躍進する中華EVは果たして日本で売れるのか問題

この数年での伸びが目覚ましい中国製のEV。中国国内での販売の伸びもさることながら、世界各国への進出を始めています。日本でも販売が発表された中国製EV。果たして日本で販売は伸びていくのか。どこより詳しく解説します。
カッパッパ 2022.11.27
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寒くなって週に3日は鍋。野菜がたくさんとれて、子どもも食べてくれる+手間が少ないのは良いのですが、コストが高くなりがちなことに悩むカッパッパです。トマト鍋の残り汁をチーズリゾットにするのが好き。

近年躍進目覚ましい中国新興のEVメーカー。中国国内での販売の伸びもさることながら、自国だけにとどまらず世界へも進出。先進的な技術を搭載したBEVを次々に発表し、輸出は急激な成長を遂げています。

日本にも進出が始まりつつある中国EV。実は日本、「輸入車の墓場」と呼ばれ、海外メーカーからすると実に難しいハードルの高い市場。果たして中国のEVは日本でも売れるのか。かつての携帯のように、ガラケー:日本メーカー独占⇒スマホ:中国メーカー/iPhoneで独占とシェアを失ってしまうのか。中国EV、日本進出をどこより詳しく解説します。

発展目覚ましい中国EV、そして世界進出

世界最大の自動車市場、中国。2021年は年間2627万台、全世界販売台数の3割以上を占め、コロナ禍で世界各国が販売台数が減る中、相対的に高い数字を保ち続けています。そんな中国の中でも成長著しいのがNEV(新エネルギー車)。BEV(電気自動車)、PHEV(プラグインハイブリッド車)、FCEV(燃料電池車)を合わせたNEVの販売台数は右肩上がり。2020年180万台から、2021年は352万台⇒2022年は600万台を超える見通しとなっています。

その中でも一番伸びが大きいのがBEV、電気自動車。2022年1月~10月実績で412万台。1年で500万台に迫る勢い。日本の自動車市場が450万台なので、ほぼ同数。販売台数全体の約20%のシェアを占め、想定を超えるスピードでEVシフトが進んでいます。

BEVの中でも販売の伸びが大きいのは中国国内メーカー。BEV、世界TOPのテスラも上海ギガファクトリーで生産し、販売台数を伸ばしています。ただそれ以上に中国国内メーカーの成長は目覚ましく、特に今最も勢いのあるメーカー、BYDは 1月から9月までの乗用車販売台数は、前年同期の2.6倍を超える118万5000台(すべてNEV)。自動車生産は量産に際し設備投資が多額になるため、一気に数を増やせない+BEVになれば動力源となる電池の確保が難しい問題があるのですが、既存メーカーが培ってきた中国国内の自動車ノウハウ+電池自社生産の強みを活かし、大幅増産。これまでに世界でも見たことのないスピードで生産を拡大しています。

そして販売は中国国内だけではなく、全世界へも拡大。上述のテスラ、上海ギガファクトリーでの生産車両は欧州、そして日本へも輸出。代表的な新興EVメーカーであるNIOは欧州での販売、生産工場建設も開始。BYDも欧州はもちろん、インドや東南アジア、オーストラリアにも進出。2024年にはタイにBEV生産工場を建設し年間15万台の生産を開始することを発表。

中国からの自動車輸出は2020年には99万台でしたが、2021年には201万台に倍増。2022年は9月までの実績ですでに200万台を突破しており、250万台に迫る見通し。世界でもドイツを抜いて、日本に次ぐ世界2位の輸出大国に。大幅な伸びにより自動車運搬船が足りなくなるほど、世界への進出を広げています。

販売の矛先は遂に日本にも拡大。日本への進出が報道され、話題になっているのが「格安EV」そして「BYD」。中国で爆発的に売れているBEV、果たして日本でもHITするのでしょうか。

格安EVが日本では「格安」になりきれない理由

中国で大HITしている「宏光MINI EV」。GMの合弁会社でもある上汽通用五菱汽車が販売。走行性能は最低限、BEVの肝となるバッテリー容量は、9.3kWh、13.8kWh。航続距離は、120km、170 kmと街乗りに割り切った性能。32,800元(約65万円 2022年モデル)という値段を武器に中国国内市場を席捲し、2021年では年間42万6484台を販売しました。(BEVでTOP)

コストを抑えるには短距離、街乗りスペックに抑えることは現状のBEVの最適解(日本でも「sakura」が同じ戦略)とも言え、中国の一般庶民にも手に入れやすい価格であれば、HITするのも当然。中国で大HITするなら、他国でも、日本でも受けるのではないか…と思われるかもしれませんが話は、そう簡単ではありません。中国以外の地域で販売するには高いハードルがあるのです。

1つ目が安全を含む認証問題。低価格はスペックが最低限に抑えられているために可能=安全性能も他車と比べ低くなっています。自動車を販売するためには各国の安全を含む法律を遵守する必要があり、そのためには「手続き」が必要となります。中国メーカーの車を日本で売るのが難しいのはこの「手続き」が非常に大変+コストがかかるから。

日本では一般的に自動車を販売の際に必要となる「型式認証」。通常、ブレーキ試験等の基準適合性審査と品質管理の審査を受け、認証後メーカーは自動車の生産/販売を開始。海外メーカーが販売する場合は「国連の車両等の型式認定相互承認協定」に基づき、自国で認定を取得すれば、販売は可能…なのですが、中国はこの協定に加入していません。そのため、販売に際し日本国内で型式認証を取得⇒取得費用/手間が非常に膨大にかかります。型式認証を取得せずに販売する輸入自動車特別取扱制度(PHP)もありますが、こちらは年間5000台までに限られ、また1台ごとに車両提示した検査が必要となります。(型式認証を取得している場合は車両提示の検査は不要)。要するに販売するための認証にお金と手間がとてもかかるのです。そのために中国国内の値段では日本では販売できないでしょう。(輸出費用も追加されますし)

また日本で販売する場合はどの車両区分になるのか問題も。「宏光MINI EV」はMINIと称されるように車体は非常にコンパクトなのですが、全幅が1,493mmあり、軽自動車の規格1.480㎜以下に入りません。たった13㎜かと思われるかもしれませんが、車幅を変えるのは実は非常に高難易度。日本仕様に設計を1から見直す必要があり、現在の中国国内向けと生産を分ける必要があります。普通自動車登録にすれば販売は可能ですが、各種税金や費用が追加でかかり、低コストというメリットも薄れてしまいます。

そもそも中国国内で低価格で販売できるのは、BEVを販売することで得られるNEVクレジット収入があるから。中国では新エネ車政策として温室効果ガス排出量が相対的に多いICEの生産台数に応じてBEVを含めたNEVの生産を義務付けており、基準に満たないメーカーは超過分のクレジットを購入する必要があります。上汽通用五菱汽車は「宏光MINI EV」を売ることでクレジットを稼ぎ、自社のNEV生産数を満たし、他社に販売することで利益を上げているのです。実際、「宏光MINI EV」は原価ギリギリでの販売価格であると言われています。

以上の理由で「宏光MINI EV」は中国以外の国では「格安」の値段にはなりません。Twitterでは「補助金込みで30万」日経では「補助金込みで65万円」といった報道がありましたが、代理店自身が否定しています。

「SGMW社EVの型式取得手続きが近日中に完了する見通し」「来年にも日本市場へ参入し工場を設立予定」「小売価格は65万円になる見込み」等の情報につきましては全て検討中・対応中であり、SGMW社にて既に決定された内容ではないことをここにお知らせいたします。
https://apatech-motors.com/index.php/2022/11/04/recent/

現にすでに輸出が開始されている欧州向けは9999ユーロ(約130万円)と約2倍。代理店のインタビューでは「1万ドル以下、手の届きやすい価格帯のEV」と実際に可能な価格は補助金込みで120万ほど。この価格になるとスズキの軽自動車「アルト」が新車で買えるので、価格のみで勝負することは難しそうです。

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