【スズキ 23年4-6月期決算解説】日本メーカー随一の安定感と半端ない伸びしろ

自動車業界の最新ニュース解説を発信するニュースレター、モビイマ!。「各自動車メーカーの23年4-6月期決算解説」今回はスズキ。インドでの販売をベースにした高い利益率、そしてその先を見据えた戦略とは。
カッパッパ 2023.08.17
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自動車メーカー決算解説、今回はスズキ。「下駄」「浜松の中小企業」を自称する大衆車メーカーでありながら、実は日本メーカーの中でも営業利益率の高いスズキ。日本国内の軽自動車市場やインドで高いシェアを保ち、好業績を続けています。

自動車メーカー他社が好業績をあげる中で、今期のスズキの決算は果たしてどのような内容だったのか。詳しく解説します。(あとスズキの決算資料は地味でおしゃれ感「0」ですが、わかりやすい構成で好感度が高いです)

1.抜群の安定性、不安なのはパキスタン

スズキが発表したことし4月から6月までの3か月間の決算は、売り上げが前の年の同じ時期より13.7%増えて1兆2089億円となり、この時期としては過去最高となりました。
本業のもうけを示す営業利益は、賃上げなどによる固定費の増加で189億円のマイナス要因があったものの、最終的には33.9%増えて998億円となりました。
営業利益もこの時期としては過去2番目に高い水準です。
出典:スズキ 2024年3月期[2023年4月~2024年3月]第1四半期決算情報 2024年3月期第1四半期決算説明会

出典:スズキ 2024年3月期[2023年4月~2024年3月]第1四半期決算情報 2024年3月期第1四半期決算説明会

2023年度4-6月期売上高は前期比13.7%増の1兆2089億円営業利益も前期比33.9 %増の998億円、営業利益率8.3%。4-6月期でいえば、国内メーカーではトヨタに次ぎ営業利益率は2番目、世界各国の既存自動車メーカーと比較しても高営業利益率となっています。第1四半期として売上高は過去最高、営業利益は過去二番目と業績は極めて好調です。

出典:スズキ 2024年3月期[2023年4月~2024年3月]第1四半期決算情報 2024年3月期第1四半期決算説明会

出典:スズキ 2024年3月期[2023年4月~2024年3月]第1四半期決算情報 2024年3月期第1四半期決算説明会

四半期ごとの推移をみると、23年3月期に入ってからは四半期1兆円以上の売上高をキープ、営業利益も基本的に右肩上がりで営業利益率は7%以上を維持しており、業績は安定かつ成長を続けています。

出典:スズキ 2024年3月期[2023年4月~2024年3月]第1四半期決算情報 2024年3月期第1四半期決算説明会

出典:スズキ 2024年3月期[2023年4月~2024年3月]第1四半期決算情報 2024年3月期第1四半期決算説明会

営業利益について分析すると、プラス効果が大きいのは台数増減/売り上げ構成変化。販売台数が4輪、2輪共に前年比で増加していること、そしてインドを中心に高収益の車種に販売がシフトしていることにより営業利益が伸びています。他社と違う点は原材料価格変動がプラス→原材料価格が下がっているところ。基本的には世界各国でインフレが進み、原材料価格は高くなっているはず…なのですがスズキだけは別。生産地が日本とインド中心とであり、その地域においては原材料価格はピークを過ぎ、昨年より値段が下がっているのかもしれません(特に北米はインフレによる価格高騰が顕著なので北米生産の企業は原材料価格高騰の影響を受けやすいのかも)。原材料は抑えられた一方で労務費(人件費)は賃上げを受けて▲85億円のマイナスに。為替影響で+109億円の追い風もあり、全体で+253億円(外部要因を除いて+137億円)と増益=業績好調なのが伺える結果となりました。

出典:スズキ 2024年3月期[2023年4月~2024年3月]第1四半期決算情報 2024年3月期第1四半期決算説明会

出典:スズキ 2024年3月期[2023年4月~2024年3月]第1四半期決算情報 2024年3月期第1四半期決算説明会

為替益の中身では欧州ユーロ、メキシコペソ、米ドル、ポンドと欧米がプラスとなる一方で主力市場であるインドはほぼ横ばい。昨年は為替益により大きなプラスが出ていましたが、円安の進展は止まっており、昨年比での為替益は大きくはない見込みです。(なお為替益でここまで詳しく書いてくれるのはスズキの決算資料だけ。素晴らしい。)

出典:スズキ 2024年3月期[2023年4月~2024年3月]第1四半期決算情報 2024年3月期第1四半期決算説明会

出典:スズキ 2024年3月期[2023年4月~2024年3月]第1四半期決算情報 2024年3月期第1四半期決算説明会

売上高を地域ごとに比較するとその他地域以外はプラス、特にアジアが大幅に増加。その中心はやはりインド。マルチスズキとしてインド国内で圧倒的シェア誇るスズキ。やはり業績を決めるはインドでの販売。また国内は高利益率のマリン事業を含むため、営業利益率は10%を超えています。

出典:スズキ 2024年3月期[2023年4月~2024年3月]第1四半期決算情報 2024年3月期第1四半期決算説明会

出典:スズキ 2024年3月期[2023年4月~2024年3月]第1四半期決算情報 2024年3月期第1四半期決算説明会

決算発表ではマルチスズキ単独での業績も説明。インド国内販売43.5万台、輸出6.3万台。営業利益率は7.3%と前年と比較してプラス。半導体供給問題が徐々に解消され、生産が回復する中でスズキの持つ「インドの強み」が如実に表れた業績に。

出典:スズキ 2024年3月期[2023年4月~2024年3月]第1四半期決算情報 2024年3月期第1四半期決算説明会

出典:スズキ 2024年3月期[2023年4月~2024年3月]第1四半期決算情報 2024年3月期第1四半期決算説明会

インドでの販売増、収益性向上に大きな効果をあげているのは現在売れ筋となっているSUVでのラインナップ強化。韓国メーカーが進出し、SUVを中心にシェアを伸ばしてきましたが、スズキも対抗するSUVを投入することでシェアを維持+SUV=高価格帯への移行が進み、売上高増につながっています。

出典:スズキ 2024年3月期[2023年4月~2024年3月]第1四半期決算情報 2024年3月期第1四半期決算説明会

出典:スズキ 2024年3月期[2023年4月~2024年3月]第1四半期決算情報 2024年3月期第1四半期決算説明会

またカーボンニュートラルへの取り組みとして電動車HEVに加え、圧縮天然ガス自動車(CNG自動車)での販売台数増加、シェア拡大を強調。日本ではあまり注目を浴びることのないCNGですが、ICEよりもCO2排出が少なく、内燃機関を活用できるパワートレイン。スズキは牛ふんを原料にバイオガス燃料を製造し、圧縮天然ガス(CNG)車で使用する計画も掲げています。世界各国の実情に合わせたカーボンニュートラルへむけ、非常に面白い取り組みの1つであると思います。(スズキらしい)

出典:スズキ 2024年3月期[2023年4月~2024年3月]第1四半期決算情報 2024年3月期第1四半期決算説明会

出典:スズキ 2024年3月期[2023年4月~2024年3月]第1四半期決算情報 2024年3月期第1四半期決算説明会

日本国内も生産回復はしているものの、依然半導体不足の影響はあり、フルMAXの生産には至らず。8月以降、部品供給不足が本格的に解消し、生産=販売が伸びる計画となっています。ただ「小さく」「少なく」「軽く」「短く」「美しく」、「小・少・軽・短・美」を社訓とするスズキでも日本国内はインフレ、原材料価格高騰、仕様/設備充実に合わせて新車価格をUPする予定。他社でも価格UPは行われており、今後新車価格は基本上がっていくものと考えるべきでしょう(クルマを買うなら早いうちがお買い得そうです)

出典:スズキ 2024年3月期[2023年4月~2024年3月]第1四半期決算情報 2024年3月期第1四半期決算説明会

出典:スズキ 2024年3月期[2023年4月~2024年3月]第1四半期決算情報 2024年3月期第1四半期決算説明会

スズキの今回の決算で文句のつけようのない内容ですが、強いてケチをつけるのであれば気になるのは「パキスタンでの生産/販売、落ち込み」。前期4.1万台→今期0.7万台と大幅な減少。パキスタンでは「新型コロナ禍」後の旺盛な内需に原油や食料の国際価格高騰により輸入急増→貿易赤字が過去最高→経常収支悪化→為替レート下落→貿易収支の改善のため、2022年5月より自動車(部品を含む)輸入禁止。結果、スズキは販売/生産ができなくなり、台数は大きく落ち込んでいます。直近23年7月に輸入禁止は解除されたものの、外貨の準備高は低い水準であり、以前の様に自動車部品を輸入し、ノックダウンで生産するのが難しい状況は続く見込みです。

なお、他社が米中でのBEVシフト加速による影響を大きく受ける中で、米中での販売がほとんどないスズキは業績への影響が極めて軽微。米中の動向1つで業績が左右される他社に比べ、これから成長するインド(BEVシフトは政府が方針として掲げるものの、今のところは明確にはなっておらず、遅れ気味で他社進出も少ない)での高いシェアを持つスズキの経営は盤石の安定性が感じられます(地場メーカーや韓国メーカーとのシェア争いは激化していますが)。

出典:スズキ 2024年3月期[2023年4月~2024年3月]第1四半期決算情報 2024年3月期第1四半期決算説明会

出典:スズキ 2024年3月期[2023年4月~2024年3月]第1四半期決算情報 2024年3月期第1四半期決算説明会

そしてスズキの強みは自動車以外の事業、2輪、マリンでも利益が上がっている点。特にマリンは23年期以降300億円以上の売り上げを維持し、営業利益率は驚異の27.6%。今期の営業利益998億円のうち165億円=17%を自動車以外の事業で稼いでいます。多角化した事業はスズキの強みの1つです。

いや本当に隙のない好決算。他社と比べても一線を画した、スズキの強さが現れた好業績になっています。

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