけ部品を調達できるかを精査しないと、具体的な生産計画が立てられない。自動車業界ではこんな日々が半年以上続いています。「下期は挽回するからよろしく」と言われて、作っておいた在庫が倉庫からあふれている…一方、「コロナクラスタで仕入れ先が操業停止」で部品が生産できず、欠品しそうになる。部品の心配なんてしなくて良い、かんばんを振り出せば部品が納期通りに入ってくる。早く通常の操業状況に戻ってほしいと願いながら、毎日を過ごしています。

追記:別の報道では21年当初より販売台数△770万台、影響額は約23兆円の見込みとなっており、今回の半導体問題、自動車業界にクリティカルなダメージを与えています。21年始まったときにこんな事態を誰が想像しただろう。場合によってはコロナ禍1年目で大きな打撃を受けた2020年、昨年よりも悪化する可能性ありそうです。

スバル、20年代後半に一般道での自動運転機能搭載、実用化へ

一般道でハンドルやブレーキの操作を人工知能(AI)が判断して車に運転を任せる「レベル2」相当の自動運転車を開発中のSUBARU(スバル)が、2020年代後半の販売を目指すことが分かった。

自動運転はその機能により、レベル1~5までに分かれ、自動車メーカー各社、そしてIT大手も日々開発を進めています。今回の報道はSUBARUが運転手が責任負う「レベル2」(特定状況下での自動運転機能)を一般道で実用化、という内容。

「なんや今さらレベル2」なんて思われるかもしれませんが、一般道の「レベル2」はかなりハードルが高いです。現在、販売されている車種では一般道においては「レベル1」(運転支援)が主流。高速道路では高度な「レベル2」ハンズフリー、手放しでもOKの機能を持った車が販売されていますが、一般道では自動ブレーキやACC(前の車に追随する機能)やLKAS(車線をはみ出さない)、それらを組み合わせた比較的難易度の低い「レベル2」まで。一般道はどこでも人が横断する可能性があり、歩道との境界がはっきりしない車道もあるなどレベル2実現のハードルが高く、ハンズフリーといった高度な「レベル2」は国内各社は販売をしていません。海外メーカーでも強いて言えばテスラのFSDが一般道での高度なレベル2に近いのですが、あくまでもベータ版であり、ユーザー限定かつあちこちから問題提起されているので、「一般道のレベル2はかなり難易度が高く、各社目下開発中(出るのは数年後)」という認識が正しいと思います。

https://www.yomiuri.co.jp/economy/20210920-OYT1T50259/より引用

https://www.yomiuri.co.jp/economy/20210920-OYT1T50259/より引用

ちなみに今回の報道で興味深かったのはここ。

スバルのレベル2は、独自開発した運転支援システム「アイサイト」を活用する。車載カメラの画像から信号や歩行者の動き、標識などを識別する。積雪で車道と歩道の境界が見えない場合や白線が消えているような道路でも、周囲の情報をAIが分析し、より安全なルートを選択する。

Lidarなどのセンサーではなく、カメラでレベル2を実現する点。Lidarは周囲の状況をセンサーで広範囲でつかめる一方、どうしても高価であり、搭載しようとすると車両の原価が上がってしまいます。センサー派/カメラ派で各社の戦略が分かれており、どちらがこれから自動車業界を制していくのかは非常に注目ポイントです。(なお先ほどのテスラはカメラ派)

一般道で高度なレベル2が実現できると、運転手の負担がかなり減るので、いちユーザーとしては早く搭載されてほしい…と思う一方で、開発側からすると、安全を担保したレベル2っていろんなリスクが想定される一般道はかなり難しい(しかも国ごとにかなり特性が異なる)。ただこの数年での自動運転の進歩は凄まじいので、5年後くらいには各社がかなり高精度なシステムを搭載してくれるのではと期待しています。

半分ネタですが、自動運転のAIは天下一品の看板と一旦停止の標識が区別できないなんて話もあります。…現状の自動運転機能では想定されるリスクが膨大な一般道については運転支援+αが限界。普通の人が普通の道で手放しで自動車に運転を任せるようになるにはもう少し時間がかかりそうです。(特定の範囲だけでの実験/物流のラストワンマイル運搬ではレベル4が先行して進んでいく見込)

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