【イチから分かる電動化➂】海外メーカーの最新電動化戦略①

4月のニュースレターでは複数回にわたり、CASEの「E」、電動化を解説します。第3回は「海外メーカーの最新電動化戦略①」EVシフトが加速し次々と更新されていく電動化計画。2022年4月時点での海外メーカーの最新情報をお伝えします。
カッパッパ 2022.04.17
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時間が経てばたつほど加速していくEVシフト。特に海外メーカーでは開発、販売をEVへ移行させることが鮮明になり、各社大々的に戦略を打ち出しています。

ただ次々と更新されすぎて、どこがどんな戦略をとっていたのかわからない。傘下のブランドごとでの戦略が打ち出されて、どのメーカーの話だったっけと混乱することも。

今回の記事では2022年4月時点での海外メーカー、最新電動化計画をまとめました。他のどのサイト、ニュースよりもまとまっている非常に役立つ内容。(全体の情報を集めるだけで丸三日かかりました)今回は第1弾として「VW」「ルノー」「ステランティス」

これさえ読めば、海外メーカーの電動化戦略はばっちり。項目もそろえて横並びで比較できるので会社ごとの特徴もつかめます。

EVがこれから普及する、そしてどんなメーカーが販売を伸ばしていくのかは各社の戦略次第。この記事を読んで、2030年果たしてどんな市場になるのか、みなさんもぜひ考えてみてください。

◆電動化戦略のポイント

今回、各社の電動化戦略を7点のポイントから解説します。

  • 電動化計画=BEV販売計画 (基本的に2030年基準)

  • BEV販売車種予定 = 投入するBEVモデル数

  • 代表車種 = 現時点でのBEV代表車種

  • プラットフォーム = BEVで使用されるプラットフォーム名

  • 投資 = BEVへの投資計画

  • 他社との連携 

  • カーボンニュートラル = CO2排出をゼロにする年

この7点さえ抑えれば、電動化戦略の分析は大丈夫。4.プラットフォームはBEVでは開発費用が多額になるため、各社でプラットフォーム=車体の共通化を推し進めており、各社の特徴が非常によく表れていたため、今回採用することにしました。

今回は海外メーカー第1弾として、既存の大手5社、「VW (Audi)」「ルノー」「ステランティス」「BMW」「メルセデスベンツ」について解説します。

各社を表にまとめると↓に( 保存→拡大がおすすめ)

1.VW

TOPバッターはVW。グローバル販売台数TOPをトヨタと争い続ける欧州メーカーの代表格。そして既存大手メーカーの中で最もEVシフトを推し進めている会社です。

電動化計画はBEVの販売比率を~2026年までにを25%,2030年には欧州70%,米国55%,中国50%とする計画。年間の販売台数がおおよそ1000万台なので、台数換算すると26年250万台、30年600万台強がBEVに。テスラ(2030年2000万台目標)を除けば、2030年段階で世界で一番BEVを販売する計画です。VWは傘下に多数のブランドがあり、それぞれで電動化戦略はことなっています。「Audi」では2026年~新車BEV100%、~2033年までに内燃機関車を原則終了、他社と比較してもかなり前倒しのEVシフト。

30年段階で日本のトヨタのBEV350万台と比較すると台数の差はかなり大きいです。これはVWの主要市場がBEV普及が進んでいる欧州、中国であるためです。ただBEV一辺倒を思われがちですが、実は30年段階では400万台は内燃機関車を販売する計画になっている、またVW全体での内燃機関車の販売終了時期は正式に発表していない点に注意が必要です。 

2030年までに70モデルのBEVを販売予定(Audiは25年までに20以上モデルを投入)。代表的な車種は「ID」シリーズ。2021年では約26万3000台を売り上げています。

『ID.4』日本でも2022年に販売予定

『ID.4』日本でも2022年に販売予定

VWではBEV用のプラットフォームとして「MEB」を開発。上記の「ID」シリーズやAudi「Q4 e-tron」に採用されています。バッテリーを床下に敷き詰め、モーターやコントロールユニットなどを前後に押しやることで、高効率なパッケージ車体に。MEBではホイールベースを変化させることが可能で、コンパクトカーから商用車まで幅広い車種に展開される予定です。

それ以外に高級車向けのプラットフォームとして「PPE」も導入。さらにはこれら二つを統合したプラットフォーム「SSP」を採用した車種を2026年から販売予定。VWは共通プラットフォームにかなり力を入れているメーカーです。

VWのBEV戦略で何よりも特徴的なのは投資額の大きさです。BEVへの投資額~26年520億ユーロ(7兆600億円)、単純計算で1年で1兆3000億円弱。発表されている中では既存メーカーの中で断トツTOP。ルノーと比較すれば、約2倍の投資計画になっています。研究開発費ももちろんですが、BEVに合わせ、既存工場刷新/新工場も建設予定。主要工場のウォルフスブルクでは23年からEV「ID.3」を部分的に生産開始、26年までに敷地外に最新鋭の工場を新設。30年までには追加で敷地内にさらに新しいEV工場を建設予定。非常に大胆な投資計画となっています。

他社との連携では、プラットフォーム「MEB」をFordへ外販。欧州向けに採用され、6年間で120万台を提供予定。自社だけでなく、他社にもプラットフォームを販売することで売り上げを伸ばそうとしています。

カーボンニュートラル、排出ゼロの目標は2050年。2030年での中間目標は2018年比で40%削減。自社工場の電力の再エネ化と同時にサプライヤーにも導入を進め、自動車製造に関わるCO2排出を大きく減らしていく計画。

世界TOPメーカーで最もEVシフトに力を入れているVW。気になるのはEVシフトに伴い、「高級車に専念 モデル数削減へ」戦略を明らかにした点。

「内燃エンジン車のモデルを廃止し、販売台数全体を減らしていくと発言、利益率の高い高級車に専念する方針」

確かにBEVはコストが高く、利益が出にくいため、大衆車ではなく高級車での販売比率を上げるが一番企業の戦略としては正しいのかもしれません。ただフォルクスワーゲン=大衆車の名を持つメーカーが一般向けの販売を見直していくことは、消費者の選択肢の幅が狭まる、雇用や部品メーカーにも大きな影響あります。今後具体的にどのような販売戦略を打ち出していくのか非常に注目です。

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