【漂う王者の余裕】カッパと悟空が読み解く、トヨタEV電池戦略【前編】
ご安全に!
世界でどんどん加速していくEVシフト。国の規制も次々に前倒し。世界全体で各社が相次いでEVの販売戦略を発表しています。
そんな中でなかなか具体的な方針が出されず、EVシフトに遅れていると言われてきた日本自動車業界。ようやく待望の日本の雄、トヨタの電池戦略が発表になりました。その内容を簡単にまとめると「実にトヨタらしい」。
今回、やけに電池が好きな孫悟空さんをお招きして、カッパッパと2人でその戦略について、言いたい放題、語り合いました。これさえ読めば、現段階でのトヨタEV電池戦略はばっちり。
前後編2回に渡り、お送りします。
それでは、「モビトーーク」第3回、スタートです。
今回の対談相手~やけに電池が好きな孫悟空さん~
やけに電池が好きな孫悟空さん。電池にとっても詳しく、各電池ニュースの紹介をしてくれるアカウント。毎回すごく技術的なポイントを抑えた解説を発信。今後の自動車業界の動向を掴みたい業界関連の方ならフォロー必須。
(今回、カッパと悟空で西遊記繋がり(?)ということもあり、対談を申し込み、ご承諾いただけました。)
ようやく発表になったトヨタの電池戦略全体の印象
カッパ:今回、対談お受けいただきありがとうございます。
それでは早速、今回のトヨタの電池戦略について。1番最初の印象は「実にトヨタらしい」でした。これまでの方針、そのままという点もあるんですが、「EV云々よりも環境問題に取り組んでいる」点を強調したり、フルラインナップ戦略を推したり。らしさあふれる発表だったと思います。
悟空:オラも同感。ひと言でいえば『トヨタらしい』に尽きるな。
従来ぇ通りの一貫した主張だったな。手段と目的を履き違えることなく、変化が激しい世の中だからこそ、ひとつの打ち手に限定せず、柔軟に対応できるように構えようっちゅう姿勢は理解できるな。
あとは良くも悪くも手堅ぇっちゅうか、いわゆる『花火』みてぇな派手な話っちゅうよりも、現状を鑑みて、現実的に実現可能なことを話そうと言葉選んでる感じが印象的かなぁ。
カッパ:ですよねw「サステナブル&プラクティカル」。この「プラクティカル」を強調するのが、本当にトヨタらしさ。
カーボンニュートラルへの取り組み
カッパ:まず1番最初はトヨタのカーボンニュートラルの取り組み。この点は電池というよりはこれまでのトヨタの環境への取り組みアピール。
「HEV3台のCO2削減効果はBEV1台とほぼ同等」「現時点では比較的HEVの方が安価に提供できるので、再生可能エネルギーがこれから普及していく地域では、HEVを活用した電動化などもCO2削減に効果的」
がEV云々置いておき、自分たちはCO2削減に貢献してますアピール。やりたい気持ちがよくわかる…そして、方針であるフルラインナップを改めて発信。うん、トヨタらしさ全開。
悟空:これもトヨタが常々主張してる『環境技術は普及してこそ』っちゅう考え方がベースの話だな。
そこに『市場が変われば売れる製品も変わる』っちゅう当たり前の話を加え、ニーズに添いつつ環境性能が高ぇ製品を提供して広く普及させること、そのためにフルラインナップを用意することが、営利企業として利益最大化を追求しながら環境貢献もできるやり方だ……っちゅう、まぁいつも通りのトヨタらしい話だな。
あと、この文脈でポイントなのは
「HEV3台のCO2削減効果はBEV1台とほぼ同等」
これは車両単体ぇの環境性能はBEVの方が勝るっちゅうことに違ぇはねぇんだが、資源の有効活用っちゅう視点を忘れちゃいけねぇな。
クルマの製造に必要な原料資源は無限にあるわけじゃねぇから、消費資源量と環境性能差が妥当なのかとか、実際ぇに世の中に出回るクルマの数量とHEVBEV構成比率なんかを考える必要はあるよな。
カッパ:そのあとの
「今までつくったHEV用電池の量は、約26万台のBEVに搭載する電池と同じです。つまり、BEV26万台分の電池で550万台分のCO2削減を進めてきたと言えます。」
またまた効率良いCO2削減やってますアピールがすごい。ただこれは紛れもない真実なので、EVだけが脱炭素の答えでなく、単なる手段である点は知るべきですよね。(ただ世界の規制はEVに全振り感はありますが…)
「電動車の選択肢を増やすことによって、各地域のお客様に選んでいただき普及を加速させることでCO2排出量の削減に努めてまいります。」
選ぶのはあくまでもユーザーでその中でトヨタは多様な選択肢で勝負するスタンス。現状、トヨタは世界で1番稼げる自動車メーカーでわざわざEVという博打に出ないのは妥当かなと。
悟空:『BEV26万台分の電池で550万台分のCO2削減』
これは聞いた瞬間、思わず吹いた。
言いてぇことはよく分かるし、HEVが現状は資源消費の観点ではコスパのいいCO2削減策だって伝わるフレーズだけど、なかなかのパワーワードだよな。
法的規制が定まっちまったらしょうがねぇけど、それまではわざわざ自分から選択肢を手放すことはねぇよな。
あとは、どうせ法的規制のせいでHEVは売れなくなるんだから、今からリソースを集中させてBEVに専念したほうがいいって意見もよく聞くけどよ、結局それは現状においては企業側の理屈でしかねぇんだよな。
カッパ:BEV、ユーザー側からすれば高価でも買う価値は実際あるのか。そして、メーカーからしても儲かるのか謎ですからね…企業側からすれば本当に博打要素が高い。
フルラインナップの電池戦略
カッパ:さて悟空得意の電池部分の戦略に。自動車だけでなく電池もフルラインナップ。
「HEVは「出力型」、言い換えると瞬発力を重視し、PHEV・BEVは「容量型」、いわゆる持久力を重視」。アクアに採用された「バイポーラ型ニッケル水素電池も今後搭載車種を拡大」
研究費のある企業だからできる技。自社で複数開発していく技術とお金のある強さを感じる…
悟空:まず技術的な話からすると、この『バイポーラ型ニッケル水素電池』の量産化っちゅうのは本当にすげぇ話だ。
オラ正直、クルマに載せられるようなもんは実用化できねぇと思ってた。構造上、どうしても振動や衝撃には強くねぇからな。技術的にすげぇのは間違ぇねぇんだが、経済的な話をすると、普通は選択肢に入らねぇ電池なのも間違ぇねぇ。製造難易度高くて割高になるだろうし、今後のトレンド考えたら「なんで今さらニッケル水素?」っちゅう指摘はもっともだ。
HEVはあくまでも過渡期の技術であり、BEVとの共用を前提にリチウムイオン電池に一本化したほうが理屈には適ってる。ただ、そこで単純に選択肢を絞るんじゃなく、手広くやったからこその成果って考えると、電動化に備える企業の舵取りの難しさが改めて分かる一件でもあるな。
次に、HEV用とPHEV・BEV用で重視すべき性能が違うっちゅう点だが、これは割と匙加減次第ぇというか、既存リチウムイオン電池の中のバリエーションとして考えるならそんなに難しくねぇ。正直、技術的にはそこまでハッキリとした垣根や溝があるような類の話ではねぇ。
ただ、これもあくまでも『既存リチウムイオン電池』の枠組みではっちゅう話で、新型電池だったり、バイポーラ型ニッケル水素だったり、何かと話題ぇの全固体ぇだったりと、手広く構えるのとなれば話が変わってくるな。カッパッパの言うとおり、技術とお金の力を感じる部分だな。
カッパ:パイポーラ型がそんなにすごいなんて知らなかった…
EVの電池関連、まだ黎明期ということもあって「何が正解なのか」がわかりづらく、幅広くやれるのならやってた方がより良い製品に繋げられそう…テスラでも旧来のリン酸鉄に回帰してコストを下げていて、どれが答えになるのかわからない。
そう考えると今投資するリスクもわかるなぁ…