好調の中でも実は大きな差が?!日本自動車メーカー7社2023年3月期決算横並び比較

5月に発表された日本自動車メーカー各社の決算。全社が増収、黒字と全体的に好調な内容でしたが、その中身を比較すると実は大きな差が。決算を横並びで比較することで各社の特徴及び現状を解説します。
カッパッパ 2023.05.29
誰でも

ご安全に!

そろそろクーラーをかけ始めようか考え中、カッパッパです。早く会社でもクーラーが入ってほしいのですが、なかなか入らない。汗かきなので早く入れてほしい。

2023年度3月期、自動車メーカー各社の決算が出そろいました。全社が増収、過去最高を記録する企業もあり、全体の傾向として好調。ただ各社を横並びで比較すると、それぞれの特徴が表れ、現状も実際は差があることが見えてきました。

今回のニュースレターでは自動車メーカー23年3月期決算全体の総括及び、比較で見えてくる各社の「イマ」を解説します。個別の比較では見えてこない様々な側面が見えてくる非常に興味深い内容に。これからの自動車業界を考える上で極めて役立つ記事です!(自画自賛)

売上高、営業利益は絶好調!ただ前年+他社と比較すると…

自動車メーカー各社の2022年3月期と23年3月期をまとめた表がこちら。全7社が増収、うちトヨタ、ホンダ、マツダ、スズキ、SUBARUの5社が過去最高の売上高を記録営業利益では三菱自動車が過去最高を更新、自動車メーカー全体としては好決算。ただし、トヨタとホンダは減益となり、前年よりも営業収益が下がっています。

全体ではなく、自動車事業としての業績を比較した表がこちら(ホンダ、スズキは2輪他、SUBARUは航空機事業を抜いた業績。ホンダは金融事業はほぼ自動車なので含める)

自動車事業横並びで比較すると分かるのは好決算の中でも営業収益の高い企業と低い企業に分かれる点。トヨタ、スズキ、SUBARU、三菱自動車の4社が営業収益率7.0%前後なのに対し、マツダ3.7%、日産3.6%、ホンダが2.4%となっています。また前年との伸び率を見ると、各社に差がみられます。なぜこのような結果になったのか。2023年度3月期、自動車メーカーの業績に影響を与えた4つのポイントで解説します。

販売台数は一概に回復しているわけじゃない

まず一つ目の要因は販売台数。販売台数が増えれば、売上高が増えるのはもちろんのこと、1台当たりの固定費も低下するため、業績へ大きく影響します。

前期22年3月期と比較した場合、最も増えているのはSUBARU(16.1%)、マツダ(14.6%)、スズキ(10.1%)が続きます。コロナ禍以降(2020年3月期以降)半導体供給不足により生産が制限される状況が続き、前年22年3月期が大きく下がっているメーカーは前期比増となる…ので一概にいうことはできませんが、この3社は23年3月期大きく販売台数を伸ばし、業績へプラス要因に。トヨタは前年比でほぼ横ばいで変化なし。ホンダ(▲9.5%)、マツダ(▲11.3%)、三菱自動車(▲11.0%)、日産(▲14.7%)は販売台数減なっており業績へマイナス要因に。この4社に関しては中国、北米、欧州で販売が落ち込みが、前期比大幅減となっています。実はトヨタも中国では販売を落としてはいるのですが、その落ち込み幅が他社よりも低いのと、ASEANを中心とした新興国での成長があり、トータルではほぼイコールとなっています。また三菱自動車は販売台数を大きく減らしているのですが、主要市場であるASEAN、日本では販売台数を伸ばしており、この点が好業績につながっています。

販売台数に関しては23年3月期は依然半導体供給不足の影響があり、コロナ禍前の2019年3月期までは回復していません。選択と集中、構造改革を進め、量よりも質を重視する戦略を進めるメーカー(ホンダ、日産、三菱自動車、マツダ)は大きく販売台数が下がっています。

売価UPも各社様々

もう一つ、業績に大きな影響を与えるのは1台当たりの販売価格=売価です。売価が高くなれば、その分売上高も増えます。1台当たりの売価を上げるためには車両価格の値上げや高価格帯の車種/高グレードの販売を伸ばすといった手段があります。

直近では自動車メーカーでも値上げが進んでおり、1台当たりの売価は大きく上がっています。自動車事業の売上高/販売台数から計算した1台当たりの売価結果が上記の表。すごく単純な計算で、決算の基準で売上高の計算が異なり、連結対象の業績も含むので、実際の車両販売価格とはかなり異なるのですが、各社の特徴や前期との比較するためには役立つ指標かと。(各社間の比較はあまり意味がなさそう)

比較してわかるのは日産が前期比で価格を伸ばしている点。この点は日産の決算資料の中でも強調されており、日産業績回復の大きな要因となっています。日産に続いて売価を伸ばしているがマツダ、三菱自動車、ホンダ。トヨタ、SUBARU、スズキが続きます。

それにしても驚くのは会計基準やら連結対象の差がいろいろあるとはいえ、スズキの1台当たりの売価が他社と比較しても圧倒的に低い点。日本では軽自動車、海外では新興国中心なので低価格であることは理解できるのですが、それで高い営業利益率を成し遂げるスズキ、本当にすごい。

1台当たりの営業利益で比較すると、トヨタ、ホンダが前年比でマイナス。ホンダは営業利益率が前年比でマイナスとなっており、ちょっと心配。そして、実は1台当たりの営業利益がTOPなのはSUBARU。北米向けが多く円安が大きく寄与していると考えられます。

「為替益」追い風の強さは実は様々

そして今期の決算で大きな追い風となっているのは「為替益」。前期は1$=112円ほどだったのに対し、今期は1$=135円。23円、率に換算すると20%ほどの円安となっており、輸出が多い日本自動車メーカーにとっては大きなプラス要因。

ただ各社で比較すると為替差による営業利益への影響は大きく異なります。営業利益に対して前年との為替益の比率を見ると、マツダ(83.9%)、SUBARU(77.4%)が大きくなっています。この2社は国内生産→輸出(主に北米向け)の割合が高く、円安、ドル高の為替益の恩恵を受けやすい生産/販売体制になっているためです。現地生産割合の高いホンダや日産は為替益の恩恵が少なめ。

為替益の状況を比較すると、各社のグローバルでの生産/販売体制の戦略の違いが見て取れてなかなか興味深いです。

ダメージの差が大きい「原材料/物流費高騰」

今期の業績で各社大きなマイナス要因となっているのは「原材料/物流費の高騰」。各社の前年との営業利益増減から「原材料/物流費の高騰」に該当する部分を抜き出し、比較しました。(各社によって指標が違うので同水準でないことには注意が必要)

なぜか圧倒的に影響が少ないのはホンダで274億円、売上高に占める割合は0.2%しかありません。なぜこんなにも影響が少ないのか、よくわからなかったのですが、池田直渡さんのホンダ決算解説記事に回答が

 左から3番目、「売価/コスト影響」ではマイナス274億円。原材料価格はここに入ってくるはずなのだが、この影響の小ささは当該期の自動車メーカーでは異例のことである(日産自動車は「原材料」マイナス502億円、SUBARUは「原価影響」「原材料・市況等」日本マイナス894億円、SIAマイナス357億円、などなど)。ホンダに理由を問い合わせたところ、商品価値に見合う値付けの効果により相殺している、との回答である。だとすれば、かなりのファインプレーと言えるだろう。

「商品価値に見合う値付け」に関しては他社では売価改善などに織り込まれているので、横並びでの比較はできなさそうですが、なんにせよ原材料高騰影響が少ないのは池田さんの言われる通り「ファインプレー」だと思います。

またマツダ、SUBARUは原材料/物流費の高騰影響が大きくなっています。これも池田さんのマツダ決算記事に要因の答えが

 ところが次の「原材料・物流費等」では、そのボーナスを全部吹き飛ばす大幅なマイナス。原材料の値上がりは他社と同等だったと思われるが、マツダが泣いたのは物流費。自動車輸送船が不足して調達コストが高騰した。それだけエクストラを払ってさえ、船不足に苦しんだ。という話は広島でG7サミットの取材の最中に丸本明社長に直接聞いた。

北米向けの輸出が多い2社は他社同様の原材料高騰に加え、運搬する船のコストが大きく向上していることが主要因。また北米ではインフレも進んでおり、北米生産を行うメーカーはその影響を大きく受け、原材料価格が上がっていると考えられます。(トヨタ、北米での採算が大きく悪化しているのは北米での原材料価格と人件費の高騰が主な要因だと思われます)

マツダは前期比では1台当たりの売価UPが他社と比べて低く、原材料価格高騰のマイナス要因も非常に大きいため、営業利益がそんなに伸びていないことが分かりますね…今期がラージ商品群が本格化する今期が本当に勝負どころですね。。。

***

全社横並びで比較すると、個別の決算分析では見えてこなかった各社の特徴が表れ、業績の差が出る要因も明らかになりました。今回自分で分析していてもなかなか面白く、各社の戦略を読み解くうえでも非常に役立つ内容だと思います(自画自賛)。

次回はサポートメンバーの方に向け、2024年3月期の見通しを横並びで比較記事を発信各社が非常に強気の計画を打ち出す中でどんな特徴があるのか。次回も非常に充実した内容になっておりますので乞うご期待!

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