【ポストテスラ筆頭】EVベンチャー「リヴィアン」量産開始/【JITの終わり?】半導体供給問題で変わる自動車業界在庫の持ち方_モビイマ!【Vol.25】
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クルマのイマがわかる「モビイマ!」
( 2021年9月20日発行 )
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ご安全に!
月曜日は祝日で3連休…なんて関係のない自動車業界。
ダイヤがいつもと違った/通勤時に道がやたらすいていた/商社に電話したら休みだった/なんてことでようやく祝日であったことに気が付く。
ただ10月大減産の影響でトヨタは金曜日が大体お休み。あわせて休みを取りたい(有給推奨日になる)。ようやく東南アジアもひと段落してきたような気がするのですが、11月以降はどうなるのでしょう。できれば挽回してほしい。(来年のボーナスのために)
では「モビイマ!」Vol25スタートです。
【目次】
1. Weekly Mobility News
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【ポストテスラ筆頭】EVベンチャー「リヴィアン」ピックアップトラック「R1T」量産開始
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【ジャストインタイムの終わり?】半導体供給問題で変わる自動車業界在庫の持ち方
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今週のテスラ
2.モビカイブ
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行ってみようオンライン工場実習「ホンダ/クルマができるまで」
3.余談:ヘノヘノカッパッパ
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トライアンドエラーを短期間で繰り返す
【今週のクイズ】
アメリカでは非常に人気の高いピックアップトラック。日本では車体が大きく、実用的なシーンが少ないため、販売台数は多くありません。日本国内メーカーで唯一新車で買えるピックアップトラック、トヨタ「ハイラックス」。実は海外で生産後、輸入し日本で販売しています。一体どの国から輸入しているでしょう。
1. Weekly Mobility News

Weekly Mobility Newsでは、自動車業界1週間の注目ニュースや記事を紹介し、Twitterよりも深掘りした情報・視点を発信します。自動車業界の最新トレンドはこれさえ読めば大丈夫!
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【ポストテスラ筆頭】EVベンチャー「リヴィアン」ピックアップトラック「R1T」量産開始
イリノイ州の完成車工場でピックアップトラックのEV「R1T」の1号車を出荷した。同社は7月にテスト生産を開始し、今夏の量産化をめざしていた。R・J・スカリンジCEOはツイッターに「数カ月の生産準備を経て、顧客向けの最初の車両が今朝、生産ラインを離れた」と投稿した。
R1Tは韓国・サムスンSDI製の車載電池を採用し、フル充電で約500キロメートルを走行できる。同社は近く多目的スポーツ車(SUV)「R1S」の生産を始めるほか、米アマゾン・ドット・コムと共同で商用EVの開発を進めている。

アメリカ新興EVメーカー「リヴィアン」、量産としてピックアップトラック「R1T」を生産、9/14に出荷を開始しました。(業界用語ではSOP:Start of Production/LO:Line Off)実はEVベンチャー、アメリカで多数立上っているのですが、量産としてEV生産開始するのはテスラに次いで2社目。テスラ後、量産までこぎ着けた会社はいなかったのです。
今回出荷開始されたのはピックアップトラック。日本では馴染みが薄いですが、アメリカでは1番人気のカテゴリー。(アメリカの自動車販売台数TOPはFord「F-150 」が28年連続不動の1位というくらいにのピックアップトラックが強い。)EVピックアップトラックではテスラが「サイバートラック」、Fordが「F-150 ライトニング」を発表しています。人気かつ利益率の高いカテゴリーなのでEVでも今後各社が投入し、競争が激化していくでしょう。ただ、今回先駆けて販売するリヴィアン。デザインもオーソドックスなピックアップトラック+未来感があり、また航続距離もなかなか優秀。なお、お値段は$67,500(約740万~)とお高めです。
すでに多くの受注を抱えており、生産が順調にいけばその分販売は伸びる見込み。量産初期はライントラブルが多く、生産出来高が上がらないため、そのトラブルをいかに乗り越えられるかが今後のカギになるでしょう。テスラも量産初期は非常に生産に苦しみ、自動化していたラインを一部断念し、人手による生産に変更したり、ラインを増設して対応するなど数々の苦難がありました。製造ラインで組み立て、品質を安定させ、必要数量を生産する。メーカーとして当たり前のことですが、自動車生産、それも新興メーカーとなるとなかなか難しい(既存メーカーでも新規立ち上げ時はトラブルが頻発する)。そして量産を利益が出る段階までもっていく。現在EV新興メーカーの中で、量産後利益を上げることが出来ているのは実質テスラだけ。今回のリヴィアンがそこまでたどり着けるのか。
リヴィアンですが、この他にもSUV「R1S」やAmazon向けの電動トラック(受注10万台)の立ち上げが控えています。また第2の組み立て工場建設のために資金調達を完了する、新規株式公開(IPO)を申請し、時価総額8.8兆円目指すなどテスラ以上に勢いがあります。
新興EV、次々と立ち上がるのですが、生き残れるのは数社だけだと考えていて、そのうちの1社がリヴィアン。今後、自動車業界に新たな風を吹き込む企業となりそうです。
ちなみにこれまでのニュースレターでもリヴィアンは何回か紹介しています。
この料理用具のついたオプション設定は自動車業界で働いている身としてはにはすごく気になる。品番どうやってつけるのでしょう。
【ジャストインタイムの終わり?】半導体供給問題で変わる自動車業界在庫の持ち方
自動車メーカーの間で、できるだけ部品の在庫を持たない効率重視の調達戦略を見直す動きが広がってきた。トヨタ自動車や日産自動車、スズキは半導体の在庫を積み増す。
9/17付けの日経新聞1面を飾ったこのニュース。今年に入り、相次ぐ部品供給問題で多大な影響を受けてきた自動車業界。これまで自動車業界の代名詞であった「ジャストインタイム」極力在庫を抑え、効率的な経営を重視する考えから安定供給を優先し、在庫を積みます方向へシフト、戦略を変更へ。
今回、半導体供給問題の発端は受注が一時的に減ったために、在庫調整を含め、部品メーカーから上工程の半導体メーカーへ発注を減らしたことにあるとされています。確かに引き取れない部品を発注しても、在庫が積み上がり、置き場、経営を圧迫するだけ…これまで完成車メーカー及び連なる部品メーカー(欧州などのメガサプライヤー含む)は発注を抑え、「必要な時に必要なものを必要な数量だけ納める」ジャストインタイムを基本戦略として、在庫をコントロールしてきました。(そんなの完成車メーカーだけで部品メーカーに貯めておったわいというツッコミはいったん棚上げ)
従来であれば部品供給網でなにかトラブルが起きても、裾野が広く、経済への影響が大きい=産業界でも存在感が強い自動車業界は、優先的に対処される。そして日本であれば、完成車メーカーが現場まで駆けつけてトラブル解決まで支援するといった取り組みも行われ(東日本大震災や直近のルネサス火災など)、部品調達が途切れることはほとんどありませんでした。
ただ現状は全く異なります。半導体供給問題は前工程の海外ファウンドリーの生産能力が問題であり、日本以外のために直接的に大きな力をかけることが出来ません。また競合が自動車業界内部でなく、産業界全体で、かつ他産業の方が利益率の高いこともあり、これまでのように自動車業界が特別優遇されない=在庫を確保できない状況に陥っています。
安定調達の実現のためには安全在庫を積み上げる。半導体は電動化やADASの浸透により、1台あたりの搭載数は年々増加しており、今後生産に支障をきたさないためには積み増しておくのが安全ではあります。しかしながら、在庫の積み増しは資金効率を悪化させ、また長期保管による品質や置き場も問題になります。
しかも、果たして長期の在庫を確保したとしても、計画していた通りに発注が行われるかは確証がありません。今回の部品問題でも、トヨタが比較的影響が少なかったのは発注の変動が他社と比べ、少なく、また情報が先行して発信されるため、部品メーカーが材料を確保しやすいという要因もあります。日本の他社メーカーや海外メーカーでは月ごとに提示される3か月の内示(発注予定量)、その先の中長期計画の数量の確からしさはさほど高くありません。
完成車メーカー⇒部品メーカー「在庫を確保してほしい」=部品メーカー⇒完成車メーカー「正確な中長期計画をください」
という前提が必要になります。在庫の積み増しだけお願いして、在庫の引き取りで問題が発生した際に「それは部品メーカーが勝手にやったことでしょ」となれば完成車⇔部品メーカー間の信頼関係は低下することに。
安定供給のため、在庫を積み増すのか/経営効率を重視して在庫を極力しぼるのか。在庫を巡る問題は経営の永遠の課題です。部品のリードタイムや調達のしやすさなどの特徴を踏まえ、完成車、部品メーカーが共同してどのような情報を基に手配するのかの方針を決定し、手配する。今回のコロナ禍を起因とする部品供給問題が、サプライチェーン構築での大きな転機になりそうです。(いや、ほんと正確な数字をください)
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- 2.モビカイブ
- 3.余談:ヘノヘノカッパッパ
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