【60秒でわかる解説付】戦略が見事にはまった!あまりにも『できすぎ』な日本自動車メーカー24年3月期決算総まとめ

24年3月期の自動車メーカー決算が出そろいました。各社で過去最高更新続出。その好調の要因と陰に潜む不安要素を解説します。
カッパッパ 2024.06.03
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日本自動車メーカー、過去最高の業績!こう言い切っても過言ではないほど好調であった24年3月期決算。トヨタは売上高45兆、営業利益5兆の文字どおり「桁違い」の業績を上げ、6/7社が過去最高の売上を更新するほど、好調でした。業績好調には一体どんな背景があるのか。そして不安要素はないのか。詳細に解説します

日本自動車メーカー、過去最高の24年3月期決算

日本自動車メーカー、24年3月期の業績は7社中6社が売上高、4社が営業利益において過去最高更新するこれまでに類を見ないほど好調な決算内容となりました。 

世界でもTOP自動車メーカーであるトヨタは単年で売上高45兆953億円(前期比+7兆9410億円,+21%)、営業利益5兆3,529億円(前期比+2兆6,279億円,+96%)、営業利益率は圧巻の11.9%と量、質共に世界の自動車メーカーと比較して頭一つ抜けた業績を成し遂げました。続くホンダも売上高20兆、営業利益は1兆円を超えました。他社、日産、スズキ、マツダ、SUBARU、三菱自動車も業績は極めて好調。日本自動車メーカー全体で過去最高を更新した「出来すぎ」と言えるほどの好決算となっています。

業績好調の要因①:半導体供給不足問題からの本格解消

業績が好調になった要因の1つ目は半導体供給不足の本格的な解消です。コロナ禍に端を発した(工場の火災などもありましたが…)自動車向け半導体供給不足問題は前期23年3月期までは自動車メーカーの生産/販売に大きな影響を与えました。

端的に言えば、「作りたいのに作れない」状況。需要>生産となる中で、作ればすぐに売れるのに、部品がなくて生産ができず、販売が伸び悩む状況にありました。各社が見込んでいたよりも半導体供給不足は長期化し、問題が解消された=「作りたい量だけ作れる」ようになったのは24年3月期から。生産が滞って、バックオーダーがたまっていたこともあり、24年3月期は大きく、生産/販売が伸びました。今回、売上高を更新した6社は全て前年から販売台数がプラスとなっています。

その一番の事例がSUBARU。前期では日本メーカーの中で最も半導体供給不足の影響を受け、販売台数も下方修正を繰り返していましたが、今期は生産が回復。それに伴い販売台数は97.8万台(前期比+12.4万台、+14.7%)まで伸びを見せ、業績が一気に伸長しました。

業績好調の要因②:値上げ+高価格帯へのシフト

営業利益率が大きく改善している要因は、販売価格の改定=値上げと高価格帯の販売比率が増えたことにあります。これまで自動車メーカーは既存モデルであれば、期中で価格を値上げすることは稀、改定する場合はモデルチェンジをする時に実施されることが多くなっていました。しかしながら原材料高騰/インフレが進むことによる製造原価UP、また半導体供給不足で需要>生産となり、価格の決定権が自動車メーカー側に移る中で、価格の改定=値上げを実施。値上げをしても販売が落ち込むことはなく、好調を維持したため、営業利益は大きく上がりました。

また高価格帯へのシフトが進んだことも営業利益率上昇の大きな要因。一般的に価格の安い大衆車は利益が出づらく、営業利益は低め。そのため、自動車メーカーは高価格帯もしくは高Grの比率を増やし、1台当たりの利益を高める戦略を進めてきました。

効果が最も表れているのがマツダ。19年度では販売台数156万台に対し、売上高は3兆4303億円。今期23年度では販売台数は124万台と▲32万台減っているものの、売上高は4兆8277億円と1兆3974億円も増えています。これは「ラージ商品群」に代表される高ブランド化を進めてきたことで、1台当たりの売上が増えたことが大きく寄与しています。

また日本メーカーが得意とするHEV、ハイブリッド車の販売好調なことも業績を押し上げています。ハイブリッド車はガソリン車よりも販売価格が高く、売上高が伸びる+長年の技術の積み重ねによってガソリン車と同等の利益を出せる原価改善が進んでおり、日本自動車メーカーの収益の柱となっています。BEVはどうしても電池コストが高く、割高な価格設定+充電環境が未整備で不便な点が多い+自動車メーカーにとっても採算が悪い中で、比較的手ごろな値段で燃費が良く、燃料費を抑えられる./環境にも優しい/利便性に優れるハイブリッド車の人気が高まっています。ハイブリッドでは日本自動車メーカーは世界各社に比べ、技術優位性があり、競争力が高く、今後数年、利益の源泉として大きく経営に貢献していくことでしょう。

業績好調の要因➂:北米での大幅な販売の伸び

これだけ稼げるようになった日本自動車メーカーは今どの地域で稼いでいるのか。答えはアメリカです。堅調な需要と円安、インフレに伴う価格改定=値上げの浸透で今、アメリカ市場は日本自動車メーカーにとってまさに「ドル箱」市場となっています。

24年3月期において一番業績が伸びたのはホンダ。前期は四輪事業は赤字でしたが、24年3月期は営業利益率4.1%まで回復。その大きな要因は北米での販売増加。販売台数162.8万台、前期比+43.3万台、36.2%増。北米は1台当たりの販売価格も高く、その中でも高単価のハイブリッドが好調であったことが四輪事業の採算改善につながりました。同様にSUBARUやマツダも北米向けの輸出が伸びた結果、好業績となっています。

なお、トヨタはここまで挙げた「半導体供給不足問題からの本格解消」「値上げ+高価格帯へのシフト」「北米での大幅な販売の伸び」、この全てを統合的に成し遂げた結果、営業利益5兆円超え、営業利益率11.9%という異次元とも言える業績を達成しました。

ハイブリッドに代表される日本自動車メーカーの積み重ねが花を開き、戦略ががっつりはまった24年3月期。過去最高を更新尽くめの「出来すぎ」な1年となりました。

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