【トヨタ、サイバー攻撃でラインストップ】一体何が起きているのか?
今回は号外版として「トヨタ、サイバー攻撃でラインストップ」のニュースについて詳細に解説します。自動車業界関係者が騒然となったこのニュース。トヨタ全工場でラインがストップする一大事。一体何が起きているのか。今後どうなっていくのか。報道からその内容を読み解いていきます。どこよりも詳しく、ここでしか書けない解説。自動車業界の方のみならず、クルマに少しでも関心のある方、必見です。
仕入れ先システム障害によるライン停止
国内仕入先(小島プレス工業株式会社)におけるシステム障害の影響を受け、3/1(火)(1直・2直ともに)国内全14工場28ラインの稼働を停止することを決定いたしました。お客様及び関連仕入先の方々には、様々なご不便をお掛けすることをお詫び申し上げます。
3月は挽回だ!と意気込んでいた自動車業界。そのTOPバッター、トヨタがまさかの稼働停止。その理由はシステム障害。これまでシステム障害でトヨタが止まる事態はなく、自動車業界関係者のみならず、世間を騒がす一大ニュースとなりました。
1日全工場が止まれば、国内の月間生産台数の5%程度にあたる1万3千台に影響。ただでさえ生産がひっ迫している中でその影響は甚大です。
仕入れ先でのシステム障害とは一体、何が起きていたのでしょう。
「小島プレス」で何が起きていたのか
今回システム障害が起きたのは「小島プレス」。内外装部品として樹脂部品を主に手掛けるTier1の仕入れ先になります。本社は豊田市、工場も愛知県が中心のトヨタ「ケイレツ」の企業です。
これらのサーバーの中にはトヨタなどの取引先と発注や納品のデータをやりとりする社内の基幹システムにつながっているものがあるため、製品の納入業務ができない状況
小島プレスはトヨタ向けに非常に多岐にわたり部品を供給しているため、影響範囲が広く、3/1トヨタ全工場の稼働が止まる事態となりました。2/28も納入はできなかったと思われますが、在庫を含めた対応で1日は稼働が可能だったと思われます。(トヨタに近いTier1ではジャストインタイムでの生産が進められ、在庫日数は低い場合が多いです)
なぜシステム異常で納入ができなくなるのか
今回のシステム障害は、トヨタ自体のシステムに影響があったわけではなく、小島プレスの取引先に部品を納入する際の処理に利用するサーバーが使用不可になったため、稼働が止まることになりました。
トヨタはかんばんを利用して、仕入れ先に発注を行うことで知られています。現在は現物の紙のかんばんではなく、共通EDI、電子データで発注を行う、e-かんばん化が進められています。
『トヨタWG共通EDI』とは、自動車部品メーカー間の部品調達の標準化を実現するために、トヨタグル―プの主要自動車部品メーカーによるワーキンググループ(トヨタWG)で検討し、構築された「製品の受発注に用いる共通のEDI(Electronic Data Interchange)」をいいます。
各自動車部品メーカーは『トヨタWG共通EDI』を導入することで、加入している企業と本EDIによる取引ができ、受発注業務の標準化により業務を効率的に改善することができます。

このかんばんを見たことのあるひとも多いのでは?
このEDIをいち早く取り入れたのが、小島プレスでした。EDIを採用するだけでなく、EDIから生産指示につなげる仕組みの構築を進めていたことがこちらの記事で書かれています。
共通EDIをベースに、企業を超えて工場同士をつなげ、生産指示情報を共有することで、発注企業から受注企業に向けてタイムリーに対応できる仕組みを構築
システム障害によりEDIを使用するサーバーが使えなくなれば、生産も止まる。また、納入のためのデータの受信や発注も行うことができません。トヨタ膝元のTier1、在庫日数も多くないこともあり、結果トヨタ全工場が止まることになったのです。
今後どうなる?
トヨタ自動車は1日、国内全14工場28生産ラインの稼働を2日朝に再開すると発表した。取引先部品メーカーの小島プレス工業(愛知県豊田市)でサイバー攻撃によるシステム障害が起き、1日は稼働を終日停止した。同社のシステム復旧には1~2週間程度かかる見込みだが、暫定的なネットワークで部品の受発注データをやりとりできるめどが立ったとして、再稼働を決めた。
暫定的ではあるもの、受発注データをやりとりが可能になったため、2日から操業は再開。依然小島プレスのHPはダウンしたまま、復旧も1~2週間。おそらくメールも使えないと思うのですが、現場での生産はシステムを切り離しても何とかできるため、稼働再開に至ったのだと思われます。
ランサムウェアの感染で小島プレスの復旧までに時間はかかりますが、トヨタの今後の稼働には影響がなさそう…というよりもこの挽回が3月中にあったりしそうです。
今回仕入先1社のシステム障害でトヨタ全体が止まる結果となりました。これまでもホンダでランサムウェアにより、工場が稼働を停止したことがあります。DXやIoTが推し進められる中でサイバーセキュリティの重要性はより上がり、また納入先からもセキュリティが十分なのか確認が求められるでしょう(目下自動車関係は確認が進んでいそう)。
ランサムウェアはメールから感染することもあります。情シスから「怪しいメールは開かないように」というお触れが飛んでくることになりそうです。
今回の1件、トヨタ本体が止まったのかとびっくりしたのですが、そうではありませんでした。今回明らかになったのは仕入れ先1社のシステム障害が完成車メーカー全体を止めることがあるリスク。
今後、BCP(事業継続計画)では自然災害だけでなく、こうした企業のインフラを含めた対応が必要になるでしょう。
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