【トヨタショック再び?】10月大減産が示す自動車業界の苦境/【IAA開幕】「攻める」欧州メーカーのEV戦略_モビイマ!【Vol.23】
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クルマのイマがわかる「モビイマ!」
( 2021年9月13日発行 )
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ご安全に!
今回、実は発表されたトヨタの電池戦略を分析する予定…だったんですが、金曜夕方に発表された10月大減産。これはこちらを記事にするしかないということで急遽構成を変更しました。
やってくれたな、トヨタ!
しょーがないのはわかるけど!!!
では「モビイマ!」Vol23スタートです。
【目次】
1. Weekly Mobility News
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【トヨタショック再び?】10月大減産が示す自動車業界の苦境
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【IAA開幕】「攻める」欧州メーカーのEV戦略
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今週のテスラ
2.モビカイブ
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オンライン工場見学「テスラ上海ギガファクトリー」
3.余談:ヘノヘノカッパッパ
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今週の楽しみ
1. Weekly Mobility News

Weekly Mobility Newsでは、自動車業界1週間の注目ニュースや記事を紹介し、Twitterよりも深掘りした情報・視点を発信します。自動車業界の最新トレンドはこれさえ読めば大丈夫!
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【トヨタショック再び?】10月大減産が示す自動車業界の苦境
今回の見直しに伴うグローバルでの影響台数は、8月時点の生産計画に対し、9月追加分が約7万台(海外4万台、国内3万台)、10月分が約33万台(海外18万台、国内15万台)の減産となります。
9/10,金曜日夕方発表となった、トヨタ、9月追加+10月大減産。8月時点で発表された9月36万台の減産は「トヨタショック」、トヨタ単体だけでなく、日本の株式市場にも大きなダメージを与えました。(なお今回は株式市場が閉まった後だったので影響なし。発表時間の調整を感じますね…)
しかも、前回以上の減産となった10月大減産に加え、今回は通期見通しを修正。
2022年3月期 通期生産台数見通しは、これまで930万台としておりましたが、今回の減産影響により900万台レベルを見込んでいます。11月以降の見通しは不透明である一方、足下の需要は非常に高いレベルで推移しており、これまでの水準を維持した生産計画を織り込んだ前提となっております。
10月の減産分33万台はほぼそのまま通期見通しで下方修正。前回の「トヨタショック」の時には「下方修正はなし=4-6月決算発表時に織り込み済み」だとすれば、今回の減産はこの1ヶ月で状況は変わり、トヨタも予想できていないフェーズに入ったことを意味します。
減産の主な要因は、東南アジアでの新型コロナウイルス感染拡大の長期化に伴う、複数の現地仕入先の稼働低下や、半導体逼迫の影響です。東南アジアの感染拡大は、弊社工場・仕入先各社でも防疫対策・ワクチン接種に鋭意取り組んでいるものの、依然予断を許さない状況です。各所でのロックダウンなどの影響により稼働維持が難しい状況にあり、現在、可能な限り、他地域への生産移管を進め、全力でサプライチェーンの維持に努めております。また、半導体は非常に多くの業界で需要が高まっており、継続的に状況の精査を行うとともに、中長期的な手立てについて関係各社との協議を行っております。
これまでの記事でも発信してきたように主要因は東南アジアのコロナ感染拡大と半導体不足。東南アジアの部品で特に報道されているのはワイヤーハーネス。

https://newswitch.jp/p/28681
ワイヤハーネスは電線を束ねる工程で機械による自動化が難しく、「人海戦術」、労働集約的に生産されることが多い部品。結果、人件費の安い東南アジアでの生産が主流に。
今回のコロナ禍でロックダウン、稼働率が低下し部品が出荷できない事態に陥っています。ベトナムでは、従業員が工場などに寝泊まりする「工場隔離」が操業の条件。従業員の人数も通常より少なくする必要があり、交代も認められていません。マレーシアではワクチンの接種完了の割合により工場の稼働率が定められています。
半導体不足に関しても、前工程のTSMCの車載向け半導体供給は依然厳しい状況。後工程では大手のSTマイクロやインフィニオン、ルネサスやNXPの工場がマレーシアにあり、稼働率が低下し、供給に影響を与えています。
どちらの問題に関しても根本的な解決見通しは立っていません。
本来であれば10月の生産計画が決まるのは中旬以降。10日という早い段階で減産が発表されるのは、それだけ事態が深刻であることを示しています。今後も東南アジアのコロナ感染拡大が収まらなければ、11月以降も生産に影響があることが予想されます。
そして今回発表したのはこれまで一番部品供給問題の影響が少なかった「トヨタ」。他の自動車メーカーも部品供給は大変厳しいことが予想され、今後減産発表がされていくかもしれません。( 海外メーカーでは続々と追加の工場停止の報道があります)
心配なのは部品メーカーです。減産に伴い、売上が減り、資金繰りが悪化すると同時に、挽回生産に向けて在庫を貯めていたとすれば、引き取りがなく、置き場に困る、保管期間が延びて錆が発生するなどの品質問題、現場ベースで様々困難が起こることに…今回の減産を機に業績の下方修正や存続の危機を迎える企業もあるかもしれません。
(いやいや本当に本日からいろんな調整で大変なことになりそうです)
上にも書いたように「トヨタも予想できていないフェーズ」に入った9月。実は4~6月はコロナの間でたまたま良かっただけ。7-9月は業績厳しく、また10月以降も挽回のはずが、楽観できない状況にあります。「前回のトヨタショックはまだ序章だった…」そんな気配すら漂ってきました。
今後、東南アジアの動向、半導体メーカーの供給状況、自動車メーカーの減産有無など各種ニュースにまだまだ注目していく必要がありそうです。
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