【勝負は3年後!】トヨタ新戦略をどこより詳しく徹底解説

4/7に発表されたトヨタ新体制での戦略発表。創業家の豊田章男氏から社長が佐藤恒治氏に交代。世界販売台数、TOPを維持する一方でBEVへの移行遅れが指摘される中、トヨタは今後どんな戦略を取っていくのか。どこよりも詳しく解説します。
カッパッパ 2023.04.10
誰でも

ご安全に!

GWの長期連休が視野に入ってきたカッパッパです。今年はようやくコロナ関係なくいろんなところに行けそう。ただその分込み合いそうなので、結局は家or実家でゆっくり過ごす予定です。ニュースレターも書いていけたらいいな。

4/7に発表されたトヨタ新体制戦略。この4月から「カリスマ」であった創業家の豊田章男氏から社長が佐藤恒治氏に交代。トヨタGr世界販売台数は1000万台を超え、断トツのTOP。ただ、世界各地域でEVシフトが加速する中、トヨタのBEV販売比率は低く、EVへの移行遅れが指摘されています。

果たしてトヨタは激動の2020年代自動車業界で、どんな戦略をとるのか。今回の新戦略で明らかになったのはやはり「王道」の戦略。十分なリソースを持つ、クルマ屋のトヨタだからこそできる、そしてクルマ屋からモビリティカンパニーに進化するための戦略でした。

新聞などの記事を見ると、「2026年BEV150万台」ばかりが強調されて他の部分への言及が手薄…そこで今回のニュースレターでは、会見の内容を質疑応答を含めてどこよりも詳しく解説します。過去の経緯を踏まえながら、トヨタがこれから目指す姿を明らかに。キーワードは「クルマ屋が作るBEV」「ソフト+ハード」「クルマだけじゃないモビリティ」。これさえ読めばトヨタの戦略はばっちし。渾身のニュースレターです!

***

全方位は変わらない

 まず今回トヨタが示したのは「マルチパスウェイ」、これまでの「全方位戦略」は変えない、軸をぶらさないことでした。海外の既存メーカーがBEVに傾いた戦略を出す中でトヨタは様々な動力源でクルマを作っていくことを明確化。BEVはもちろん、技術力に優れるHEV、PHEV、水素やCN燃料で走るクルマの開発に取り組んでいくことを改めて提示。

各動力源の開発をするためにはその分多額の投資、リソースが必要となります。販売台数、売上高世界TOP、自動車完成車メーカーの中でも高い利益率を誇るトヨタだからこそできる「全方位戦略」。他社が次世代自動車の主流とされるBEVに投資を集中させる中で、リスクを考えた上で、幅広い対応が取れるよう選択肢を多様に持つ戦略は現在覇権を取っているトヨタ「王道」の強さを感じます。

「敵は炭素」とトヨタが強調するように、大切なことはカーボンニュートラル、二酸化炭素の排出をいかに減らしていくか。全てがBEVやCN燃料を用いたクルマに、そして電力が再エネに変わり、排出ゼロが一番ですが、技術的課題も多く、コストも多大にかかります。将来を見据えながらも、今生きる人の移動する自由を阻害せずにカーボンニュートラルを実現していくことが重要。その中でトヨタの全方位、マルチパスウェイ戦略が実現可能性の高い、現実的な戦略であると言えるでしょう。

このマルチパスウェイに関しては今週、自工会が発表した「2050年カーボンニュートラル達成に向け各国自動車工業会と方向性」でも明確に示されました。

世界中の自動車メーカーにとって、道路交通の脱炭素化は共通の目標であり、その実現に向けた取り組みが行われています。しかしながら、OICAのフレームワークが強調するように、すべての国にとって2050年までのカーボンニュートラルに向けた実用的で持続可能な道筋を提供するためには、多様、かつ技術にとらわれないアプローチによる柔軟性が必要です。そして、カーボンニュートラルを実現するには、新車だけでなく使用中の自動車からもCO2排出を削減する施策を追求しなければなりません。そのためには、ゼロエミッション車両(電気自動車(EV/BEV)および燃料電池車(FCV/FCEV)等)のように、直接排出されるCO2をゼロにする技術や、カーボンニュートラル燃料に代表されるCO2排出をオフセットするエネルギーを用いる内燃機関車両等、さまざまな技術を進歩させることが重要です。

欧州でも2035年内燃機関車販売禁止に対し、CN燃料に関しては内燃機関車を認めるという方向に変わったように、世界でもBEV一辺倒が変わりつつあります。その中で全方位戦略はどう転んでも対応ができる、変動の大きい時代に適した戦略と言えます。

クルマ屋が創るBEV

そして皆さんお待ちかね、トヨタのBEV戦略。今回掲げられたのは2026年10モデルの新車種を投入し、150万台のラインナップ拡充。これまでは2030年30車種、350万台であったので、中間地点として新たに目標が設定されました。2022年のトヨタBEV販売台数は2.6万台とごく少数。3年間でほぼ150万台を一気に増やすかなり高い目標です。

10モデル一体どんな車種が投入されるのか。後半の地域別BEVの取り組みでその一部が明らかに。まずは現在販売されているbZシリーズのラインナップ拡大(中国では直近BYDとの共同開発車両bZ3が販売開始されました)。米国では3列SUVでのBEV、新興国ではピックアップトラック(タイではハイラックスBEVが発表済)、小型車の投入が発表。2026年まで3年なので単純に考えると3車種/年ずつラインナップが増える計算です。

そしてトヨタが投入するのは「クルマ屋が作るBEV」。「クルマ屋」はテスラや中国新興メーカーのBEVに対しての違いを強調するためのワードであると思います。これまでに培ってきた自動車生産の技術力を活かしたBEV。内燃機関は搭載されないものの、共通の部品は多く、その技術力がムダになるわけではありません。

従来とは全く異なる26年に投入される「次世代BEV」では、電池を極限まで効率良く使い、航続距離は2倍に。走りの性能も高め、心揺さぶる走りとデザインを兼ね備えたモデルになると発表。既存の技術リソースを活かしながら、作るトヨタの「クルマ屋」だからできるBEV。スペックを聞く限り、非常に魅力的なクルマになることは間違いなく、150万台販売達成のために重要な役割を担うでしょう。

BEVだけじゃない

今回BEVと合わせて発表されたのがPHEVとFCEV戦略

PHEVを「プラクティカルなBEV」と位置づけ。電池効率を上げ、EV航続距離を200km以上に伸ばす目標が発表されました。こちらも実はなかなかすごい内容。直近販売が開始されたプリウスPHEVは航続距離が105Km(WLTCモード)なので約2倍。単純に電池の搭載容量を上げるわけではなく。効率を上げることで200Kmを実現するとなるとかなりの技術革新があるはず。

この200Kmが達成されると環境規制の厳しいアメリカ、カリフォルニア州のZEV規制でもZEVとして織り込むことが出来ます(ただし上限20%まで)。欧州でのCO2排出規制含め、環境規制クリアのためにPHEVの拡充と航続距離の拡大は欠かすことのできない重要なポイントです。

また水素を燃料としたFCEVでは商用車を軸に量産化を進めることが発表。積載効率や充填時間を考えた場合、水素は大型車に向いている特徴があります。水素は燃料の価格や充填設備の高コストが課題となりますが、カーボンニュートラルには欠かすことのできない技術の1つ。タイでの水素活用についても直近大きく発表されており、日本だけでなく海外を含めたFCEV商用車の拡大が進んでいきそうです。

組織/つくり方も変える

変わるのは販売車種だけではありません。BEVでは現在とは異なった作り方へ変更。まず専任の組織を立ち上げ(質疑応答では5月スタートで実務ベースではすでに開始済みとのこと)決断のスピードをUP。トヨタはこれまでカンパニー制を導入し、車両開発スピードを速めてきた実績があります。激動の時代の中で求められるのは決断の速さ。どうしても大企業であるだけにこれまでのしがらみもあって、テスラや中国新興EVメーカーと比較すれば、スピードが劣りがち。より現状/変化への対応に即した組織改革を進めることで魅力の高いBEV開発/生産を実現していく計画となっています。

組織を変える、そしてTNGAを活用することで開発にかかるリソースも削減。原単位/内政投資を▲50%。これが実現できるのであれば、研究開発費/設備投資費の大幅な削減となり、莫大に増えるCASE対応費用が減り、業績への影響は非常に大きくなるでしょう。

また生産体制も大幅に見直し。工程を1/2にし、ラインの自働化、省人化を進め、人員不足へも対応。BEVでは主要部品電池を中心に地産地消でのサプライチェーンが求められますが、地域ごとに検証し、グローバルで最適化。米中を始めたとしたブロック経済化が進む中で、新たなサプライヤー含め、内燃機関車とは異なるサプライチェーンを構築し、良品廉価、クルマ屋だからできる高性能で価格の抑えたBEVの生産を目指しています。

ソフトとハードで変えていく

クルマにおいて強調されたのは電動化と共に「ソフトウェア」でした。これまでクルマはハード中心。こうした中でテスラを中心としてソフトウェアはファーストのクルマが発売され、従来とは異なるUXで人気を博しています。(質疑応答の中でもソフトウェア部分でとトヨタが遅れているのではという指摘もありました)

現在トヨタでは車載OS「arene」の開発が進められており、車におけるソフトウェアでの重要性を強調。安全機能やマルチメディアを最新にアップデートできる機能を搭載(OTAですね)。さらに次世代BEVでは「乗り味」のカスタマイズが可能になることも発表されました。ソフトウェアによって個人に合わせた車両の「乗り味」になるは画期的だと思います。

そしてアップデートされるのはソフトウェアだけではありません。既にトヨタで一部始まっていますが、ハードについてもアップデート、更新できるように。販売店を構築しているトヨタだからの強みを活かし、売ったら終わりではなく、購入した後も車両がアップデートしていくクルマ作り。この点は「クルマ屋」だからこそできる戦略です。

激動の時代の儲け方と地域戦略

さてこうした変化を迎える中でいかに収益を確保していくかが重要な課題。BEVでは主要部品の電池コストが高く、高価格になり、かつ内燃機関車と比較すると利益がでづらい構成になっています。そんな中でトヨタは技術力に強味を持つHEVで収益を確保していく計画。初代プリウスから始まったHEVは原価が大幅に減少。かつて2台目までプリウスは売っても赤字車種と言われていましたが。今では原価は1/6。台当たりの利益もガソリン車を超えています。BEVに注目が集まっているため、あまり言及されていませんが、HEVも年々その比率を伸ばしています。TPS,得意の原価低減と合わせ、収益性の高いHEVを含む内燃機関車で収益を得て、BEVシフトへの投資資本を確保

地域ごとの販売戦略ではグローバルで電動化の進展速度が異なる中で地域に合わせた電動車、車種を投入。日本ではコンパクトカー、ミニバン。北米では大型車やピックアップトラックなど、多様なラインナップを準備。

特に新興国ではBEVシフトが遅れると想定されることからHEVを中心とした内燃機関車を投入し、利益を積み上げていく計画です。

現在1000万台を新興国での自動車市場拡大に合わせ、さらに成長へ。

トヨタは他社比較し、高い営業利益を維持しています。今後、「トヨタだからこその稼ぐ力」で未来への投資を行いながらもより高い収益性へ、基盤強化する計画になっています。

クルマだけじゃない

今回の新体制での発表はクルマ以外の部分での発表が多い、時間が割かれていることが特徴でした。トヨタは「モビリティカンパニー」になることを掲げています。単にクルマを作るだけではなく、クルマを活用したサービスや技術を活かして他事業へも進出。

タイでのモビリティ/データ/エネルギーソリューションへの取り組みやウーブンシティでの実証実験。これらを繰り返しながら、トヨタは移動手段を中心としたサービス、社会問題の解決を目指しています。質疑応答部分に合った工業団地でのカーボンニュートラルソリューション、通勤者が希望する時間を入力するとカーボンニュートラルのシャトルバスがやってくる、自動車通勤者の方はカーボンニュートラル車両を優遇することで普及を促す、一企業だけでなく工業団地全体の効率的なシステム運用の部分は今回の発表の中でも特に面白い部分でした。

自動車の生産/販売だけでなく移動手段、モビリティ全体を提供する企業へトヨタが変わろうとする意気込みが伝わってくる会見だったと思います。

「量産」のトヨタらしさ

最後にカッパがトヨタらしいと思った部分を紹介します。それは「量産」という言葉。質疑応答の中で新社長が強調された言葉です。多くの人に製品、サービスを届ける量産。トヨタは「幸せの量産」を掲げています。何かとカーボンニュートラル、BEVの遅れで批判されるトヨタですが、「幸せの量産」個人の移動の自由が減ってしまうのであれば、その移行に果たして意味はあるのか。トヨタは個人の移動の自由の拡大、カーボンニュートラルを測りにかけながら、どちらも実現できる現実的な解決策を目指しているとカッパは思います。

「量産」という言葉に現れるトヨタらしさ。賛否両論あるかと思いますが、これまでのトヨタと同じ「王道」の戦略を突き通していると感じました。

(あとこれまでの提携企業と「面着」で話してというところもトヨタっぽかった)

勝負が決まる2026年

トヨタが掲げた2026年150万台という目標は非常にハードルが高く、簡単に超えられるものではありません。単純に考えてこれから発売するBEVで150万台、全体の15%の台数を販売することは電池や組み立てラインを含めた生産体制の確立や消費者に実際に受け入れられるのか含め、不透明性は高いです。

bZ4Xが販売後、即リコール、長期間にわたり、生産が停止した「失敗」。「やってみないと分からない」会見の中でも言われた言葉で、EVの量産が容易ではないことは明らかです。ライバル、テスラは今年の販売台数目標は180万台、中国ではBYDが爆発的な成長を遂げる中で、26年150万台は少ないのではないかという意見もあります。

ただ、26年に150万台BEVが販売できれば、各国の環境規制はクリアが可能で、2030年350万台も達成ができるでしょう。結果がわかるのは3年後の2026年。果たしてトヨタは今回掲げた計画を達成できるのか。そして自動車以外でどのようなサービスを提供し、「モビリティカンパニー」になることが出来るのか。日本の自動車業界だけでなく経済も支えるトヨタだけに、業績、販売動向、新サービスにこれからも注目です。

自動車業界トレンドをチェック

・トヨタやテスラなど自動車メーカー最新情報
・CASEなどの業界トレンドを詳細に解説
・各自動車メーカーの戦略や決算分析
好調の中でも実は大きな差が?!日本自動車メーカー7社2023年3月期決...
誰でも
5分でわかるクルマニュース_モビイマ!5/22
読者限定
【徹底解説:自動車メーカー決算 スズキ】伸びしろが半端ない。2030年...
サポートメンバー
【徹底解説:自動車メーカー決算 マツダ】弾込め完了!ラージで描くブラン...
誰でも
【徹底解説:自動車メーカー決算 SUBARU】北米EVシフト加速で一気...
サポートメンバー
【徹底解説:自動車メーカー決算 日産】NISSAN NEXTが実を結ん...
読者限定
【徹底解説:自動車メーカー決算 ホンダ】目指せ営業利益1兆円!電動化の...
サポートメンバー
【自動車メーカー決算解説_トヨタ】時は来た!過去最高の販売台数とBEV...
誰でも